連載
  スギダラな人々探訪/第52回 「福岡での地道な活動」
文/ 千代田健一
  杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 
今回は、ちょっと自分の事と身の回りで起きていることについて書こうと思う。
(色々とご紹介したいスギダラな人もいるのであるが、準備が追いつかなくてごめんなさい。)
   
  その前に、来る3月17日(木)18日(金)の2日間、福岡銀行本店アトリウムに於いて「みやざき郷土フェスタ」が開催されるので、まずはそのご案内。
   
 
  福岡郷土フェスタ
   
  要は宮崎物産展のような感じの宮崎県主催のイベントで、obisugi designの杉家具たちも展示される。去る1月28日〜2月3日まで宮崎市のシーガイヤで行われた行われた「杉がいいや!inシーガイヤ」を規模を小さくしたような感じになる予定。
杉のヤグラ組も一部持ち込んだり、出展の各市町村のブースに飫肥杉屋台を使ったり・・・部分的ではあるが、会場をスギダラケにして雰囲気に華を添えたいと思っている。飫肥杉家具や杉大道具、小道具は日南市役所から、また、杉ヤグラに関しては川上木材さんが組立てサービス付きで貸し出してくれる。こういうイベントの時に杉の大道具たちは本当に重宝する。即興的にイベントの空気感を楽しくかつ上質に演出してくれる。それに、こういった機会に力になってくれる仲間がいるところが本当にありがたい。河野さん、川上さん、ありがとうございます。
   
  今回のイベントでは特に牛肉、豚肉、鶏肉といった宮崎が誇る最上級の肉類がクローズアップされていて、会場で食べることもできる。
食品の展示即売だけでなく、日向ひょっとこ踊りや椎葉神楽といった郷土芸能の披露もあったりで、楽しいイベントになると思うので、福岡在住の皆様には是非ご来場いただければと思う。(お昼時にでも超美味しい肉を食べに来てみてください。)
   
  イベントの詳細は→http://ouendan.kanko-miyazaki.jp/
   
 
   
  ●仕事での杉普及活動
   
  さて、本題に入ろう。ボクが会社の人事異動で福岡に来てから、7か月ちょっとが過ぎた。自分の生まれ故郷の福岡で仕事をするのは初めてで、東京での活動とは仕事もスギダラも全く勝手が違う。仕事に関して言えば、やはり経済規模が圧倒的に違うので、仕事の量と1件当たりのビジネス規模も小さめである。小さいからデザインチームの規模もそれ以上に小さい。全員で4名。デザイナーはボクともう一人、後は図面を描いたり提案資料を作ってくれるスタッフが2人。以上である。
この構成だとチーム一丸となってという感じにはなかなかなれないので、それぞれが個人商店のように孤軍奮闘することになる。と言っても二人だけの話なのではあるが・・・
今更のように組織力、チーム力のありがたみを痛感しているところである。
おまけに福岡の支店内にはまだまだスギダラな仲間を獲得できていないので、スギダラの活動も孤軍奮闘なのである。
そんな中で、仕事上でも機会さえあれば杉材の普及活動はやっている。何せ、九州は杉の王国のようなところで、日本最大の杉生産地である宮崎県だけでなく、大分、熊本もそれに次ぐ生産地であり、材料の調達には事欠かないし、元気に活動している人たちが他の地域よりも多いと思う。
   
  福岡の支店でのビジネス的なカバー範囲は九州全域となっており、福岡県外の仕事も入ってくる。当然、宮崎での仕事も入って来る。昨年から災害続きで大変だった宮崎を応援する意味も含め、宮崎県の地場産飫肥杉を活用しませんか?という提案を織り込む。この提案に対する顧客の反応は極めて良いのであるが、まだ実際に採用されるところに漕ぎつけてはいない。
   
  先日、宮崎市内にある中学校、高等学校の新築プロジェクトで提案の機会を得た。学習用デスク、チェアを始め、学校内で使うテーブルやチェア、ベンチといった家具類をobisugi designのプロダクトで提案して来た。ただ、いくら私立の学校とは言え、今までの商習慣からするとスチール製品よりも高価になる木製家具の大々的な採用はコスト的に厳しい。メンテナンスの事を考慮するとさらに二の足を踏んでしまうというのが、通常の流れだ。そこで数量が多い学習用デスクとチェアに関しては、スチール製品のスチールの部分はそのまま利用して、デスクの天板とチェアの座板、背板を地場産飫肥杉にコンバージョンする。という副案も持参した。たったの30分しかプレゼンの時間がなかったこともあり、主に実物を持ち込んだデモ的なプレゼンを行ったところ、学校の先生方は非常に高い関心を示してくれた。しかしながら、やはりメンテナンスの事は気になるようであった。モノを大切にする心を育てるのもいいけど・・・と言ってくれた先生もいたが、現段階ではまだ疑心暗鬼なのであろう。
落書きの問題とか、マークシートの記入に問題無いかとか、いくつかの心配事の質問も受けたが、杉の家具に触れて昔を懐かしんだり、先生方の喜んだ顔を見れたことが嬉しかった。事務局サイドも乗り気なので、今後はその採用実現に向けて手を尽くして行きたいと思っている。
このプレゼンを行うに当たって、日南市役所さんからはobisugi designの製品群をお借りして、副案だったスチール製デスク用の杉天板の試作は日南家具工芸社さんにて急遽製作していただいた。市役所の河野さん、日南家具工芸社の池田さん、この場をお借りして御礼申しあげます。
   
