JR九州/大分支社 地場産木造オフィス大作戦  
  「プロジェクトメンバー紹介」 (スギダラな人々探訪 JR九州/大分支社 地場産木造オフィス大作戦編)
文/ 千代田健一
   
 
 
  今月のスギダラな人々探訪はいつもの掲載枠から特集枠に移転してお届けします。
   
  2012年3月JR九州大分支社の木造オフィスが完成した。もちろんその全てが地元大分県産材で、杉の構造材およびヒノキ材を合板にした材料が使われている。JR九州はご存知の通り、日向市駅を始め、地場の木材を使った駅施設の建設や海幸山幸のように車輛に木材を使用するなど、地域と共生できるものづくり、場づくり、まちづくりを強烈に推進している会社だ。その主だったところは多くの人々が目にすることができる公の場であることが多く世間の注目度も高い。しかし、今回はちょっと毛色が異なる。地域住民が普段は訪れる事のない支社のオフィス空間に地場産木材を使おう!というプロジェクトだ。
   
  言わば、会社としても地域としてもあまり注目されないところに地域の材料を使って行こうというもので、ある意味JR九州社内でも敷居の高いプロジェクトなのである。簡単に言うとそんなにお金はかけられないということだ。しかし、そういった空間だからこそ当たり前のように地元の材料を使って行くということにとてつもない意義があると思うし、業界的にも社会的にも画期的なことだと信じている。JR九州発これからの地域社会に対する未来へのメッセージなんだと思う。とってもいいことなんだけど、かなりの困難が伴うこのプロジェクトをどう実現していったか、関わったメンバーの皆さんに書いていただいたので、それぞれの立場での想いや考え、このプロジェクトが達成した意味などを読み取っていただければと思う。(ち)
   
 
   
  1.津高 守さん
   
  まず、JR九州の大分支社における地場産木造オフィスのお話を最初に伺ったのは、ちょうど千代田が福岡に転勤して間もない2010年の秋ごろのことだった。
   
  JR九州施設部の津高守部長がこの計画全体のプロジェクト推進を担当する施設部設備課の福田健一さんと基本設計を担当するジェイアール九州コンサルタンツの設計部長である平原(ひらばる)公孝さんを引き連れ、スギダラ本部のある内田洋行本社を訪れていただき、スギダラ本部の若杉と千代田にご紹介いただいた。地場の杉材を使った計画を進めて行く上で、まずは実務担当のこのお二人に杉の空間デザインの良さを理解してもらい、一緒に組むメンバーを引き合わせるという津高さんのありがたい采配だった。 津高さんに関しては、以前にも月間杉に寄稿していただいているので、その人となりや活動についてもご存知の読者の方もいらっしゃると思うが、改めて千代田の方からご紹介すると、スギダラ北部九州支部のメンバーと言うよりはスギダラ本部の役員と言った感じだ。
   
  会社では数百名の部員のいる巨大組織の親分で、経営トップにも近い存在だと思うが、スギダラ倶楽部の中でもやはり津高さんは親分格だ。スギダラでは特に決まった役職をお願いしている訳でも無いし、会員証も何の特徴も無い普通の番号に甘んじてもらっているのが申し訳ないくらいエネルギッシュにスギダラ活動を牽引してくれている。何せ社員の皆さんを事あるごとにスギダラ会員にして、仕事にスギダラを持ち込む采配ぶりはスギダラ本部の若杉さんを見ているよう。それもそのはず。津高さんは若杉さんの連載記事「スギダラな一生」の熱烈と言っていいほどの愛読者で、常々口にされているが、巨大組織の中で奮闘するもなかなか思い通りに行かず落ち込んだ時などに若杉さんの記事を読んでは、「オレはまだまだ甘かった」と自分にムチ打って意欲を高めていたようだ。
   
  会社の中でも「月に一度はスギダラ活動を!」というスローガンを掲げ、公私の境なく無く、社員の皆さんをモーレツに引っ張って行っている。津高さんは組織の親分として、社員の能力を高めて行くだけでなく、仕事の意味やその仕事の先にある社会への繋がり、人との繋がり、その大切さ、重要さをスギダラ活動を通してみんなで共有して行こうとされているのだと思う。一見、横暴とも見える津高采配は何とも愛に満ち溢れていて、多くの人々を束ねていくリーダーとして傑出した人物なのだ。やっぱり、津高さんは津高親分だ!
   
