連載
  ヤタイのある風景
文・写真 / 南雲勝志
 

いま地域が生き残るために・・・

 

最近ヤタイの話題が出ることが多くなって来た。(営業目的の屋台と区別するためにヤタイと表記する。)その理由はいろいろあろうが、簡単にいろんな人が集まれる居場所が出来ることが最大の理由であろう。
では何で簡単にいろんな人が集まる場所が必要か?
当然ながら、人はそれぞれ個々に一般的な居場所はある。その最たるものは自宅であり、仕事をしていれば職場、勉強していれば学校、またサークルや部活などを含めればさらに多くの居場所を持ち、その場所場所を毎日移動していることになる。
でも考えてみるとその居場所はどちらかというと閉じた場所であり、自分専用のようなものであろう。それが悪いというわけではないが、簡単に部外者が立ち入れ無い場所を自分の居場所と思う傾向はある。そう言った意味で、閉じた空間をいくつか転々としている訳で、それはプライベートな空間と言える。
一方でヤタイによって出来る空間の可能性は基本的に誰でもその場に立ち入り、居場所の一員になれる自由さを持っている。バリアーがないというか。
人と人のコミュニケーションにおいて重要な事は、様々な人々がオープンに楽しんだり議論したり出来ることではないだろうか。もちろん食べたり呑んだり、作ったり、構えず、すっと入っていけるそんな気楽さがヤタイにはあるのだ。つまり領域を超え、バリアーフリーでパブリックな機能を持っているところが特徴であるといえる。
さて、そもそもヤタイとはなんぞやというと、広義には屋外の台、或いは屋根付きの台と推測出来る。まあ、屋根があろうが無かろうが、屋外に設置し、みんなが集まれる機能を持った装置ということであろうか。だから縁台も焼き鳥台も立派な屋台だ。そして移動出来る事も重要な要素であろう。固定されない自由度はなんと言っても楽しいし、束縛されず、必要なところに何時でも持って行ける。

個人的にも10年ほど前からヤタイの魅力に惹かれ、デザインを無我夢中でやってきた。しかし今ほど需要が感じられることは無かった。これも時代の流れ、人々の求めるものの変化でもあろう。
以前からぜひやってみたかったヤタイのデザインコンペ、いよいよ今年の「杉コレ2012 in 宮崎」のテーマとなった。今年はヤタイがもたらす社会的効果にとってひとつのターニングポイントになるような気がしている。

 
  ヤタイのある風景。日南市(G-mark 中小企業長官賞受賞記念パーティー)
 

この原稿を書いていたらエンジニア・アーキテクト協会の機関誌がUPされたメールが届いた。

特集は「モノづくりから始める地域づくり−南雲勝志の方法」恐縮である。そして、
モノの持つ力を活かし、地域とそこに暮らす人々を元気づけていくプロダクトデザイナーの南雲勝志。彼が関わるプロジェクトにはいつも、楽しそうに手を取り合って地域づくりを進める人々の姿があります。人々が地域のために行動するきっかけを生み出すデザイン、それこそが今後の地域づくりに欠かせないものだと考えます。なぜ、彼にはそれが可能なのか。本特集では、南雲勝志の魅力について、彼をよく知る4人の方に語ってもらいます。
・・・と続られている。執筆者は4人。

『もの』と『人』が「こと」をおこし、場が豊になる。
 ー南雲勝志の内から外への眼差しと行動ー

 川上 元美((有)川上デザインルーム代表)
地区の将来をデザインする
 植村 幸治(宮崎県日向土木事務所)
南雲さんとの出会いの頃
 篠原 修(エンジニア・アークテクト協会/GSデザイン会議)
楽しくなければスギダラじゃない!
 菅原 香織(秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科)

いつもお世話になっている方々、それもデザイナー、行政マン、専門家、杉ダラ会員と幅も広い。本当にありがたいことです。
企画をしてくださったEAA事務局の方々、執筆者の皆さんに感謝です。自分にはもったいないような言葉が続いて恐縮ですが、気を引き締め、今後とも杉ダラ精神で邁進していきます。
ありがとうございました!

 

 

 

 

  ● <なぐも・かつし>  デザイナー
ナグモデザイン事務所代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
facebook:https://www.facebook.com/katsushi.nagumo
   
 
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