第二特集 ユイス展 in Akita
 

東京 ユイス 秋田

文/ 萩原 修
 
ユイスをもって秋田に行った。
温泉入りに行ったわけじゃなくて、秋田で「ユイス」展の巡回をするためだ。
よく考えたら、杉の本場 秋田に 東京の杉をもっていくなんてどうかしている。
   
  正直言って、秋田での展示は、自分で積極的に動いたわけじゃなくて、いつのまにかお膳立てがされていた感じだ。ユイスの8人のデザイナーのひとりである武藤貴臣さん、そして、スギダラ秋田支部長の菅原香織さんを中心に、知らないうちに着々と準備がすすめられていた。
   
  2010年2月21日に武藤さんからこんなメールがきた。
   
 
 
武藤さん: ユイス関係者の皆様
明けて大分経ってしまってますが、今年もどうぞ宜しくお願い致します。早速ですが、ユイス展、秋田でもやりませんか?年末、北のスギダラの菅原先生から、秋田での開催を強く望まれました。で、知人がギャラリーを経営してまして、空きを打診していたのですが、先日返答がありました。期間は5/14(金)〜16(日)、搬入は5/13(木)と期間は短いのですが…。5月中ぐらいは、温かく、田んぼに水も入ってなかなか良い季節です。ギャラリーは秋田市内なのですが、ちょっと足を伸ばして、乳頭温泉なんかも良いかなと。いかがでしょうか?
武藤
 
   
  もちろん、ことわる理由もなく、他の予定もはいっていなかったので、
「やりましょう。もちろん、ぼくも行きますよ。秋田は、いつか行ってみたかったし、菅原さんにも会いたし」と答えた。田んぼ、乳頭も気になった。
   
  そして、4月1日のエープリルフールの日には、こんなメールが。
   
 
 
武藤さん: こんばんは、スギダラ武藤です。
秋田巡回展が現実味を帯びつつあります。萩原さんが秋田に来られるのは5/13(木)14(金)で大丈夫ですよね?13(木)の夜はトークイベントのようなものを開催し、巡回展費用の足しに出来ればと北のスギダラのすぎっちと相談した次第です。トークイベントの内容は、杉ダラの事とユイスの事でインタビュー形式でご協力をお願いしたく。(すぎっちが質問、萩原さんが答えるというかたちで)また、移動ですが、13日の午後秋田入り、14日の夕方東京入りぐらいでしょうか?
 
   
  まあ、まじめな武藤さんが嘘をつくわけもなく、話はどんどんと進んでいるようだった。
さらに、5月3日には、より具体的なメールが。
   
 
 
武藤さん: 北のスギダラにて正式告知されました!
http://sgicci.exblog.jp/
会場となるギャラリー「ココラボラトリー」の様子や、間取りは、添付ファイルとサイトをご覧下さい。また、DMの表面を今回の情報に更新したもの(水野さん、データありがとうございました!)、作成したA4のチラシ(佐藤マコトさん、画像ありがとうございました!)も添付致しました。
動きとしては、明日5/4。武藤がフルスイングさんに行き、荷造り梱包。
5/13(木)の昼過ぎに武藤と萩原さんが秋田入り。その後、武藤は設営へ。萩原さんは菅原先生と打ち合わせをお願い致します。18:30からトークイベント開催と。
5/14(金)は秋田をぶらっと。温泉も行けるとベスト!夕方秋田発のこまちで萩原さんは東京へ。15、16は武藤が展示番。で撤収の荷造りを行います。
 
   
 

追加で会場についての説明。

   
 
 
武藤さん: ココラボラトリーの紹介を忘れてました。
http://www.cocolab.net/
http://cocolab.jugem.jp/
元々は印刷工場だったものをギャラリー主宰が購入し、改装したものです。
一階はギャラリー、二階には喫茶店、三階には本屋服飾資材・オーダーメードのお店が入っています。
どのお店も好きでやってます!という感じのこだわりに溢れたお店です。
秋田を訪れた際には是非立ち寄ってみて頂きたい場所です。
 
   
  1週間前には、こんな連絡が。
   
 
 
武藤さん: こんにちわ、スギダラ武藤です。
5/13、14の秋田行きについてご連絡させて頂きます。
   
 

●5/13(木)

