連載

 

杉で仕掛ける/第2回

文/ 海野洋光

 

 
 

スギダラの活動の中心となるデザイナーの人たちは、競技に例えるならば、柔道だと海杉は考えています。柔道は、「一本背負い」と言う華麗な技で相手を投げ飛ばす力を持ちながら、基本は、「受身」という地味な個人競技のスポーツです。(受身=負ける練習 by相田みつを) 個人競技の彼等が木材・林業界に殴りこみをかけ、2年足らずで全国に活動を展開する団体となって会員を増やしてきたことも不思議な話ですが、事実です。スギダラチャーターメンバー(創設時のメンバー)でさえ、こんなに多くの会員になってくれるとは思ってもいなかったはずです。

さて、どの団体も会員拡大には頭を悩ましています。スギダラがどうしてこんなに短期間で大きく(現在会員数657名)なっていったか知りたい人が多いみたいです。実は、このテクニックだけで一冊の本になります。見たことありませんか?「行列のできる○○○屋の作り方」「一日10000人の訪れる強力パワーサイトの達人」「はじめから10000人の最強メールマガジン」「誰でも訪れやすいブログの作り方」などなど最近、売れている本です。

お金を払ってでも人を集めたいという人もいます。でも、月刊杉の読者には、スギダラ流入会のテクニックを海杉が公開しましょう。はじめに断っておきますが、このテクニックは、当初から誰かが意図的に組み立てて出来たものではありません。

   
  スギダラケ倶楽部HPのトップ
  スギダラホームページのトップ
   
 

スギダラホームページの基本は信用

   
 

スギダラの会員拡大は、他団体(特に林業・木材業関連)の注目を一心に浴びているのですが、いくつかポイントを抑える必要があります。そのひとつに入会をインターネット経由にしている点です。インターネットで入会手続きなんて「今時」でしょ。でも、ここでポイントになるのは、信頼性のあるHPを作成し、きちんと管理、更新しているかと言う点にあります。この点は、スギダラのHPは間違いなく合格点でしょう。日替わりとは言いませんが、きちんと管理されています。インターネットには、機械と機械の通信で人と人のつながりが疎遠になりそうですが、スギダラ支部のブログや情報、話題は、各担当者の創意工夫で親近感のあるものになっています。初めて閲覧した方でも安心して読んでいただけます。組織のHPは組織の志向を押し付け気味になりがちですが、スギダラのHPは、文章も丁寧で、写真の配置に気を配って読みやすく工夫をしています。これは、前号の「言霊」でも書きましたが、とにかく手を抜かないからです。「入会しようかなあ」と思わせる仕掛けがスギダラのHPの随所に配置してあります。アイコンひとつをとってみても細部にこだわりを見せているのが判ります。有名なマーケティングの評論家の西川りゅじん氏もスギダラのHPを見て絶賛していました。

「杉で仕掛ける」のお題ですから、HPを作れば良いというだけではないことを解説しなければなりません。簡単に言うとある意味、新興宗教の裏テクニック集のようなもので詐欺商法の寸前と言ってもよいものです。このテクニックをきちんと身に付けて商売で実践していれば、海杉は、簡単に億万長者になれるのですが、危ない橋より楽しい橋をどうしても選んでしまうのでそうはいきません。

   
   
 

HPをみていただく工夫

   
 

どんなにすばらしいHPを作ってもスギダラのHPを見ていただかなければ、何の意味もありません。海杉は、入会に導く、心をくすぐるスギダラテクニックを見つけたのです。

初めて聞く「日本全国スギダラケ倶楽部」と言う名前がもう本気なのか、冗談なのか読む人の神経を不安定にさせています。「スギダラ」という名前も、冗談みたいだけれどやっていることはすごくまともですごい。ちなみに海杉がタイピングすると「日本残酷スギダラケ倶楽部」となるのもなぜか?うなずいてしまいます。このネーミング(言霊)だけでも、神経を不安にさせる効果は、十分です。この名前を耳にした人は、不安を覚え、インターネットで検索を始めるのです。(この時点で仕掛けは、ほぼ成功ですね)これは、人に一種の不安定な要因を引き出しています。情報のハカリが傾いている状態です。何とか釣り合った状態に持っていきたいと無意識に行動が起こるものです。「怖いもの見たさ」「やめたいけどやめられない」「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とも言います。不安定さが今までの自分の常識と違うためにスギダラのHPを覗くことになってしまいます。人間が物事の判断を迫られるとアンバランスな方を選んでしまうものです。

