連載
  杉という木材の建築構造への技術利用/第27回
文/写真 田原 賢
 

「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 1

 
 
   今回の東日本大震災の被害調査は、エクスナレッジ社の「建築知識」2011年5月号に速報版として行った調査報告である。ここで掲載する以外の詳細なことについては、今後各方面でいろいろと詳しく掲載されると思うので、そちらを見ていただければと思う。
   
   また、16年前の阪神淡路大震災の直後に取材したものとしては、阪神淡路の被害も非常に悲惨なものがあったが、今回の大津波による被害はそれ以上の悲惨な感じがした。
   
 
 その悲惨な状況を目のあたりにしてこれからの木造を専門とする構造設計者として、何ができるかを考えながら今後に取り組んで行きたい。
   
 
   
  木造住宅について
   
   この地震により倒壊した木造住宅は非常に少ない。特に築10年以内の住宅は無被害に近く、建築基準法の規定や検査体制の強化の効果はあったと思われる。
   
   しかし、震度6強の地域での地震による倒壊は非常に少ないとはいえ、今回の地震波は木造住宅に対して厳しい波ではなかったので有り、「阪神淡路大震災」のような地震波であったならば、かなりの被害が出たと思われる。
   
   つまり、このような想定外の大地震は今後もおこる可能性があるので、やはり最低性能の建築基準法の1.5倍(品確法の等級3)は確保した方が、安全・安心のために必要と思われる。
   
 
   
  概要
   
 
調査日時
2011年 3月 29日〜 4月 1日
調査場所
宮城県仙台市・多賀城市・大崎市
   
 
   
  地震による木造住宅被害の考察
   
   今回の地震による「倒壊事例」はかなり少ない。
 

理由として以下のことが考えられる。

   
  ●地震波の特性として1秒前後の周期のパワーは『阪神淡路大震災』に比べ小さく、このことが木造住宅の倒壊を少なくした原因であると思われる。
   
  ●この地方では
 
  ・2003年の宮城県北部地震(震度6弱〜震度5強を観測)
  ・2005年の宮城県南部地震(震度6弱〜震度5強を観測)
  ・2008年の岩手県沿岸北部を震源とする地震(震度6弱〜震度5強を観測)
  といったように、過去10年以内でも3回大きな地震に見舞われてきた経緯があり、その度に耐震的に不備のある木造住宅は淘汰されたと思われる。
   
 
  仙台市内においては幹線通から見る限りにおいて、目だった被害は見受けられなかった。
  しかし、写真のようにかなり古い木造住宅の被害で屋根瓦や外壁のラスモルタルの被害がわずかではあるが確認できた。
   
 
  上記と同様な伝統的な古い建物の被害
   
   
   
   
  ●<たはら・まさる> 「木構造建築研究所 田原」主宰 http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn
   
 
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