連載

 
スギダラな人びと探訪/第12回
文/写真 千代田健一

杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。

 
 
 

秋田おばこ3姉妹

早いもので創刊1周年。月刊杉と言うからには毎月発刊しよう! と息巻いて取り組みはじめてみたものの、実際その通りにできるとは正直思ってませんでした。完全な月刊は達成できませんでしたが、立派なものだと思います。何よりすごいのはその内容です! 原稿料も無いボランティアで作るマガジンとしては何と素晴らしい記事の数々。
どこに出しても自慢できるものになっていると確信しています。できれば、毎年1年間分をまとめてペーパーのマカジンにしてゆきたいですよね。いずれそうなるかも知れませんが……。

月刊杉WEB版は1周年ですが、スギダラ倶楽部自体は発足から丸2年が経過しました。まだたったの2年しか経っていないの? と思えるくらい様々な活動をしてきましたし、広報宣伝を担当する私自身、覚えきれないくらい多くのスギダラな人々にお会いしてきました。創刊号の時は会員数170だったのが、今は370名を数えようとしています。
会員登録の手続き等、会員さんとの窓口をやっている関係上、他の本部メンバーよりも個々の会員さんとやり取りする機会が多いのですが、これだけの規模になるとメールでちょっとやり取りしただけでは、なかなか覚えられなくなってきました。スギダラセミナーなどで直接お会いして、お名前を聞いただけでは会員さんなのかどうかわからないこともあるくらいです。でも、実際にお会いしてスギダラの活動を体感していただいた方はその後も意欲的に活動に参加してくれますし、次のイベントの時にはお友達を一緒に連れてきてくれたりと、ネットの中でのコミュニケーションを通り越して、人が人を繋ぐリアルなネットワークになってきました。

話がちょっとそれますが、去る7月1日にリビングデザインセンターOZONEの主催で「日本全国スギダラケ倶楽部」の活動からデザインを語る、というセミナーが開催されました。
月刊杉WEB版の編集長である内田さんの事務所「サイレントオフィス」のスギダラオフィスおよび仮本部の所在地になっているウチダラ洋行のスギダラオフィスの見学も含めたセミナーには、40名という定員一杯の参加者に集まっていただきました。講師は南雲代表+スギダラな仲間たちということで、スギダラでこれまでやってきた活動の紹介をビジュアルでお見せしながら、南雲さん、若杉さんを中心に暑苦しくお話させていただきました。

 
 
 
   
  セミナーの様子。スギダラ倶楽部のメンバーも7名くらい、正規のルートで申し込み参加してくれました。その他、受入れ側のスタッフとして多くの会員メンバーに集まっていただきました。何と秋田支部長菅原さんは秋田から遥々やって来てくれました。

 
  過去に何度かこういったセミナーをやってきましたが、具体的なスギの事例の場でお話させていただいたのは初めてで、参加者の方にはよりわかりやすく、インパクトのあるものだったと思います。
このような機会を重ねてゆく内に、「スギダラとは何なのか?」と自分達の活動を再確認することができ、今後の活動の方向性も段々明らかになってきています。
セミナーの詳細は別の機会にレポートさせていただきますが、ここでも多くの出会いがありました。OZONEのセミナーということで、建築やインテリアデザインに携わる方が多かったのですが、スギダラの活動に感激、感銘を受けてくれたようです。広報宣伝部長としては参加者の皆さんに、是非会員になってください!といつものようにお願いしたわけですが、この日は皆さんノリが良く、その場で早速入会します!というお言葉を多くの方からいただきました。実際、その後このセミナー参加者の会員登録が相次いでおります。

