特集智頭 

 
スギダラトーキョー支部長 なぜか鳥取へ
文/ 萩原 修
 
 
   

 流れに身をまかせるのが好きだ。無理矢理になにかをやるのは得意じゃない。というわけで、流れに身をまかせていたら、鳥取に来ていた。あまり深くは考えていなかった。鳥取のことは、ほとんど知らなかったし、とくに事前に調べることもしなかった。むくな気持ちで、はじめて鳥取の飛行場に降り立った。鳥取が日本海側で、人口があまり多くないのも行ってから知った。鳥取駅にTOOTORIと書いてあったのが妙に新鮮だった。

 なぜ、こうなったかと原因をさぐると、岡村さんという鳥取出身の建築家の本をつくることになったからだ。この4月に「ちくわハウス」(ラトルズ)というタイトルで発売された。2年近く、ああだ、こうだと話をしながら、つくった本だ。岡村さんのふわっとまじめで、でも意外なほど論理的で、それでいてユニークな人柄が滲みでた本だ。小さくローコストでオープンな住宅を、施主と工務店といっしょに丁寧に楽しそうにつくっている岡村さん。ある人に言わせると、新しいタイプの建築家だと言う。

 そんな同世代の建築家の岡村さんと話をする中で、ある時、ぼくがスギダラ倶楽部の東京支部長になったと口をすべらした。それじゃあ、鳥取の杉でがんばっている人を、ぜひ紹介したいという話になった。それが坂本晴信さんだった。坂本さんは、智頭杉の製材所で、木製のブラインドなどをつくることで名前が知られてきたサカモトという会社の人。ブラインド以外でも智頭杉をつかった商品開発に積極的に取り組んでいる。

 今回の鳥取の旅は、この坂本さんが運転するワゴンでまわった。智頭杉をはじめとして、岡村さんの実家の玩具店、そして羽合(ハワイ)温泉に、鳥取民芸と、2泊3日の贅沢で充実した旅だった。智頭杉の現場を見て、スギダラらしく現地の人と飲みながら話をしたことで、いろんなことを感じた。具体的な活動の方向性も見えてきた。智頭杉、そしてサカモトならではのモノづくりをあせらず、前向きにすすめていきたいと思う。

 ぼくの中で、急につながってきた東京と鳥取。これがスギダラトーキョーの活動なのかどうかよくわからないけど、いろんな人や、いろんな地域がつながることで、いろいろとおもしろい可能性が生まれることを実感している。これからも、人と地域と杉をつなぐことで、建築、インテリア、プロダクトの可能性を、地道に追求していきたい。

   
   
   
 
 
  ●<はぎわら・しゅう> 9坪ハウス/スミレアオイハウス住人。
   
   
   
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