  その他、企業のオフィスの提案の中にも必ずと言っていいほど、杉のインテリアやobisugi designのプロダクトの提案を織り込んでいる。
福岡でのプロジェクトの規模からしてそんなに大量な受注というのはまだないが、昨年の夏あたりから提案中であった、とあるメーカーの工場オフィスにおいて、スチール製の収納庫の天板を地場産杉材にしよう、という提案が最後まで生き残り、幅1800mm×奥行き450mmの天板900枚を納品することに成功した。
今時はオフィスにお金はかけられないというのが、風潮のようになっていて、本当に工業的に作ったスチール家具製品だけで構築される無機的な空間が多いのである。「あまりにも寒々しくなるので、是非、木製品を部分的にでも入れて行きましょう!」という提案の脅し?が利いたのか、コスト的に何とかなるアイテムとして今回の収納庫の天板が生き残ったのである。
   
 
  ちょっとした作業台としても使える収納庫カウンター。集成材とは言え、ムクの杉材は空間を柔らかな雰囲気にしてくれる。   今回はこういった天板を900枚購入いただいた。収納庫が売れる度にもれなく杉天板がついてくれば、もっともっと量が出て行く気がする。
   
  この天板だけではそれほど心地よい空気感を作れるものではないが、これが白っぽい工業的にできた化粧板だっからさらに機械的で冷たい感じの空間になったであろう。このプロジェクトを通して思ったのは、こういった使い方であればかなりの量が使えるという事と、コスト的にも工業製品と渡り合えるところに近づけると言うこと。特に大企業の大規模オフィスでは、こういったスタイルでの収納庫の使い方が多いので、木材活用による炭素固定化貢献を勧める上でもいい方法ではないかと思った。ちなみに製作は以前スギダラツアー岐阜の陣でお世話になった親和木材工業さんにお願いして、宮崎産材を使った集成材天板としていただいた。
   
 
   
  ●スギダラ活動新たなネットワークづくり
   
  スギダラの繋がりで行くと、スギダラ北部九州のクラフト作家の仲間たちのネットワークも健在で、展示会イベントにおける露出度も高く、元気に活動をしている。昨年の10月には第2回目となる杉モノデザイン展も実現させた。
http://www.m-sugi.com/63/contents63.htm
また、北部九州支部では、先月号で記事を書いていただいたようにJR九州の津高さんが入ってくれてから、恒常的にスギダラ活動が起こるようになっていて、支部の活動は益々活気を帯てくる予感がある。
   
  また、スギダラ北部九州支部長の池田陽子さんのかつての本拠地だった大分県の中津江の時代からの繋がりで、大分県日田市のまちづくり仲間との交流も持つことができ、そこに集まる商工会のメンバーで組織されている研究会グループ「プラザ日田」の皆さんに対して、スギダラの活動をPRさせていただいた。
仕掛け人はスギダラ会員で、日田市で林業を営まれているマルマタ林業の合原万貴さん。そこで千代田は「杉コレ」を日田でやりませんか?と提案したところ、合原さんは元より、プラザ日田の代表を務める高倉貴子さん(スギダラ会員)は極めて乗り気。さらにそのプラザ日田のアドバイザーを務めてらっしゃる九州大学大学院芸術工学研究院教授の藤原惠洋さんが強力に後押ししてくれたこともあり、プラザ日田では「杉コレをやろう!」という機運が高まっている。実は、その実現に向けて既に地元の振興局まで具体的に動き始めているのである。
アドバイザーの藤原先生とはボクの大学時代の恩師?を通じて、共感体験を持っていることもあって、それ以来仲良くしていただいており、シーガイヤのイベントにも高倉さんと一緒に見に来ていただいた。その時に南雲、若杉のスギダラ両首脳に会ってもらい、そこからまた新たな展開に繋がって行きそうな感じになっている。→今月号の若杉さんの記事参照
   
  藤原さん、高倉さんには別途機会を設けて、日田のまちづくりやご自身が取り組まれているテーマについて本誌でも記事を書いていただきたいと思っているが、3月26日、27日に予定されている神奈川県秦野市での「木匠塾VSスギダラ」バトルに藤原さん、高倉さん、合原さんをはじめとするプラザ日田のメンバー有志にも参戦していただくことになったので、まずはその折にお話を聞ければと思っている。
   
  それからたまたまではあるが、ボクの高校時代の同級生が福岡市内で木材問屋をやっていて福岡県の木青会のOBだったりするので、今までとは違ったルートでのネットワークも広がりつつあるから、社内では孤軍奮闘とは言え、楽しみなことも日を追うごとに拡大してきている。(ち)
   
   
   
   
  ●<ちよだ・けんいち> インハウス・インテリアデザイナー
株式会社パワープレイス所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
『スギダラな人々探訪』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo.htm
『スギダラな人々探訪2』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo2.htm
   
 
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