最近は先に出会って仲間になるという、このパターンが多いんです。リアルな場で共有した想いや価値観は継続性が高く、人を通してまた他の人に繋がってゆく。とてもいいサイクルができつつあります。これは本部だけではなく、各支部でも同じような流れになってきています。参加したセミナーで知り合った方々や職場の仲間にPRしてくれたり、会員登録の際に誰々の紹介で……というコメントが多く見受けられるようになってきました。そうなると、会ったことがなくても話が弾むと言うか、紹介してくれたメンバーをネタに盛り上がったりと、ある意味会員さんとのやり取りが楽なんですよ。
特に各支部の支部長、広報宣伝部長はとても意欲的にPR活動をしてくれていますが、何と言っても女性メンバーのパワーがすごいんです。
本部のスギダラ3姉妹はご存知の方も多いかと思いますが、この最強の女性軍はスギダラ設立当初から温かい思いやりと熱い想いをもってスギダラを支えてくれています。少なからずの潤いもね……(おっと失礼)。
今年に入ってからは、各支部が独自に広報活動できるようになって、そのブログサイトは女性メンバーを中心に運営してもらっています。気が付いてみると各地にも3姉妹が誕生しているんです。スギダラ3兄弟に対向してのことか、3人寄れば文殊の知恵なのかよくわかりませんが、3人なんですよ。まとまりやすいと言うかお互いの役割を分担しやすいと言うか、コミュニケーションもしやすい人数なのでしょうね。
現在のところ、本部3姉妹に続き、北のスギダラ「秋田おばこ3姉妹」、南のスギダラ「ミヤダラ3姉妹」、スギダラ北部九州「スギキュー3姉妹」が生まれています。
彼女たちは本部の3兄弟、3姉妹以上によく集まり、飲み食い……いや、スギダラ談義に花を咲かせているようです。その様子は各支部のブログをご参照ください。
 
 
 
   
  群馬ツアーの前夜際に集まった本部3姉妹とスギキューの2姉妹。真中で心地良い思いをしているのが私ですが、スギダラにいるとこういう素敵な機会に恵まれることもあります。

 
 

このように女性会員の活躍が今やスギダラ倶楽部の大きな特徴にもなっています。3兄弟も含め男性会員としてはモチベーションも高まりやすい?わけですが、女性の方々にとっても入りやすい雰囲気作りになっているのではないかと思ってます。
スギダラツアーに参加してみるとよくわかるのですが、杉に関わる業界の方々は壮年男性が圧倒的に多い中で、スギダラ倶楽部の団体は一種異様?な雰囲気を持っているのではないかと思います。女性の参加者が多いし、学生もいるので、見た目にも楽しい感じがするんですよね。老若男女問わず、集まっている人々の層の幅が広いというか、そんな特徴を持っていると思います。

そこで、そういった多様な人々を各地で引っ張っていってくれている女性達にちょっとフォーカスしてみます。今回は北のスギダラの秋田おばこ3姉妹をご紹介します。と言うのは、つい先日(6月17日、18日)に秋田支部長・すぎっちこと菅原さんの呼びかけに応え、3兄弟は秋田を訪問してきたのですが、その時に秋田おばこ3姉妹が勢揃いして迎えてくれたからです。菅原さん以外の2姉妹は初めてお会いしたのですが、いや、とってもパワフルで愉快な人たちでした。その時の様子は今号の菅原さんのあきた杉歳時記/第6回を参照ください。

ちなみに秋田では若い女性のことを「おばこ」というらしいです。決しておばさんという意味ではありません。秋田おばこ3姉妹はその名の通りとても若々しい3姉妹でした(なぜ、若いとはっきり断言しないのか?って言われそうですね)。

 
 
 
   
  これが秋田おばこ3姉妹だ! この写真を撮ってる時に各地の3姉妹の写真で綴ったカレンダーを作ったらどうか?という話で盛り上がりました。3兄弟は、何月はどこの3姉妹と具体的に名前を挙げ始め、良からぬ?妄想をする始末。こういう事に一番力が入ったりするのもスギダラ流と言うか、3兄弟流ですな。作ったら売れるかなー? (今年の暮れにスギダラ美女カレンダー発刊予定)

 
  まず、秋田支部を取りまとめる支部長のすぎっちこと菅原さん(写真中央)は現在、連載記事を書いてくれていますし、スギダラ秋田ツアーの時の私の記事にも登場いただいているので、ご存知の方も多いかと思います。まあとにかくアクティブにいろんな活動をしていて、杉関係だけでもかなりのプロジェクトを抱えています。そんなこともあって、具体的に活動してゆく上で本部に相談があり、今回の秋田訪問と相成ったわけです。
その詳細は菅原さんの「あきた杉歳時記」または北のスギダラのブログページでにわかに明らかになってゆくことと思いますので、お楽しみに。ちょっとさわりだけ紹介しておくと……「スギダラ商店街」「スギダラ里山研修センター」「黒屋台」なんてキーワードが出て来ています。楽しみでしょ?

