特集 杉と温泉ぐるぐる計画 報告
  杉ぐる計画の内容報告

文/ 池田陽子

 
10月2日(土)、3日(日)に催された武雄温泉と嬉野温泉にある二つの温泉旅館と波佐見のギャラリーの3つの会場を杉でつないだイベント、杉と温泉ぐるぐる計画。その全容をご紹介しますと・・
   
 
 
 
ちらしはもちろん長尾さんデザイン   どんな杉モノで会場が埋め尽くされるか想像を掻き立てられます。
   
  ちらしの表紙にもなっているのが、武雄温泉の京都屋さんと嬉野温泉の旅館大村屋さんに共通の目玉企画「杉ダマ温泉」です。男女各温泉に50個ずつ球体の杉のオブジェ、杉ダマを浮かべて杉の手触りと香りを楽しみながら温泉を堪能していただきました。1つがだいたい30×20×10センチくらいあって結構大きいので、それが湯船にわらわらと浮かんでいるとそれだけで相当なインパクトがあります。実際に入ってみましたが、杉ダマをなでたり、においをかいでみたり、沈めてポコンと浮かばせたりしていると、なんだか楽しくなってきます。杉ダマが浮かぶ光景も妙にしっくりきていて、イベント期間中だけでなく常に浮かべていてもいいくらい。一緒になったお客さんも入ってくるなり、わあー!と歓声を上げていらっしゃいました。それにしても各旅館分の杉ダマ200個をこつこつと製作された実行委員のみなさんのご苦労には頭が下がります。
   
 
 
杉ぐるロゴを焼印した杉の輪切りの各旅館共通の温泉手形。4回分入れてとってもお得なのも嬉しい。   サイズもいろいろあります。
 
  気持ち良さそうにぷかぷか浮かぶ杉ダマ。写真は京都屋さんのお風呂
   
  杉ぐるにお越しのお客様に泊りがけでゆっくりと楽しんでいただけるようにと各旅館では特別宿泊プランが組まれ、杉ぐる温泉手形や源泉かけ流し貸切風呂のサービスなどの特典がありました。
   
 
 
旅館大村屋さんの源泉かけ流し貸切風呂   杉ぐるスイーツセット。湯上りに嬉野茶を使用した抹茶プリンをどうぞ
   
  そして互いに20〜30分離れた3つの町を回遊できるようにと武雄温泉の京都屋さんと嬉野温泉の大村屋さんのシャトルバス2台が杉ぐるバスとして用意されました。1時間に1本の割合で運行したのでお客さんもかなり利用しやすかったようです。さらに、企画にいたく共感された嬉野温泉観光協会の吉川さんがバスガイドを買って出てくださって、地域の紹介はもちろん、個人的に好きな風景などの見所も案内してくださったので、町から町への移動も楽しめたそう(薫杉さん談)。吉川さんも楽しんでやってくださっていたようで、夜の交流会で「今日は2ぐる(2周)でしたが、明日は3ぐるします!」と嬉しそうに話されていたのが印象的でした。
   
 
 
京都屋さんのレトロな雰囲気の杉ぐる号   杉ぐるバスの表示も杉シートを利用
   
  バスの出発、終着地となったのはJR武雄温泉駅より程近いところにある京都屋さんです。バスを待っている間にお腹を満たしてもらおうと、移動式鉄製ピザ釜による天然酵母のピザ(今回は燃料にも杉を使用!杉ピザです)、オーガニックなカレーと手打ちうどん、そして京都屋さんの社長さん自らが握った佐賀牛の柿の葉ずしなどが用意されました。杉屋台で販売され、とっても和やかな雰囲気になっていました。お土産としては多久にある造り酒屋「東鶴」さんと嬉野温泉にある「井出酒造」さんに協力していただいて、白木の杉ちょこが2つついた地酒セットを各旅館で販売。「東鶴」はデザイナー北島敬明さんによる杉ラベルで特別にご用意!大好評にて早々に完売いたしました。
   
 
  エントランスの部分に設置された杉屋台
 
 
大人気だった天然酵母の杉ピザ   杉ちょこで飲む地酒は最高です
   
  杉ぐるバスの次なる目的地は隣町にある長崎県は波佐見にあるギャラリー、モンネ・ポルト(http://monne-porte.com)です。築80年の製陶所跡地を利用した趣のあるギャラリーでは「杉ぐる・クラフト展」と題して、九州の木工作家18組による杉をテーマにした作品の展示会が行われました。家具、器、おもちゃ、などなど2年前の杉モノ・デザイン展のときにはなかった作品も加わり、見ごたえのある展示となりました。
   