  08:40 東京駅 東北・山形・秋田・上越・長野新幹線中央のりかえ口集合
(添付資料参照。図中の「このあたり」に来たら電話を下さい)
  08:56 東京発JR新幹線こまち9号に乗車(4時間乗車)
  12:56 秋田駅着→ココラボラトリーへ移動
  13:20 ココラボラトリー到着 同ビル内石田珈琲等にて昼食
  14:20 設営開始
  15:00 菅原先生合流 設営及びトークイベント内容打ち合わせ
  18:30 トークイベント開始(おにぎり・お茶あり)
  21:30 トークイベント終了
  21:40 打ち上げ
打ち上げ終了次第、萩原さんはホテルへ。(ホテルは菅原先生に手配して頂いてます)
     
  ●5/14(金)
日中の行動については、現在菅原先生が色々画策中。
武藤も同行すべきか、それともユイス展に張り付いてるべきか悩むところです。
     
  17:09 JR新幹線こまち28号にて秋田発
(日中プランによっては、角館・田沢湖からの乗車もあり)
  21:08 東京着
     
 

と、動きはこんなところです。

   
  当日、萩原さんにお持ち頂くのは「スギダラトーキョー手ぬぐい×30」と、つくし文具店オリジナル商品(つくしモノ)を数点お願い致します。つくしモノについては、基本スギダライベントなのですが、来るのが萩原さんだという事で、トークイベント来場予定客から是非つくしについて少しでも聞きたいという声が多く、萩原さんの紹介の一環としてお願い出来ればというところです。
以上、宜しくお願い致します!
 
   
  ぼくとしては、何も考えることなく、秋田に行くすべてが整っていた。ついでに、この文章も武藤さんのメールをつなぎあわせることでできてしまった。
   
  あまりにも考えないうちに、秋田に行くことになったので、出発の当日になって心配になったのは、ふたつ。ひとつは、「はたして展示はうまくいくのか」ということ。会場も見ていないし、どんな設営をするのか、まったくわかっていない。展示台や照明はどうなっているのか、そもそも設営をする人はたりているのか。短い時間で設営できるのか。
   
  もうひとつは、「トークでは何を話せばいいのか」。ユイスの話だけで、何時間も話ができるのだろうか。有料で来た人を満足させられるのか。そもそも、ユイスの話を聞きにくる人がそんなにいるのか。などなど、不安はつのるばかりだ。
   
  結果的には、何も心配はいらなかった。武藤さん、菅原さん、そして、地元秋田のサポート、会場の優秀なスタッフのおかげで、その場で考えたとは思えない、展示会場ができあがった。これまでの会場で一番よかったと思えたほどだった。
   
  トークは、ビールを飲みながらのゆるい感じになった。人前で話すのが苦手なぼくには好都合だった。ユイスとあんまり関係ない話をしながら、最後は、武藤さんを引きずりだして、つくし文具店の商品をじゃんけんで勝った人に配ったりして、なんとかその場をのりきった。もちろん、スギダラらしく、来ていた人全員に自己紹介してもらった。菅原さんがずいぶんと声をかけて、人が集まったことを知った。うれしかった。
   
  その後の飲み会は、弘前、盛岡から来た人もいっしょに、いい感じでもりあがった。北の人と貴重な交流ができた。ぼくの地味で実直な性格は、北にむいているのだと感じた。
   
  次の日には、ささっと展示替えして、菅原さんの案内で秋田めぐり。古い街道や建物、町中の試み、大学にも寄ってきた。しょっぱい温泉にもはいった。
   
  どんよりとした空が似合う秋田。県全体で100万人しかいない秋田。それでも、活き活きと活動している人がいる。地元を愛し、地域にあるものを活かしながら、人を呼び戻し、呼び込み、さまざまな試みをしていることを知った。
   
  せっかくできた縁を大事にして、ふたたび秋田に行ける日を楽しみにしている。
いつかユイス秋田杉バージョンもできるかもしれない。
   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう>デザインディレクター。つくし文具店店主。
1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
大日本印刷、リビングデザインセンターOZONEを経て、2004年独立。日用品、店、展覧会、書籍などの企画、プロデュースをてがける。著書に「9坪の家」「デザインスタンス」「コドモのどうぐばこ」などがある。
つくし文具店:http://www.tsu-ku-shi.net/
『東京の杉を考える』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_tokyo.htm
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved