特集 新たな時代に向かって
  九州交通の新たな時代の幕開けにあたって
文/ 津高 守
  JR九州 鉄道事業本部 施設部長の語る未来
 
九州の交通も新たな時代に!
   
  新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。新年早々から私の悪文で皆様を煩わせるのも甚だ恐縮ですが、少しばかりお付合いをお願いします。実は先月初めに南雲氏から原稿の依頼を受けたのですが、先月号で「津高に文章を執筆していただきます・・(中略)・・熱く温かいお話が期待できます。」といきなり3段くらいハードルをアップされ、適当に軽く書いていた文章を急遽書き直して原稿としているというのが実態であります。
   
  さて、今年の九州(特に弊社)の話題といえば九州新幹線鹿児島ルートの全線開業かと思います。昨年開業した東北新幹線と合わせて、北は青森から南は鹿児島までが新幹線のネットワークで繋がることとなります。これにより博多から熊本までが33分(現在1時間15分)、鹿児島中央までが1時間19分(現在2時間12分)に短縮されるとともに、新大阪から鹿児島中央までも最速で3時間45分に短縮されることになり、人の流れも大きく変わるものと思っています。新しくできる駅ビルと相俟って九州に新しい風を吹き込もうと我々も意気込んでいます。
   
  はっきり申し上げまして、この全線開業と博多駅ビルでコケてしまったら、JR九州の未来はありましぇん。駅ビルだけで6百億円を越える投資をしています(さらに車両等の投資が必要です)。弱小鉄道会社としては身の丈を越える投資額です。我社がコケれば中学1年生を筆頭に3人いる息子と生まれて8ヶ月の柴犬を育ててはいけません。皆さんのご支援、ご愛顧をよろしくお願い申し上げます。  
九州新幹線 「TSUBAME」
   
  今回の開業区間には、リニューアル中の博多駅のほかにも「新鳥栖」「久留米」「筑後船小屋」「新大牟田」「新玉名」「熊本」の6つの新しい新幹線駅舎が完成します。新玉名駅では、地元産の杉を柱の表面に貼り付けるなどの工夫もしていますので、スギダラ会員の皆様にも是非ともご覧頂きたいと思っています。(尤も日向市駅と比べると・・・)
   
 
  新博多駅ビル (H22.12.24現在)
   
  また、筑後船小屋駅では在来線の船小屋駅を新幹線駅に併設させるべく駅の移設工事を進めていますが、この在来線の駅舎は筑後市の木である楠と地元の特産である和紙を用いています。スケール的には新幹線駅舎と比べるべくもありませんが、スギダラの精神を活かしてより地元に密着した駅舎にしようと工夫を凝らしました。
   
  いずれに致しましても、3月12日が開業日です。スギダラ会員の皆様も是非ともご乗車のうえ博多にお越しください。スギダラ列車「海幸山幸」に加えて指宿や阿蘇に向けての特急も走ります。スギダラの聖地、宮崎へは新八代でバスに乗り換えれば博多から3時間余りで到着できます。九州を面的に活性化したいと思っています。新生の博多駅ビルはそれに先立つ3月3日に開業です。
   
 
   
  2010年のスギダラ活動
   
  さて、昨年は「ひと月1回スギダラ活動」を目標に弊社(というより我が施設部)のスギダラ活動の展開を図ってきました。上半期は3月の大野下駅木造駅舎解体イベント実施と4月の新日鉄条鋼工場見学だけでしたが、7月には亀川駅木造駅舎解体イベント開催、9月には杉の伝道師若杉浩一氏による特別講演、10月は西粟倉スギダラツアスギぐる計画の参加に加え、月末には西都でエキサイトし日向市駅前交流拠点施設の概成イベントに出席、12月はスギ九忘年会参加と後半はかなりのペースで活動(これが活動?)を活性化させることができました。この他にも廃材を活用して作成したカウンターと椅子をオフィスに設置して潤いのある職場空間の創出(大げさやなあ・・・)に努めるとともに、スギ九飲み会の参加も数回を数えました。
   
