特集 月刊『杉』10周年記念特集
  10年分の年輪を刻んで

文/写真 石橋輝一

   
 
 
 

月刊杉10周年、おめでとうございます。

僕が吉野から出て、北海道、大阪、東京と渡り歩き、吉野に戻ったのが2005年11月。創刊は2005年7月だから、僕が製材所の仕事に就く前には、すでに連載が始まっていました。

月刊杉は、木の世界の先輩です。

2006年1月の第7号から連載「吉野杉をハラオシしよう!」を担当させていただきました。
吉野に戻って、まだ2ヶ月が経った頃でした。

木の仕事は、家業であり、子供の頃から製材所が遊び場でしたが、木に関しては全くの素人。杉と桧の違いも分からず、板目や柾目、無節や上小節や一等、木材の世界の常識も知らず。製造業なのに、原材料である原木丸太を分解するだけ、という引き算の仕事に戸惑う、そんな日々でした。

しかし、製材所で木に触れ、製材の奥深さと面白さに魅かれていきました。

50年、100年、150年をかけて出来る原木丸太はある意味、完成品。完成品ですが、そのままでは使えない。完成品を分解するから無理が出る。木は人と同じで、1本ごとに違います。木の個性を見極め、その個性を活かすための製材であり、乾燥であり、加工。

美しく、丈夫で長持ちする木材をつくる事に、製材職人=ハラオシは一生懸命です。

製材品を見ると、角材であったり、板材であったり、当たり前の姿をしているように見えますが、その中に隠れているハラオシの技を知ってほしい。月刊杉での連載の場を与えていただいた事で、ハラオシの仕事を全国に向けて、発信することができました。

連載中期からは、吉野の地域活動の発信する事も多くなりましたが、僕にとっての月刊杉は、ハラオシの魅力を伝える場。いろいろと迷うと、初期の連載を読み返して、初心に戻ることを心掛けています。

月刊杉とほぼ共に歩んだ10年。10年分の年輪は、無くなる事はありません。50年経っても、100年経っても。目に見える記録として残ることは、とても幸せなことです。

月刊杉編集部の皆様、10年間、多忙を極める中、発刊を続けて頂いたこと、本当にありがとうございます。
心より感謝を申し上げます。

吉野より木愛をこめて。

   
 
 
2005年の石橋輝一   2015年の石橋輝一
   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴8年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://homarewood.exblog.jp/もよろしく!ほぼ毎日更新中です。
 
月刊杉web単行本『吉野杉のハラオシをしよう!』: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm
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