特集 天草・高浜フィールドワーク2011開催
  高浜フィールドワークの感想ぞくぞく!
   
 
日田ラボ
   
  濃いヒト来い、恋をしに高浜へ。
  文/タカクラタカコ
   
  2011年の2月、初めて天草の高浜に行った。藤原惠洋先生と藤田洋三さんと帆足耕一郎さんのパネルディスカッションおよび高浜地区振興会の事例発表。  あのとき、藤原先生が「7月には学生を連れて、まちを歩きたいと思います。そして、みなさんと高浜のことを語りたいと思います。」といった言葉が現実となった。しかも、先生は気軽に、日本全国スギダラケ倶楽部のスギダラ3兄弟(南雲さん・若杉さん・千代田さん)に声をかけていた。その中に、天草出身のデザイナー 若杉浩一さんがいるからという理由で。なんと本当に天草に参加してくれることになった。さらにスギダラのフットワークは軽い。スギダラの面々が次々と参加表明。  準備は、着々と・・・?進んでいった。実は、私はこれまでしっかりとした市民参加型のWSに参加したことがない。公開講座の学外演習やふ印研で参加する牛深ハイヤやすこーしだけ市民参加のワーキングには参加したことはあるけれど、どっぷりと藤原惠洋流市民参加型のワークショップへの参加は、縁が無かったのか参加したことが無かった。  少しの不安と大きな期待で、当日を迎えた。
   
  天草への道は遠い。車で延々4時間。それを思うと、簡単に行こうと思う場所ではない。私が住んでいるトコロは、大分県日田市。売りは「福岡から車で1時間。日帰りも簡単にできる手軽な観光地。」さらに天領だった時代も各地方への交通が便利だったから栄えた。そんな便利が良い日田でも、過疎化は進んでいるのだから、福岡から高速を利用しても4時間かかる高浜の過疎化が進むのは、無理はない。  みんな、都会に行って、便利な暮らしをして、たま〜に田舎に帰るくらいがちょうどいい。しかも、住民ほとんどが知り合いって、濃密すぎる。
   
  まてよ・・・? 藤原惠洋研究室は、濃い。藤原先生自身が濃いのだけど、ここに集まるあらゆる人たちの濃いことといったら・・・・簡単には言い表せない。そういえば、スギダラケの集まりにも何度か顔を出したことがあるけれど、ここも濃い人たちの集まりだったなぁ・・・。  そっか、高浜の人たちとも何とかなるかも知れない。  参加者のグルグル回る自己紹介を聞きながら、そんなコトを考えていたら、着いた。意外と近い。(笑)  高浜地区振興会の方々が待っていてくれた。「早かったですね。遠かったでしょう?」ニコニコしながら、おじさん達が声をかけてくれる。まだ、少し緊張したまま、藤原先生の号令一家、早速会場づくりを始めた。書家 藤原惠洋氏による書を会場に張り出していく。集まり始めた地元の方も「おお〜〜〜っ。」と声をあげていた。  「九大のえらか先生達がなんやらはじめたばい」「なんかおもしろそうばい」といった雰囲気が会場を包んでいく。「何かがはじまる」そんな期待が高まる。
   
  早速、天草高浜支所の中原さんが司会・進行をして、開会式がスタートした。藤原先生のこの天草高浜に来た経緯が説明され、さらに高浜地区の方へ、どんな人たちが来たのかを知ってもらうために、今回の参加者の自己紹介へ。(福岡組、この日4回目の自己紹介。)そこへ、やってきましたスギダラケご一行様。(あ、千代田さんは福岡から参加でしたね。)  会場があたたまってきたところで、まちへ出て、トランセクトウォークへ。中原さんが用意してくれた麦わら帽子をかぶる。麦わら帽子いいねぇ〜。いちいち感動。  高浜公民館を出て、まちを歩く。総勢60名ほど。きっと観光ツアーでも、こんな人数で高浜を歩くことはないだろうというくらい、ぞろぞろと歩く。それでも、高浜のまちは、静か。上田家や寿芳窯、トロッコ軌道、もちより市場の会場、旅館白磯、高浜小学校、白鶴浜、森商事などなど、炎天下の中、少し気が遠くになりながら、3時間ほど町中を歩いた。  参加者興奮気味。「高浜は、スゴイところかも」  たった、数時間歩いただけで魅了される。そんなにすごいのか高浜?大丈夫か?高浜の暑さにやられてるのか?私たち。
   
  ようやく高浜公民館にたどり着いた。ここで一日目のメニューが終了。明日からのグループ活動の説明、そして、学生達の民泊先を発表。可愛らしい学生達は、それぞれ地元のおじさん・おばさん達の家に連れられていった。「頑張ってこいよー。」  社会人達は、茶碗屋さんと白磯さんにチェックインして、汗を流した後、19時に茶碗屋さんに再集合。(長い一日は、まだ終わらなかった。) 茶碗屋さんに着いた時には、宴会がフライングスタートしていた。  再度、皆さんで乾杯!隣同士、どうぞ、宜しくお願いしますと挨拶をしながら、目の前の料理に手をのばす。ほっとする・・・間もなく、本日、実に5回目の自己紹介が始まる。  程良い疲れと、みなさんの自己紹介トークを楽しみながら、高浜の夜は更けていった。
   