  【なぜ木を使ったオフィスなのか?】 文/津高 守
   
 
   
 

2.福田健一さん

   
  津高さんのその思惑というか采配は、見事に実を結んでいると思うし、ボクが言うのも恐縮だが、社員の皆さんは素晴らしい成長を遂げているのではないかと思う。その代表選手がMr.杉玉、「走り杉」の荒川堅太郎さん(http://www.m-sugi.com/54/m-sugi_54_arakawa.htm)であり、次にご紹介する施設部設備課の福田健一さんだと思う。福田さんは知り合うと同時にスギダラ会員にもなっていただいていて、会員番号が1192作ろう鎌倉幕府で、特徴のある番号だから、その事で何の特徴もない番号を持つ津高親分から今尚、苦言を言われ続けている。
   
  建築出身の一級建築士で、今回の大分支社の基本計画・基本設計の立案者でもある。今回、支社のオフィス作りに地場産の杉材を使うというJRとしては馴染みもなく、ともすれば大きく反対される可能性がある課題に対して、福田さんは実に見事な立ち回りで、事を進めて行く・・・と、言う風に見えた。ハッキリ言って頭は切れるし、仕事のスキルも抜群だ。もちろん、福田さんは楽に仕事をこなしていた訳ではなく、関係部署との細やかな調整をやったり、設計を進める時も口で指示して人にやらせるのではなく、ご自身で設計図面は描くは、CGイメージを作るはで、そのアグレッシブな姿とは裏腹に、見た目ではわからない苦労をしながらやっていたのだと思う。工事が始まると実際にそこで生活をしてゆく大分支社の皆さんに自分たちのオフィスづくりを自分ごとにして行ってもらうための社内イベント(天井材のサンドペーパー掛けなど)を開催したり、機運を高めて行ったりもした。
   
  なので、計画の全貌が様々な側面で細かいところまでしっかり頭に入っているので、決断も早いし、一緒に仕事する上である意味とても楽だった。会社の中には施設計画の中で木材を使って大変な目にあった人もいる中で、各部署や経営陣を説得して行くのは大変なことだったと思うが、それでもこれだけエネルギッシュにやって来れたのは、福田さんにとってもやりがいのある挑戦とも言えるテーマだったからではないかと思う。地場産木材を使って行く意義や津高さんがスギダラの活動を持ち込む意味などもきっちり理解できる感性も持ち合わせいて、元々高いスキルを如何なく発揮できるステージがいろんな場面で揃ったのではないかと思う。ボクはこれも杉が取り持つ縁だったような気がしてならない。福田さんはこれからのJRを引っ張って行くリーダーの資質を持った人だと思いうが、ついでにスギダラの方も引っ張って行っていただけるよう、お願いしたい。
   
  【大分支社木質化計画】 文/ 福田健一
   
 
   
  3.中島英明さん
   
  中島さんは大分支社の木造オフィスで実際に生活されている工務部の課長さんである。
   
  中島さんには評判の良いところ、評判が芳しくないところ、社員がどう変わったか?また、変わらなかったか?・・・等々様々な現場事情を綴ってくださいとリクエストを出していたのだが、この振って沸いた災難?に実にまじめにかつ楽しんで取り組んでいただいた。もちろん災難の出どこはT部長である。T部長の周りには、災難を楽しめる人材が揃っているように見える。中島さんには千代田もまだお会いした事が無いのだが、記事を読んで最初に思ったのは、何と愉快な人なんだろうという事。是非ともスギダラの活動にも加担していただきたいと、ご本人の希望とは裏腹なことを思った次第だ。災難はまだまだこれから続いて行くと思う。
   
  現場では内田洋行の営業も含め、いろいろとお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
   
  【○○○】 文/ 中島英明
   
 
   
  4.東本丈明さん
   
  もう一人JR側のご担当で忘れてならないのが、東本さん。今回、東本さんには記事の執筆は依頼していないのだが、重要人物なのでご紹介しておきたい。通称ヒガポンの愛称をもつ福田健一さんと同期の方で、今回の大分支社の工事事務所の担当者だ。
   