入会した方には、二通りの方しかいません。メンバーの勧めでスギダラのHPを知り、活動の内容がバラエティに富んで楽しそうと感じた時、入会無料(今なら)があるアイコンを「ポン」と、即入会して下さる方。入会を迷っていた人で毎回、聞かされるイベントに興味を持ち始め、HPを読む機会が次第に増え、実際のスギダラ活動にちょっと「触れた」キッカケでとうとう入会のアイコンを押してしまった−と言う方。当たり前のようですが、この二通りの方しかいないのです。不安にさせるネーミングは、「印象に残す」仕掛けですが、十分、次のステップを通り越して、「入会」を考えさせてしまうほどのパワーになってしまいました。それだけ、魅力的な情報が大量に掲載されるのです。敷居が低く、簡単に入会できることを自然に振舞うことは結構、高難度のテクニックです。

   
   
 

迷っている方の背中を押すテクニック

   
 

スギダラに入会する方の動機はそれぞれですが、スギダラHPを開いた入会予備軍の方が、膨大なスギダラHPを読んでいくと心に連鎖するように仕掛けられています。仕掛けは、「迷い」です。「迷い」というステップが用意されている階段形式の設計になっています。「シンプル」「奥が深い」「全く知らなかったこと」「関連する、興味がある」「大変そう」「楽しそう」「すごいことをしている」「敷居が低い」などが迷いのキーワードを踏み込みながら、少しずつスギダラの階段を昇るような仕掛けになっているのです。

初めての方は、スギダラのHPを読めば読むほど、どうすればこんな活動ができるのか不思議になるそうです。活動の経過や結果が逐一更新されていますので、ほしい情報を本当に得るためには入会する以外に方法がないような設計もなっています。読んでいる人は、段差の低い階段を少しずつ昇らされているのです。シンプルだけど奥が深い。全く知らないことだけど自分にも関係する。大変そうだけど楽しそう。すごいことをしているけど簡単に仲間になれる。というステップです。「だけど」は、心理作戦です。「迷い」と言うキーワードから「知りたい」と言う欲求にズルズルと引き込まれていくわけですね。人間は、ひとつの情報を得ると次の情報を得るためにどのようなことをすれば良いかを考えてしまいます。いままでと違った切り口で次々に新しい境地を切り開くスギダラ活動は、今まで地道にしてきた自分活動とは違う何かを感じさせてくれます。それが「だけど」につながるわけです。(こればっかりは、入ってみないと分かりません)

「杉」というテーマが自分の今まで活動してきたことと通ずる何かにつながる。「ヒント」になると直感すると入会への行動は、いっそう早くなります。何人か入会はしていないけど、イベントには参加するという方がいます。入ってみたら、参加してみたら「自分と同じ匂いがした」と安心感が漂うのもスギダラならでは、です。ですから、誰かが背中を押すようなことではなくて気づかないうちに自らステップを登ってしまう仕掛けになっています。これを海杉は「スギダラ病」に感染したと呼んでいます。スギダラメンバーに何度、海杉は、言われたでしょう。「海杉さん。すごい、情熱ですね」海杉は、そのまま言い返します。「とても、とても海杉は、あなたのマネできません」(笑)

スギダラのHPでは多くのスギダラメンバーが活動を報告していますが、スギダラに入会するには、スギダラ活動をしてからと心に決め、自分なりのスギダラ活動をおこなってその成果を持って入会した、奇特なメンバーがいます。チヨダラさんの連載(スギダラな人々探訪/第19回)に登場した阿部直樹さん(会員No.556)などは、もう、入会しなくてもスギダラ病末期症状の粋に達していました。


  阿部さんの作品
  阿部さんの手がけた内装。アパレルメーカー・ショールームに杉材を用いた。
   
 

「スギダラ仕掛けをバラしていいものか」と仲間が言うかもしれません。大丈夫です。スギダラの本当の魅力は、入会の先にあるのです。

本当にやりたいことを一人で行うには、限界があります。でも、仲間がいれば、簡単に実現します。スギダラは、まだまだ多くの志を持った仲間を必要とし、今までにない新しい活動を次々とします。さまざまな志をもった、人が集い、共に活動するとさらに大きな力となるでしょう。会員拡大は、より多くの人にスギダラの活動を知ってもらうためのPR事業でもあります。メンバーそれぞれの想いややりたいことを具現化できるのもスギダラならではの活動形態です。海杉は、集団の中でもそれぞれのメンバーが持つ志は、決して無くしてはいけないと考えていますし、なくならないと思います。

冒頭にスギダラ集団を作ったデザイナーをスポーツ競技の柔道に例えましたが、集団・団体と言われる組織も、スポーツ競技に例えるならば、アメリカンフットボール型、ラグビー型とさまざまな形態があります。海杉は、スギダラは、ラグビー型に近いと思っています。「前に!!」と思いは同じでも、進むとすれば、誰かがボールを持たなければなりません。しかも、パスする時は後ろに渡さなければならないのです。

「One for All、All for One.」

これがスギダラの精神です。

   
   
   
   
   
 
●<うみの・ひろみつ>日向木の芽会
HN :日向木の魔界 海杉
   
 


   
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