連載
  スギダラな人々探訪/第51回 「やりスギサーフボード 小野慶高さん」
文/ 千代田健一
  杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 
随分前(2006年4月)になりますが、都城の家具会社にお勤めの中村健司(ナカムラタケシ)さんに飫肥杉でできたサーフボードの記事を書いてもらったことがあります。→http://www.m-sugi.com/09/m-sugi_09_nakamura.htm
   
  テレビ取材もあり、話題になったのですが、その記事を書いてもらった時の杉のサーフボードの仕様はムク板を成型したもので、重さが70kgあり、見た目にも堂々たるものでした。
今回ご紹介するのは、重さ何と8kgの杉のサーフボード!!!
会員No.680 小野慶高さんから月刊杉編集長の内田さんのところに売り込み・・・ではなく、製作レポートが届き、執筆をお願いしました。
かなり逝っちゃってる?サーフボードです! 多分、ご本人も・・・うそ!
その「やりスギサーフボード」とはいかなものか!!!
   
 

   
  文・写真/小野 慶高
   
  スギダラの皆様、初めまして。会員番号680、小野慶高と申します。
ジュエリーの卸が本業ですが本業そっちのけで杉サーフボード作りに熱中しています。思いつきからかれこれ7,8年が経つでしょうか。これまでを簡単に紹介させていただきます。お付き合い下さい。
   
 

最初は自分の所有欲を満たすようなサーフボードが見当たらなく、それなら自分で企画してしまえという無茶な思いつきからでした。その所有欲を満たすというのがウッドサーフボードです。当時から存在しなかった訳ではないのですがおよそ日常的に使用できるようなものではなかったのです。今もですが。

   
  流通量は今でもごく少なく、それに伴い価格もビックリ。スポーツ用品なのに約50万から100万円もするのです!消耗品なのに!こうなってくるとほとんど芸術品の域で凡人の勇気だけではとても使うことは出来ません。そこで現実的な価格で気軽に使えるウッドサーフボード企画がスタートする事になったのです。
   
  メインテーマが「今だから出来る、古くて新しいウッドサーフボード」です。 古いウッドサーフボードをリプロダクトするだけなら自分じゃなくても良いという思いがあり、見た目はクラシック、性能はモダンそして価格はリーズナブルにとオンリーワンを追求していく事になりました。
   
 

船と同様にサーフボードも最初は木で作られていました。材料の化学化とともにウッドサーフボードも衰退していくこととなりました。当時からウッドサーフボードの工法として大きく3種類がありました。

1.無垢の板を削り出す。

2.無垢の板を肉抜きして組上げる。

3.骨組に細い板を張り付けていく。

です。現在でも基本的にはこれらの工法で作られています。
しかし、これは私見ですがウッドサーフボードは工法等が成熟する前に衰退してしまったと思われるので性能的にも改善の余地が大きく残されていると考えています。材料と設計と工法次第では現在主流のフォームサーフボードの性能を凌駕できるとも考えています。

   
 
 
@型板に沿って板を張り合わせる。   A中は中空で骨組のみ。
 
 
BFRPでコーティング。   Cニスで仕上げ。
   
 

材料となる樹種については最初から杉に決めていた訳ではありませんでした。何種類か候補があり、イメージした素材感や特性、加工性からどうやらサーフボードの素材としては杉がいいみたいだということが分かり選択しました。
試作1号機はお世話になった所が埼玉県飯能市という事で西川材を使いました。そして更なる性能向上の為に次に指南を仰いだところが静岡県浜松市でしたので以降、現在まで天竜杉を利用しています。

   
 
 
カリフォルニアでの出展風景。2010.Apr    
   
 

去年の4月にサーフィンの本場カリフォルニアでの展示会に出展しました。ダメ出しをもらうつもりで行ったのですが反応は意外なものでした。若い人にはまるで見向きもされませんでしたが中年以降の人には樹種や工法など専門的な質問をしてくる人も多く、本場の層の厚さを実感しました。また、質問をするほとんどが人が自分より先輩でしたが製作者への敬意を忘れない態度には感動しました。

   
 
 
     
   
  持っていったロングボードの前記の「3.骨組に細い板を張り付けていく。」という工法でカテゴリーとしてはホローボードと呼ばれるものです。 長さ約290cmで重さ約9kgでした。一般的なウッドロングボードの重さが12kg前後ですから持った人は驚かれました。(現在では設計、工法をアレンジし同サイズで8kg弱になっています。)
  視覚的にも柾目を使い、木目と赤白のコントラストを意識したデザインはアメリカ人には新鮮だったようで好評でした。意外な所で潜在的な日本人の美意識を再確認しました。 現在では現地で知り合った人の協力でカリフォルニア仕様のモデル開発をしています。
   
 
 
     
   
   
   
 
   
   
   
  ●<ちよだ・けんいち> インハウス・インテリアデザイナー
株式会社パワープレイス所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
『スギダラな人々探訪』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo.htm
『スギダラな人々探訪2』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo2.htm
   
 
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