弊社には「送材車付帯ノコ盤」が3機あります。古いもので40年近く頑張る働き者もいます。メンテナンスがしっかりしているので、現役バリバリで精度もバッチリです。
では最初に帯ノコ盤について見ていきましょう。
帯ノコ盤の仕組みは、上下の大きな円盤(ノコ車と呼びます)に帯ノコが固定され、高速回転するというものです。上下2ヶ所を支点とする為、安定度が非常に増します。
製材機械の主流が丸ノコから帯ノコに変わった理由はこのあたりにあると思います。
丸ノコはその大きさに比例して、ノコ自体を安定させる為にノコを分厚くする必要があり、挽き道が大きくなってしまう欠点がありました。また、丸ノコは支点が円の中心の1ヶ所しかない為、安定度にも問題がありました。さらに、木材に接する面積割合が大きい為、摩擦係数が高く、丸ノコ自体が高温になり、歪んでくるという事もありました。昔は回転する丸ノコに水を掛けながら製材をしたという逸話が残っているほどです。帯ノコの製造技術が確立されると、精度にも安定度にも優れる帯ノコが普及したというわけです。(写真09、10)
この帯ノコはどうやってノコ車に固定されているのでしょうか。見た感じでは、帯ノコには固定する穴や止め金などはありません。帯ノコは3つの要素でノコ車に固定されています。
まず1つ目は上下のノコ車を機械の圧力で押し広げ、帯ノコを張ります。ですが、これだけでは原木を挽く時の圧力で、帯ノコが外れてしまう危険性があります。 そこで2つ目の要素。それはノコ車の角度です。送材車の進行方向に対してタイヤの角度は垂直ではないのです。肉眼では分かりづらいのですが、ノコ車は手前に少し傾いています。こうする事によって、進行方向に対する負荷が帯ノコとノコ車にそのままストレートには掛かりません。 さらに3つ目の要素。実は帯ノコは円すい形状をしています。刃がついている側がほんの少しだけ狭くなっています。1mm程度のズレです。これで帯ノコがノコ車から押し出される危険性がほぼ消えました。このズレはそれぞれの帯ノコ盤の性格・特徴によって変わります。弊社では工場内に目立工房を持っており、専門の職人さんが帯ノコの目立てを行い、ズレ幅の調整も行っております。この目立のお話は非常に深いので、また後ほど…。
(写真11) 帯ノコ盤のノコ車にもいくつか種類があり、このノコ車によっても製材の精度が変わってきます。
下の2種類の写真を見てください。ノコ車の形状の異なる二つの帯ノコ盤です。(写真12、13)
左のノコ車はスポーク式、右のノコ車は鋼板式と呼びます。スポーク式に比べ、鋼板式の方がどっしりした感じがすると思います。鋼板式のノコ車は1枚板の鋼から作っているため、頑丈さが違います。負荷の大きい大径木を製材する時には、その違いが歴然になります。鋼板式の方がブレが少なく、精度の高い製材ができます。
ところで、昔は“帯ノコ”ではなく“丸ノコ”が主流だったと書きましたが、その当時は送材車もなく、原木をトロッコのようなものに固定して、人力で押して挽いていたそうです。僕の父親(弊社の社長です)が小学校の頃なので50年近く前、昭和30年代の話です。
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