さて、姉妹の話に戻って、お次は秋田支部の営業部長・明杉さんこと渡辺千明さんです(写真右)。渡辺さんは秋田県立大学木材高度加工研究所で准教授(助教授みたいなもの?)をされている才女であります。研究所では木造住宅の工法開発をご担当されていますが、専門は都市防災学とのこと。渡辺さんの話によると、大都市と地方都市では防災の考え方が全く違っていて、元々自給率の高い地方都市では、ライフラインの維持や食料の備蓄よりも人と人とのネットワーク作りの方が重要との事。なるほど、そうですよね。人口が密集していない地域では電気やガス、食料よりも誰がどこにいてどういうサポートが必要なのかわからないといけないわけです。そんなこともあって、地方都市における地域づくり、ネットワークづくりに尽力されています。渡辺さんがコーディネートしているプロジェクトで「のしろ白神ネットワーク」というのがあります。国交省が進めている日本風景街道モデル事業に応募しているもので、今回その申請エリアの視察もさせていただきました。情緒ある素晴らしい景観が残っているところばかりです。里山の風景の保存と木都と言われていた頃の木の香る能代を木(モク)と君とで復活させようというプロジェクトです。現地を視察しながらいろんなアイデアが出てきました。具体化してゆくのはそんなに簡単なことではありませんが、国や自治体に頼りきるのではなく、それぞれの地域・コミュニティで率先して活動を起こしていっています。いろんな立場の人々を巻き込んだ活動はスギダラ流ですね。そんなパワーを持ったイカシた女性でした。
このプロジェクトは渡辺さんの同僚の佐々木貴信さんと一緒に進められています。佐々木さんは秋田支部の技術部長でスギダラのハンドルネームを貴杉とされていたのですが、宴会の折に貴の杉の方がいいよー、と南雲さんが言い出してその場で改名させられることになりました。

さて、3人目は秋田支部の広報宣伝部長・杉穂さんこと小林瑞穂さんです(写真左)。3姉妹の中で菅原さんと渡辺さんは入植者。実は本当の秋田おばこは小林さんだけなんです。そんな感じが何となくするでしょ?(どういう意味だー!って声が聞こえそう)。
おっとりとして物静かな方かとおもいきや、歯に衣着せぬ、一刀両断でぶった切ってくれるスゴ腕の持ち主でした(本部3姉妹で言うと小町さんみたいな感じかな……)。
会って最初にその一刀両断の餌食になったのは、この3姉妹を結びつけた張本人、モクネットの加藤さんでした。モクネットの事務所の庭にフォレストボードという杉樹皮や端材を細かく砕いて固めた製品が敷き詰めてあるのですが、そのボードを敷き詰めるための枠に天然秋田杉の柱材を使っていると加藤さんが自慢?しているのを聞いて、「無駄に豪華」とばっさり(涙)。 外見の雰囲気からは想像できないお言葉に凄まじいインパクトを受けた3兄弟でした。そもそも小林さんは以前モクネットの秋田事務所に勤められていたそうで、菅原さんとは加藤さんを通じて知り合ったとか。渡辺さんもそうです。美女の影に加藤あり!って感じでしょうか? 秋田おばこ3姉妹に囲まれて加藤さんもご満悦でした。本部の3姉妹に支えられてる3兄弟と似ていますが、加藤さんは独り占めしているところが羨ましいですな。

ともあれ、この3姉妹の結束は固く、とにかくアクティブというか猪突猛進というか、勢いがあります。秋田は女性陣が前衛で加藤さん、佐々木さんの男性陣が後衛といった布陣ですね。男性陣をもっと増やしていかないとこの勢いについていけないかも……。今後の秋田支部での具体的な活動が楽しみになってきました。



 
   
  スギダラ秋田支部の会議風景。

 
 

今後も時折、各地の3姉妹特集をやってゆきたいと思います。乞うご期待! いや、客引きのためじゃないですよ。

 
 
 
   
  おまけ:2007年秋田わか杉国体のマスコット「すぎっち」と記念撮影する若杉さん。

 
 
 
 
 
 
●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。
日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
 
 
 


 
   
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