  二日目も晴天に恵まれた。朝7時30分から始まる朝市にちょっと早いけど、ま、いっかと思いながら7時ちょっとスギに出かけた。すでに始まっていた(笑)。じゃがいも・たまねぎ・マンゴーを購入。生もの買いたいけど、、、、明日もあるし、、、泣く泣く諦めた。7時30分にやってきた先生達には、残念ながら、ほとんどの商品が完売状態だった。白磯さんの美味しい朝食に元気をもらい、高浜公民館へ散歩がてら歩いていく。途中、高浜小学校の児童によるイカダくだりを地元の人たちと応援。先生達が必死で竿を操っていた。ガンバレ先生! さて、学生達も集まり、二日目のプログラムスタート。藤原先生から昨日のトランセクトウォークをふまえ、高浜の歴史と背景などのレクチャーで、より高浜を理解していく。さらに、今回用意された5つのプログラムにグループ分け。参加者にはどのプログラムに参加したいのか自由に選んでもらった。やはり、プログラムCとDが人気。私もそれが良かったな〜と思いつつ、全く畑違いのプロダクトデザインと公共サイン プログラムEを選んだ。
   
  何を考えたらいいんだろう?公共サインって、看板のこと??看板のデザイン??森商事さんが作っているスプーンをはじめ、椅子とか机のデザイン?何をやったらいいんだろう・・・・。すでに、選んだことに後悔をしつつ、高浜FW恒例の自己紹介タイム。10人弱の自己紹介はあっさり終わった。で、私たち何をすれば・・・・全員南雲さんを頼りながら、それぞれ公共サインのイメージや高浜のイメージについて、少しずつ話をしはじめた。  「高浜に大きな看板って似合わないような気がする」「看板で案内されるというより、誰かが教えてくれるといいよね。」「○○さんは、釣りに詳しいから、あの人に穴場を尋ねてみてねというお知らせをするっていうのは?」「人が人を案内するためのサインを家の前につけるのがいいかも。」「どんなサインがいいかな。家の前だから、小さなものがいい。」「高浜ならではで、揃っているほうがいいよ。」「せっかく陶石のまちなんだから、それがわかるほうがいいよ」「森さんのスプーンとかもイイ。食に詳しい人はスプーンで、釣りは魚。」「じゃあ、トイレは?高浜に公共トイレってどのくらいあるのかな?地元に人に借りるって無理かな?」
   
  それぞれ高浜へのイメージを考えながら、自分の中のサインを形にし始めた。私も、へたくそだけど、模造紙に絵を描いてみた。「これなに?」なんて言われながら。 午後は、登り窯跡地などいくつかを見て回ることにした。森さん・松原さんが車を出してくれて、分乗。口数少ない松原さんが「登り窯は、こっちからがいい写真がとれる。少し写真なんかもやってるもんで、たまに撮りにくる。」と言って、川の対岸を案内してくれた。さらに、採石場や荒尾岳公園など、ガイドマップに載っているけれど、そこまでは載っていないというところまで連れて行ってくれた。さすが地元。松原さんは「友達が船を持ってるから、それに乗るともっといい。」と言ってくださった。80%行く気になったけれど、さすがに諦めた。次回は、是非、海から眺める高浜を体験したい。勝手に松原さんのことを「天草高浜の高倉健さん」だと盛り上がりながら、午後のドライブが終わった。
   
  さて、公民館にもどり、まとめ。え?まとめ?高浜楽しかったじゃダメですか?何とか、まとめだしたところで、南雲さんが「で、キャッチコピーは?」え?キャッチコピー???たしかに、スギダラのイベントって、「杉がいいやinシーガイヤ」「西都でエキサイト」というコピーがついていたなぁ・・・・。松本会長たちに「高浜弁で、おもしろいとか、楽しいって何て言うんですか?」「○○は?」「××は?」まとめどころじゃない、キャッチコピーが決まらないと先に進まないらしい。よし!続きは、今夜のバーべキューで!ということで、あっさり解散。いいのか?グループE!間に合うのか?
   
  海に沈む太陽を見ながら、感動。道路に横たわって、記念撮影。夕陽に向かって疾走。まるで、青春ドラマ。いつもの夕陽と何が違うのだろう。みんなで、夕陽をみながらはしゃいでしまう。アルコールは少し入っているけれど、それだけではない、わくわくした気持ちがここにあった。 港にもどって、再び、自己紹介と二日間の感想を言い合う。(明日の発表、大丈夫だろうか?)
   