  この大分支社のプロジェクトで、内田洋行としては基本設計の一部を請け負っただけでなく、木構造のインテリア工事と事務室用のデスク、チェア等の家具を受注させていただいている。こういう請負仕事の難しいところだが、基本設計でスペックされたものが、必ずしもそのまま納まる訳ではないし、基本設計をやったところが、実施設計や実際の工事を受注できるとは限らない。実施設計の段階で仕様が変更になったり、新規家具の調達においては当然競争もある。その発注者側の責任者が東本さんで、津高さん、福田さんを通してうまく関係性を作らせていただいていたので、内田洋行としても受注の機会を見失うことのないようにコミュニケーションさせていただくことができた。
   
  まあ、いろいろと困難もあったが、何とか受注にこぎつけたのは、東本さんのおかげだと思う。こういうメンバーの連携があってこそのプロジェクトだと思うし、内田洋行にとっても嬉しいキャスティングだった。これも津高さんの采配かな?そんな縁で、多少無理やりに?スギダラ倶楽部にも入会していただいた。
   
  余計な話かも知れないが、津高さんと福田さん、東本さんの同期コンビのやり取りは実に面白い。東本さんご本人がその場にいなくても津高さん、福田さんは東本さんの口真似でしゃべっていることがよくあった。JRの中でも愛されるキャラクターの東本さん、スギダラ倶楽部でもその微笑ましいやり取りが今後見られると思う。
   
 
   
  5.有馬晋平さん
   
  改めてご紹介するまでもない、スギダラきっての売れっ子造形作家。今回の大分支社オフィスのエントランスにはスギコダマが2体置かれている。
   
  基本設計段階から、このエントランスロビーは開かれた空間にしようということで、地域のアーチストの作品を展示したりできるギャラリー的な空間として構想された。初期のイメージ段階からその絵の中にスギコダマを入れてあったのだが、それがそのまま入ったって形だ。有馬さん本人にはそんな提案をしているとは最後の方まで言ってなかったし、工事が始まると家具や丁度品の話どころではなくなるので、しばらく棚上げになっていたのだが、ある日福田さんから「ロビーのスギコダマ買うことにしました。」と連絡があり、とりあえず現物を見に行くことにした。
   
  で、有馬さんの工房に福田さん、東本さんと共に伺ったその場で「これとこれください」ってな感じで決まった。この時も福田さんは、このスギコダマを導入したことによる社内での評価の予測をして、品定めしているところが面白い。地場産の杉材で作られた空間の中に地元大分の造形作家の杉作品。見事なマッチングでエントランスの雰囲気を素の状態よりも遥かに豊かに心地よくしてくれている。 →有馬さんの記事へ
   
  【変わりゆく街の中に】 文/ 有馬晋平
   
 
   
  6.若杉浩一さん
   
  今回の木造オフィスの計画を実現する上で、津高親分は計画案の立案を内田洋行に、と言うより若杉さんとそのチームに託してくれた。今回のテーマは建築設計というテクニカルな側面よりも、もっと広範囲に様々な繋がりをつくりながら、進めて行かねば実現しないと考えたからではないかと思う。いつも通りのやり方では、「一応地場の木材は使っています」的なものになってしまうことにもなりかねないし、担当する皆さんも自分たちの会社のことをある意味よくわかっているので、落としどころが読めてしまうのだろう。それには建築、土木、設備など、それぞれの担当に今までとは違う意識で臨んでもらわねばならないし、思いや目標を共有して行かねばならない。その辺りから一緒にやっていくパートナーとして、若杉さんとその軍団に声をかけてくれたのだと思う。もちろん、想像を上回る型やぶりなアウトプットにも期待はあったのではないかとも思うし・・・
   
