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(64号の「風とオルゴール」をご参照ください。) | ||||||||||||||
1923年5月に花巻から大沢温泉に電車が開通し、同年9月ごろにこの詩は書かれた。 五間森に木を伐りに行った帰りに、電車に乗ろうとする薄明穹のころ(夜明け前か夕暮れ時だが、ここでは夕暮れ時)、前景に電灯が「ダアリア」のように「9月の宝石」のように輝く。空には六日月と木星。 | ||||||||||||||
宮澤賢治は電燈をとりつけた人に「青いトマト」を贈りたいという。電燈によって「風景が深く透明にされた」からだ。 | ||||||||||||||
彼は電気が好きだった。外来の食べ物のトマトやリンゴ、洋楽器のチェロを愛好した。自然と一体化するような感覚は、新しい技術をうけいれていくことと矛盾せずにあったし、農村で暮らすことと地球規模でものを感じること、過去も未来も、まるで同時にあった。宇宙スケールの人にとっては、あたりまえなのだろうけど、どうしてこんな感覚をもつに至ったのか不思議だ。別に特別な教育をうけたというわけでもない。 | ||||||||||||||
空と電燈、その間の松倉山や五間森から | ||||||||||||||
放たれた剽悍な刺客に |
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という。なぜなら | ||||||||||||||
(たしかにわたくしがその木をきったのだから)。 |
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(杉のいただきはくろくそらの椀を刺し) | ||||||||||||||
この日は風がよほど強かったのだろう か、もっていた洋傘は | ||||||||||||||
しばらくぱたぱた言ってから |
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なかなか鎮まらない五間森にむかって彼はとなえる、木をきられてもしづまるのだ、と。 | ||||||||||||||
●<いしだ・のりか> フリーランスキュレ−タ− 1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。 「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。 近著:「藍から青へ 自然の産物と手工芸」建築資料出版社 草虫暦:http://xusamusi.blog121.fc2.com/ 『杉暦』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_nori.htm 『小さな杉暦』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_nori2.htm ソトコト(エスケープルートという2色刷りページ内)「plants and hands 草木と手仕事」連載中 |
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