 
  オープン早々、たくさんのお客さんでにぎわいました
 
 
温泉、杉とくれば下駄です。日田下駄の本野はきもの工業さんに白木バージョンの下駄も作っていただきました。   おひさまとかぜさんの杉舟杉舟はお風呂で遊べるおもちゃです。後ろのスクリューにゴムをかけてくるくるまわして手を離すとビューンと進みます。奥はbookMt.furnitureさんの杉トレイ。長手の材がとても薄くシャープな印象。
 
 
飛鳥工房さんのおもちゃで遊ぶ女の子。ちょっと高いところに置いてあってもちゃんと見つけちゃうんですね。   おひさまとかぜさんのコーナーにもいつも子供たちが集まっていました。展示会場であることを忘れて夢中で遊ぶ姿がかわいらしい
 
 
TODAKA WOOD STUDIOさんのダイニングテーブルとチェア。洗練されたプロポーションで美しい   戸高さんの奥さん朋子さんも杉の器をたくさん出展してくださいました。オイルフィニッシュの銘々皿など暮らしに馴染む器たち。写真は杉の漆のボウル。
 
となりの仕事場さんの水車をモチーフにした屋台。まあるくやわらかい空間です   福岡の八女で作られている杉線香。水車で粉に引いた杉の葉を原料につくられています。会場にも杉線香のいい香りが立ち込めました。奥は杉のお弁当箱。とっても丁寧なつくりに作家さんの人柄がうかがえます。
 
 
今回の展示会で一番遠い宮崎から出展してくださったobisugi designさん。杉とスチールの組み合わせが新鮮に映ったようで見入っている来場者の方を多々おみかけしました。   無垢板で構成されるスツールもどっしりとした存在感があります。
 
NPO法人循環型たてもの研究塾さんの杉ボックス。重ねて棚のようにしてもよいし、ひとつだけで子どもの机にしても。   松岡漆行株式会社さんのスツール。杉のつき板を表面に貼ってつくられているので見た目に反してびっくりするくらい軽くて使いやすい。
 
 
和樹(なごみのき)さんのゆらっとボウル。ころんとした形がかわいらしい。   杉の木クラフトの丸椅子とキッチンスツール。
 
 
シルバーデザイナー堀光樹さん作の杉ぐるキャラ「露天風呂に入る杉の妖精」。   いくつかあった候補のひとつで人気の高かった「桶を持って走る、杉の妖精」はスタッフTシャツになりました。欲しい人が続出の人気アイテムに。
   
  両日ともに多くのお客さんが会場へ足を運んでくださって、展示された杉のクラフトを手にとって感触を確かめたり、香りをかいでみたりしながらお気に入りのものを求めてくださいました。
   
 
  たくさんのお客さんで終日賑わった会場。
   
  杉ぐるバスの2つめの停車駅である旅館大村屋さんでは、初日の夜にイベント関係者の懇親会が設けられました。今回のイベントで初めてお会いする方々とお話したり、2年前の杉モノ・デザイン展以来のご縁のある作家さんたちとは再会を喜び合い、お互いの近況報告をして交流を深めたりと、和気あいあいとした空気に包まれました。そこにいるみんなが楽しんでいるということがこの上なく心地よい宴となりました。
   
  そして第二部として、22時より「クラブSU-GI」がオープン!残念ながら体調が悪くて懇親会の後に部屋へ引き上げてしまったので実際どんな感じだったのか分からないのですが、佐賀市内にある映画館シエマの芳賀さんのDJによるファンキーでソウルフルな昭和歌謡曲のチョイスで、会場にいる全員が夜中まで踊りまくったとか。翌朝のみなさんの興奮冷めやらぬ様子から察するに相当な盛り上がりだったみたいです。
   
  ひとつの場所に留まらず3つの会場を回って楽しんでもらうという新しい試みは、来てくださった方々にも喜んでいただけたようで、次の開催を期待する声も多く届いているそう。
   
  2年前の杉モノ・デザイン展で実行委員に加わってくださった長尾さんが、イベント後にスギダラ会員になり、そして今度は先導役になって地元の仲間とまた杉をテーマにしたイベントを企画してくれました。そのことがとても嬉しく、そしてこのイベントを通してまた仲間が増え、つながりが広がっていっていることに感動を覚えました。杉の人をつなぐ力や可能性を改めて見出せた機会となりました。
   
  イベントを成功させるために長尾さんと共に奔走した実行委員の満原さん、山上さん、本山さん、そして出展者、関係者のみなさま、本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございました。 またいつか共につくりあげる機会を持ち、みなさんでお会いしましょう!
   
  「写真提供:長尾さん、千代田さん、池田」
   
   
  ●<いけだ・ようこ> 木工作家
1973年福岡市生まれ
日本語教師を目指すが手仕事に魅かれ木工を始める。現在「杉の木クラフト」にて杉の製作活動を行う。
スギダラ北部九州支部長
   
 
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