隔月連載
  にっぽん飫肥杉仮面ばなし 第2話
文/ 河野健一
   
 
 
 

こんにちは。二ヶ月ぶりですね。飫肥杉仮面です。
知らない人は知らない、知ってる人は知らんぷり。あの飫肥杉仮面レッドです。
前回の第1話(102号)で文末に「(おわり)」と書いたのですが、全国の大勢の皆さま(本当は1人。苦笑)から「(つづく)ですよね? つづきがあるのですよね?」との声。
ここは仮面を着けて勇気を出して、普段より少し大胆になって、つづきを書いてみようと思います。

   
 
   
  「杉から生まれた杉太郎 成長秘話」
   
 

パッカリ割れた飫肥杉丸太の中で、まるでホットドッグのアレのように横たわっていた赤ん坊は、「杉太郎」と名付けられた。まだ仮面を装着していなかった時代。良い子のときは「良太郎」と、悪い子のときは「悪太郎」と呼ばれた。杉太郎と聞いて、姓が「杉」で名が「太郎」と思った一部の村人からは、良い子のときに「杉 良太郎」とも呼ばれた。少し恥すぎしかった。

成長が早く太りが良いことで有名な、宮崎県日南市特産の飫肥杉から生まれただけあって、杉太郎もぐんぐん育った。曲げに強くて、やわらかで、しなやかな飫肥杉の特長を引き継ぎ、柔軟体操ではタケシ先生から、いつも「コマネチ」と呼ばれた。おおらかで、たっぷり感があり、素朴な飫肥杉の良さも遺伝し、ピアノ教室では吉野のミッキー先生から、たまに「プーサン」と呼ばれた。

そういった、大きさ、太さ、しなやかさ、おおらかさ、など三三七拍子そろった男に育った杉太郎は、村を治める長老、略して村 長治の「マサカリ」さんから、鬼退治に行ってくれと頼まれた。別に、村へ鬼が悪さをしに来ている訳でもないのに。かなり方向音痴(事実w)な杉太郎は、鬼のいる鬼ヶ島のことを「オニケシマ」と読んでいた。

次の日からの杉太郎の努力は、すさまじい、いや、すぎさまじいものだった。村人全員が、いろんな意味で涙した。まずは、鬼に勝つために、1日5食、朝〜昼〜晩〜バン〜バン、ばんばんオニオンを食べた。その後、まるまる1年間、体を鍛えるために、エアコンをいっさい使わなかった。さっさと退治に行けばいいのに。空に美しい虹がかかっても、見るのをガマンした。冷房とレインボーが似てるから。好きだったディズニーアニメも封印した。暖房とダンボが似てるから。泣ける話だ。

現代では、地球温暖化防止などという言葉をよく耳にするが、その当時、九州の南にある日南市でさえ、別にエアコンなんかなくても、快適に暮らしていた。だから1年間鍛えたとしても、見た目も機能も性格も、まったく変化がなかった。その当時は、山の杉を伐採し、また植えて育てる、という循環がしっかりしていた。誰もオレがオレがと、他人よりも儲けようとしていなかった時代。

現代では、もう伐採して使えるぐらい充分に育った杉が、特に価格と需要の問題で、山にほったらかしだ。もう成長したからそんなに背も伸びないし、呼吸も活発ではない。人間と同じで、大人になるまでは背もぐんぐん伸びるし、がんがん息をする。きっとこの辺も地球の温暖化に影響しているのだ。もっと杉を使おうよ。

そして、花粉症の問題。ある有名な杉デザイナーが言ってた。「そりゃあ、出しますよ! 成人なんだから! 山は成人の杉ダラケなんだから! ばってん!」まあ、個人差はあるだろうが、人間も成人したら花粉的なのをたくさん出すだろ?的な話だ。この天草が生んだスーパー杉デザイナーに対し、よく「変態!変態!」とのホメ言葉を耳にするが、まったくその通りだ。もっと杉を使おうよ。

話を鬼退治に戻そう。「オニケシマに行ってきまスギ!」と元気よく出発した杉太郎。飫肥杉製の帆かけ船がある港まで、スギぇ〜速さでスギップしながら進んだ。しかも、後ろ向きで。見送ってくれる、おじいさん・おばあさんに投げキッスギをしながら。あ、細く補足を。飫肥杉には前述のような特長があるので、造船材として重宝されていた。そこへ猿がやってきた。サルエルパンツをはいた猿が。サイズはMだけど。性格はSだけど。杉太郎は、自分の信念、覚悟を猿にしっかり話した。そして、猿としっかり入念にネタづくりをした。そして、ナイスなコンビになった。ナイスギなコンビになった。

そこへ鳥の「鳥夫くん(キジ系。見た目では、わからない)」が走って来た。飛べばいいのに。杉太郎と猿は、しぶしぶ、しょうがないのでコンビを解散して、トリオになった。しかし、思った。「ん? まてよ? トリオ? 鳥夫がメイン?」いったん断ることにした。鳥夫は懇願した。「ひトリにしないで! なんのトリえもないけれど」と。猿は「こいつは使えない」と思ったのだが、杉太郎に対し「トリあえず、連れていきましょうか。どうしても邪魔になったら、パイ生地にでも混ぜましょう。キジだけに」と言った。杉太郎は、頭数が必要だと考え、複雑な心境の中、「気にしない。木にしない」と思い込んだ。

次に、犬が来た。話がまたそれるが、人間ドック?人間ドッグ?いつも迷う。この場合は、人間ドッグが来た。そう、言いかえると人面犬。ふと、家の方を振り返った。さっきまで見送ってくれていた、おじいさんが居ない。おばあさんの姿だけだ。「あれ?おじいさんが居ぬぞ?」そう、犬になったから。この人間ドッグ、人面犬は、成長するまで随分お世話になった人だから、いっぱい気を使おうと思った。

   
 
   
  木を使おうと言えば、、、と書き続けようかと思いましたが、ずいぶん長スギになりましたので今回はこのへんで。。。くだらない話を書いてしまい、どうもスギマセンでした。。。
   
  〈おわり〉
   
 
   
   
   
   
  ●<かわの・けんいち> 日南市役所 広報担当 / 日南市 飫肥杉課OB / スギダラ飫肥支部 広報宣伝部長・会員番号441
   
 
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