連載
  吉野杉をハラオシしよう!〜"駆け出し"専務の修行日記〜第66回
文/ 石橋輝一
小豆島で木桶職人復活!
写真/ 山本茂伸
 
  2013年9月、吉野のみんなと一緒に小豆島のヤマロク醤油さんに行ってきました。
ヤマロク醤油さんが、自らの手で造られた新桶の完成をお祝いするためです。
   
  月刊杉89号の連載第62回「小豆島、ヤマロク醤油さんの木桶」で、木桶の材料を求めて、吉野に来ていただいた事をご報告しました。あれから4か月、ついに完成の日を迎えました!
   
 
 
  吉野杉の新桶です。フォルムが美しいです。僕(身長189cm)と比べると、その大きさが分かると思います。
   
  ヤマロク醤油の五代目 山本康夫さんと、山本さんの同級生で大工の坂口直人さんが中心となって、大阪・堺の(株)ウッドワーク(藤井製桶所)の指導のもと、木桶づくりに取り組まれてきました。
   
  何故、今、木桶職人復活プロジェクトに取り組まなければならないのか。以下、山本康夫さんの言葉です。
   
 
   
  醤油・味噌・酢・味醂・酒の業界で、木桶による醸造が多く残っているのが醤油と味噌の業界ですが、醤油や味噌の生産量の1%未満というのが現状です。現在、醸造用の木桶を製造できる桶屋さんは、大阪の堺市にある「藤井製桶所」1社のみとなりました。
   
  現在使われている醸造用の木桶は、戦前に作られたものがほとんどです。今から50〜100年後にはほぼ全ての木桶が使えなくなっています。そうなると、本物の木桶仕込みの醤油・味噌・酢・味醂・酒が消えて無くなります。これは日本食の基礎調味料の本物が無くなるという事なのです。
   
  我々が生きている間は大丈夫ですが、墓場に入った後の子や孫の世代の問題です。子や孫の代に「本物の日本食の基礎調味料」を残せるかどうかは、桶屋さんが残るかどうか、桶屋の技術が後世に受け継がれるかどうか、にかかっているのです。自分達が墓場に入った後の問題ですが、タイムリミットはすぐそこに迫ってきているのです。
   
 
   
  今回の新桶を、小豆島の皆さんが独力でつくり上げられた事は、日本の木桶の歴史に確かな一歩を刻みました。
2013年の小豆島を舞台にして、50年後、100年後に、木桶の伝統が繋がりました。
   
  吉野杉として、今回の木桶職人復活プロジェクトに協力できた事を本当に誇りに思います。
木桶に最適な素材である吉野杉も、50年後、100年後に繋いでいかなければなりません!
   
 
  ヤマロク醤油さんのもろみ蔵。100年以上、使い込まれた木桶が並んでいます。
 
  写真中央の左、前掛けをしているのがヤマロク醤油五代目の山本康夫さん。中央の右が、坂口工務店の専務坂口直人さん。
 
  締めは恒例の「やっ樽で〜」「桶(オッケ〜)」で!
   
 

つづく

   
   
   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴5年。杉マスターを目指し奮闘中!
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