  千代田は福岡で活動しているので、まず最初に福田さんと会って、その計画案を拝見し、概要を伺った。さすがに建築にまつわる仕事でもあるし、杉を使ったインテリアデザインをやるというのとは訳が違う。早速、若杉さんに資料を送ってプロジェクトの仕切りを委ねた。若杉チームに委ねるということがどんなことになるのかよくわかっているボクとしても選択の余地は無い。元々、この件ではスギダラ本部のインテリアデザイナーのエースであり、一級建築士の資格を持つ小林健一がやるしかないだろうと思っていた。小林はデザインの腕前は抜群であるが、今回はクライアントが求めるいいデザインをすれば良いという次元ではない。JR九州と内田洋行という企業間でうまくやればいいのでは無く、そこには関わった全ての人々、組織、団体、地域に対して、共に共有できる喜び、価値、意味を見出し、創造していくという広大なフロンティアがあった。そんなプロジェクトをディレクトできるのは若杉さんを置いて他にいない。かねてより「次は建築やるぞー!」と言っていただけに、もう渡りに舟である。早速、構造設計家の腰原幹雄さんを巻き込み、見る見る間に布陣を作っていった。その辺の押さえどころ感覚は一流だ。
   
  毎度毎度東京から打ち合わせに来るわけにもいかないので、千代田の方が現地で内田案と基本設計との調整打ち合わせをしていくことになるのだが、ここでも若杉指令は過酷を極める。 施設全体の基本設計を担当するジェイアール九州コンサルタンツの平原部長と担当者の柴田さんは数々のJR九州の施設を手掛けて来た方で、落としどころも実によくわかっている。なので、ある意味突飛な今回の内田案がなかなか思った通りに受け入れられないこともあった。そんなやり取りがある中でエース小林がふさぎこむシーンもあったりして、そんな時にありがたい若杉指令はやって来る。会話のせりふまでははっきり覚えていないが、こんな感じだ。「千代田、コバが泣きべそかいとるけん、お前ちょっとコンサル行って、ナシを付けて来てくれ!」「柴田さん、女性の担当者がおったろうが! お前、女性担当なんだからうまく話つけて来い!」・・・このチームはこういう連携で成り立っている。若杉さんのこの辺のツボの押さえどころというか、チームメンバーの動かし方は絶妙で、かなり無理難題も多いのであるが、苦しくても大体うまく行くことが多いので、千代田もこういった若杉指令は割りと素直に聞くようにしている。
   
  【大分支社】 文/ 若杉浩一
   
 
   
  7.小林健一さん
   
  千代田が福岡に来てからは、この小林が若杉さんの片腕の一人として、スギダラ系のプロジェクトにおける空間デザイン分野のデザイナーとして様々なプロジェクトを手掛けている。一級建築士の資格も持っていて、建築設計に対する興味や憧れはメンバーの中でも人一倍強いし、デザインの腕前もかなりのものである。ぱっと見イケメンで、仕事も手早く、生真面目にこなすし、自分で納得行くまでこだわり続けるファイトも持ち合わせているが、やや小心者だ。当たり前の話なのだが、ものづくり、場づくりにおいては概念的な主目的を達成したり、目標通りのイメージを最終的に作って行かねばならないが、そのためには、実際にどう作るか、実施レベルの設計をして行かねばならない。コストや法規、構造、安全性などなど、いろんな側面で押さえて行かねばならないことが山ほど出てくる。
   
  今回は建築設計に関わることなので、通常のインテリア工事とは違った押さえどころも多く、様々な関係者とのやり取りも含め、仕事の勝手が違うのである。増してや、鉄道高架下に木造建築物を作るという、JRとしても前例のあまりない試みに対し、小林がいろいろと不安を抱えるのも無理の無い話しだ。一方、やるとなれば自身のこだわりや美学があって、特に意匠性を詰めて行く段階ではメンバー間で意見が対立することも往々にしてあった。
   
  そういった事も不安を煽る材料になるのであるが、チームでやっている仕事の良さは、そういう諸問題を自分一人で抱え込まずに済むということだ。ともすれば自分だけで抱え込んでしまい、うまく行かない時にくじけそうになりやすいタチである小林も他のメンバーに委ねるべきところは委ねるというチームワークのコツをつかめたのではないかと思う。とか、先輩面して偉そうに書いたが、これは千代田自身もそうで、時折同じような不安を抱えながらやっているのだが、そんな時に目的、目標、志を共有できるチームメンバーがいるというのは本当にありがたいのである。
   
  請負範囲は基本設計までであったが、基本設計が終わった後もJR福田健一さんからは実施レベルの相談をもらい、関わり続けられたのも良かったと思う。福田健一と小林健一の健一コンビの連携の良さもこのプロジェクトの成果に繋がったと思う。一応、千代田健一もいたしね。
   
