連載
  杉という木材の建築構造への技術利用/第28回
文/写真 田原 賢
 

「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 2

 
*第27回 「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 1はこちら
   
  地震による木造住宅被害の考察
   
   仙台市太白区緑が丘4丁目のある北側斜面において、宅地造成部分が被害を受け地盤がずれ、土留め部分の石積み擁壁やRC擁壁が破壊された。
   
 
   写真の通り、宅地内だけの対策をしたところで斜面地の地域全体が地すべりを起こすと、個々の宅地補強では対応することは難しい。
   
 
   上記のようなふるい石積みではなく比較的新しいRCL型擁壁の被害だが、写真の通り、擁壁の高さが違うので、その擁壁の大きさおよび応力が違うため、タイプを変えているところのEXP.Jのところで縁が切れているためこのようにずれが生じた。
   
   このようなことは本来ならば基礎や壁も高さが違うからといってそれぞれのタイプで評価しているため分割して個々の評価として見ているが、このような地すべりが発生した場合には、せめて壁だけでも一体化した方がよかったのかもしれない。(法規的に可能であれば)
   
 
 
   一方、この丘の南側の3丁目は78年の『宮県沖地震』で地盤が地すべりし大きな被害を受けた経緯があり、地震後大規模な地すべり対策や造成部分の補強がなされ今回の地震ではほとんど無被害であった。
   
   北側の斜面の地すべり被害に比べて、ほとんど被害は見受けられない。かなり高い石積み擁壁ではあるが、きちんと対策をしていれば被害は軽減されると思われる。
   
 
   
  木造住宅のその他の被害
   
 
   大崎市古川駅前の小さな路地にある古い飲食店では古い建物を改築して既設の壁を無くし出入口を設けた為の被害が見受けられた。
   
 
   上記の写真の出入り口のために、一間巾のすじかいが半間に切り取られた状況。
   
   すじかいの厚みが20mm程度のすじかいで端部も釘どめなので、性能的にはかなり低いと思われるが、改修工事で切ったままの状態にしてしまうとは...。
   
 
 
   剥離したラスモルタルには耐火性能は期待できない為地震後に発生する可能性のある火災に対しては無抵抗となる。適切な施工がされていない故の被害と言える。
   
 
   防水紙・ラス・ステープルともに規定されたJIS製品を使用しないとこのような被害が発生する。
   
   
   
   
  ●<たはら・まさる> 「木構造建築研究所 田原」主宰 http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn
   
 
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