  ことに若杉伝道師の講演により、スギダラ活動についてほとんど理解していなかった私の部下達にもこの活動の意義を理解させることができたこと、西粟倉ツアーにより手を掛けた植林とそうでないものとの違いが自分の目でわかるようになったこと等が大きな収穫であったと思っています。この間、弊社のスギダラ会員も建築部隊から土木部隊にまで拡がりを見せ、上司である私の命令にいやいやながら従いスギダラ活動を行う姿が数多く目に付くようになりました。(本人たちは進んでやっていると言っていますが・・・)
   
   
  杉の伝道師 若杉 浩一氏講演   潤いある職場空間?製作のレポートはこちらへ。
   
 
   
  本年の活動方針
   
  本年も昨年に引き続き「ひと月1回スギダラ活動」を目標としつつ、昨年から仕掛けてきた駅やオフィスのスギダラ化等、社内のスギダラ活動を活性化させたいと思っています。
まず、駅設備として先ほども述べました筑後船小屋在来駅が3月にオープンします。上熊本駅は鉄道高架化の付帯工事で5月に仮駅に切り替えますが、そのホームの壁等にもスギを用いていく予定です。
大分では高架化工事に伴い、駅ビルに入っている大分支社のスペースを高架下に移設しますが、これについてもスギダラオフィス化を目指し、現在内田洋行の皆さんと検討を続けています。オープンは来年の春ですが、もうしばらくすれば詳細をお話できると思っています。
不本意ながら木造駅舎の解体も予定されています。4月に直方駅が新しくなり古い駅舎は解体となります。この駅舎は昔の博多駅を移築したと言われている(詳細不明です)ものですが、駅周辺整備に合わせて橋上化されるため解体となります。地元と連携を取りつつこの駅舎のお葬式もきちんと執り行いたいと思っています。
その他、得意の思いつきでスギダラ活動を社内でも加速させていきます。部下の迷惑そうな顔が目に浮かびますが・・・。
   
 
   
  スギダラケ倶楽部とともに
   
  もちろん、他のスギダラ会員の皆さんとの交流も活発化させたいと思っています。まず1月と2月は、新博多駅ビル見学会と九州新幹線試乗会です。この二つは人数に制限があり希望者全員に参加いただくことはできませんが、この他にも皆さんに参加いただけるようなイベントを考えていきたいと思っています。北部九州支部は支部長である池田陽子さんやそのご主人の溝口伸弥さん(杉の木クラフト)、スギコダマの有馬晋平さんなどのような所謂クラフトワーカー、造形作家、デザイナーという方々がたくさん所属されています。皆さんに弊社のデザインをご覧頂いたり作品の発表の場を提供したりして微力ながらお役に立てればと思っています。また、皆さんとの交流を通じてとかく内向きな弊社の社員も、広い視野と見識を持ってくれるようになればとも思っています。
   
  宮崎から本社に飛ばされて1年と7ヶ月。その間の様々なスギダラ活動を通じて、弊社の社員も少しは人とのつながりの大切さを学ぶとともに、荒れていく線路周辺の森林を他人事ではなく自分自身のこととして何かしなければいけないという気持ちを持つようになってくれたと感じています。とはいえ、実行をするのはこれからです。森林の管理に組織として本気で取組み、地元産の木材を使ってものづくりを行う、そして何より今の動きを会社全体に認知してもらうことに本気に取組まないと、今までのやってきたことが今のポストに私がいる間のただの流行で終わってしまうと思っています。CSRや社会的企業などという言葉も色々なメディアで目にする昨今ですが、地域密着を標榜する企業として耳障りのいい言葉ではなく、真に地域の発展に貢献できることを実行できることが大事であると考えています。スギダラ活動が地域貢献の一つの形として会社の中でも認知されることにより、我々鉄道技術陣の歩むべき方向も単に安く効率的に列車の安定輸送を確保するということから、さらに地域に密着した多様なサービスの提供のための多様な技術の融合へと成長・進化できるのではないかなどと少々大げさに思ったりもしています。それだけに博多駅ビル同様、弊社におけるスギダラの存続も今年が正念場の年であると思っています。
そういうこともあり本年もスギダラを中心として仕事を進めていく所存です。皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。
   
   
   
   
  ●<つたか・まもる> 九州旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 施設部長
   
 
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