  【JR九州スギダラ支社への道 設計編】 文/図 小林健一
   
 
   
  8.腰原幹雄さん
   
  腰原さんは東京大学生産技術研究所の教授で、専門は構造設計。建築設計も面白いことやっている人がいるが、今は構造設計や設備設計やってる人が面白い!ということで、建築ジャーナリストの中崎隆司さんからご紹介してもらった。木構造だけが専門ではないが、研究内容を伺うと関心の大半は木構造で、千代田は木の話しか聞いたことが無い。その研究の中で面白かったのは、木造の高層建築物への取り組みだ。建築基準法の改定により、今ではかなりの大規模建築物を木造でつくることが可能になってきている。しかしながら、まだまだそんなチャンスがなかなか巡って来ないそうである。
   
  5階建てくらいの木造建造物の耐震実験なども実施されてて、「もっと高層なものを揺らしてみたい」とおっしゃっていた。そこには構造設計家としての野心も垣間見えたが、腰原さんは本質的に木材を含む天然資源の有効活用の方法をこれからの未来に向けて提案、発信している研究者だと思う。
   
  今回の高架下での木造建造物を実現させる上で構造設計は不可欠な要素であるし、こういう話に乗っかってくれるのも腰原さんを置いて他にいない。基本構想を実施に移せたのも腰原さんあってのことだと思う。改めて感謝したい。ちなみに小野寺康さん設計の日南堀川運河の木橋「夢見橋」の構造設計も腰原さんが担当したものだ。
   
  【JR九州大分支社からつづく新しい木造建築】 文/図 腰原幹雄
   
 
   
  9.三宮康司さん
   
  このプロジェクトの大前提は地場産の木材を使うことにあった。故に地元大分で材料の調達、供給のできる仲間が必要だった。若杉さんはいち早く木材活用の知恵袋であるスギダラ宮崎支部の海野さんに相談し、大分市内志村製材の三宮康司さんを紹介してもらう。紹介されるまでもなく、千代田も旧知の大分木青会の重要人物である。本年度は木青会の九州全体を総括する九州木青会の会長で、木青会の中でもやり手中のやり手だ。
   
  早速、三宮さんに連絡を取って、設計を進めていく段階から協力してもらえるようお願いした。 打ち合わせにも何度となく参加してもらい、サンプルを製作したり、コストの算出やプレカットの実施設計の協力もしていただき、タイムリーにスピーディに設計を進めて行けたのも三宮さんに協力していただいたおかげである。
   
  最終的に木造に関わる部分の工事を内田洋行で受注させていただき、材料の調達、施工を三宮さんにお願いできたのではあるが、内田洋行としても前例の無い仕様の工事であるし、現場の工事事務所でも前例が無い上にスケジュールもかなりタイトだったため、実施のための段取り、調整は困難を極めた。三宮さんにはその困難を現場で一手に引き受けてもらったと言うか、押し付けてしまったところがあり、内田洋行として、また千代田としても大変申し訳ないと思っているし、いくら感謝しても感謝しきれない人だ。
   
  結果的には予想を上回る出来栄えになったと思うし、何とも形容しがたい心地よい雰囲気の空間になっていると千代田は思っている。福田さんや東本さん他JR側のメンバー含め、作り手側のメンバーでは共に喜び合える成果になったと思う。これも数々の困難を乗り越えて、昼夜問わずに頑張っていただいた三宮さんをはじめとする現場の皆さんのおかげだ。感謝しても感謝しきれないけど、この場でも御礼申し上げます。ありがとうございました。
   
  施工後、当初から懸念されていた反りの問題なども出てきてはいるので、見直すべきところは見直し今後に活かして行かねばならないが、鉄道高架下にこれだけの木造空間をつくることができたと言うことは、建築業界、木材業界に留まらず、社会的なトピックとして世の中に対し、一石を投じることができたのではないかと思う。地域のための地域のデザインのお手本となれるよう広くPRして行きたい。
   
  【現場作業で感じた課題】 文/写真 三宮康司
   
   
   
   
  ●<ちよだ・けんいち> インハウス・インテリアデザイナー
株式会社パワープレイス所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
『スギダラな人々探訪』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo.htm
『スギダラな人々探訪2』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo2.htm
   
 
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