  最終日三日目。バーベキューの片づけが朝の6時30分から。先に行ってしまった三浦さんに遅ればせながら、到着。ほぼ終了。ええ〜〜片づけもフライング?早いよ、高浜。  9時からのまとめ作業に、グループEのメンバーは焦っていた。キャッチコピーも決まっていない、まとめ作業もまだまだだ。発表できるかな?森さんが、「オレがほんとに発表するの?」心配している。そこへ、南雲氏登場。「キャッチコピーできた。ちゃんと昨日の夜、考えた。・・・・・・サイン・小サイン・タンジュンダ!」「ん?ん??うんうん、いいと思う。」高浜のおじさん達は、よくわからないまま、「サイン・小サイン・タンジュンダ!」に決定。
   
  あっという間に、発表の時間。早速、グループAの発表。テーマは、歴史的建築・文化財まちづくり。で、田中さんの上田家七代目上田宣珍にスポットを当てたい!という熱い思いで「上田よしうず紙芝居」が完成。「えらいぞ!よしうず!」「それいけ!よしうず!」「すごいぞ!よしうず!」「面白いよ!田中さん!」だった。最初の発表から、このテンション。緊張する。そのテンションは、ZIKIZIKIプロジェクトでも、高浜マップづくりでも、高浜暦づくりのサマータイガーでも、さがることなく続いた。私たちの「サイン・小サイン・タンジュンダ!」の発表は、われらが森さんと南雲さんの淡々とだけど私たちの高浜への優しい思いがギュッと詰まった発表だった。(その後、発表に貢献しなかった私は、再度意見を求められることになったのだけれど)
   
  どれもこれも夢物語と実現可能なものとが入り交じった濃密な発表だった。たった三日間の成果とは思えないくらい。  お昼は、私がこの高浜のFWで一番楽しみにしていた「せんだご汁」。これがあるから来たようなものだ。本当に美味しい。しかも、今回はカボチャが練り込まれた黄金のせんだご汁。このだんごひとつで盛り上がる私って変だろうか?いや、きっと変じゃない。そのくらい美味しい。天草では、普通らしいけど、郷土料理としてもっとアピールしてよいと思う。
   
  今回の最後の締めくくりは、日本全国スギダラケ倶楽部スギダラ3兄弟によるトークショー。今年の1月に杉がいいや!inシーガイヤで聞いた、あのトークが再び。ダジャレ満載で、ふざけているのに、じーんとする。そんな南雲さんたちの話。高浜の方達は、うんうんとうなずきなら、メモをとっていた。(だじゃれをメモってたわけじゃないですよね?)  締めくくりの閉会式。藤原先生の振りに、三浦さんと私はついていくのに必死だった。三日間が濃厚すぎて、一日目からどうでしたか?の先生の言葉に、初日のまちあるきが倒れそうだったこと、三日間ウロウロしていると地元の方と挨拶をするようになったと返すのがやっとだった。少しずつ参加者の方にマイクを渡し、感想や意見を言ってもらう。民泊した先の方へ向けて「お父さん、高浜は第二のふるさとです。必ずまた来ます。」「暑中見舞い必ず出します。」と呼びかける姿に、一同感動。それだけ、高浜の方には、大変良くしていただいた。遠くからやってきた、見知らぬ我々を、快く受け入れてくださった高浜のみなさんに本当に感謝したい。我々がバスに乗り込む姿を見送りながら、「サマータイガー(夏さん)も連れてってよ!」と笑う高浜の方々。本当に、最後まで優しく温かかった。
   
  帰りのバスの中、感想の中に、高浜地区振興会に参加していない方の話やこれからの高浜との関わり方についてもそれぞれ話がでた。  どの町も、「まちづくり」とか「活性化」という言葉で一生懸命取り組んでいるけれど、持続するというのは、難しい。先週から始まった、菊池市の取り組みや日田でのことも、持続可能(サステナビリティ)なまちづくりをしていくというのが一番重要になってくる。まちの人だけでは心が折れてしまうことも多々あると思う。高浜もすでに取り組んで来た方の本音や振興会そのものを遠巻きで見ている方の気持ち、そういったつぶやきみたいなものを丁寧に聞きながら、いわゆるよそ者が関わるメリットを活かしていきたい。
   
  これからも高浜のまちは、私たちを待ってくれているだろう。次は、船に乗って回りたいし、こどもたちとも交流してみたい。さらに、せんだごを一緒に作ってみたい。あ、サインも作らなくては。ZIKIZIKI商品の開発もだった!スギダラ天草支部もできたし。それを考えただけでも、わくわくする。現在、勝手に菊池キャンペーンレディをやっているけれど(日田で地道に活動中。)、高浜キャンペーンもやらなくちゃ。そんなことを考えて振り返っていたら、こんなに長い感想文になってしまった。
   
  ●<たかくら・たかこ>
   
   
   
   
 
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