特集 杉コレクション2013 in延岡
  杉コレ受賞作品発表&レポート
文/写真 出水進也
 
 
  9回目を迎えた杉コレクション、今年は延岡市での開催となりました。
   
  司会はおなじみ、WCこと、若杉浩一さん、千代田健一さんコンビ。デザインと司会業をかけもちされています。
そして審査委員の皆さんは例年に増して超豪華メンバーとなりました。審査委員長はもちろん建築家の内藤廣さん。審査委員には土木設計家・篠原修さん、デザイン界の重鎮・川上元美さん、杉デザイナー・南雲勝志さん、そして今年は、延岡駅前の整備に取りかかっておられる、コミュニティーデザイナーの山崎亮さん、建築家の乾久美子さんも加わりさらにパワーアップ。さらには、株式会社内田洋行・柏原社長、フェニックスシーガイアリゾート・齊川取締役、宮崎県木材利用技術センター・飯村所長、JR九州・津高支社長、首藤延岡市長。
皆さん杉コレを楽しんでいらっしゃる様子が感じられ、スタートから笑いの絶えない中、いよいよ最終選考会がスタートしました。こんなに楽しむ雰囲気が溢れるなかで公開審査が行われるのは杉コレならではですね。
   
 
  司会は若杉の「W」と千代田の「C」で「WC」です!...の所ですが、観客からは立ち位置が逆、そして千代田さんのCが反対ですよー。
 
  超豪華な審査員の先生方。
   
   
  それでは入賞作品を紹介します。
   
   
 
  「杉コレクション2013 in 延岡」 最終選考会 結果発表
日程:2013年11月3日(日)
場所:宮崎延岡市 / サンロード栄町・山下新天街アーケード
   
   
   
  子ども部門
   
  ★★子ども部門 グランプリ
  『ロボロボ』 / 尾谷麻緒くん(小学3年・宮崎県)
 
  杉でできたロボットです。両手両足も動き、お腹にある蓋も取れて中に物を入れることができます。麻緒くんはとにかくこのロボロボが気に入ってしまい、何が何でも持ち帰りたい様子。審査員も「例えば学校とかに置いて、みんなで一緒に使うってのはどうかな?」とたしなめますが、まったく納得できない表情(笑)。麻緒くんが書いたスケッチは素晴らしく審査員も絶賛。子供の発想と高い技術力で生まれた杉コレならではのコラボレーション作品といえるこのロボロボが、子ども部門のグランプリに輝きました。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡にて子ども杉コレ部門グランプリを受賞した作品『ロボロボ』/尾谷麻緒くん
photo/(c)ブーフーウー
 
 
最終選考会でのプレゼンの様子   審査委員長 内藤さんに作品を説明
photo/(c)ブーフーウー
 
表彰式にて。子ども部門グランプリおめでとうございます。   1次選考会に提出したスケッチ
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  子ども部門 入賞
  『やじろべえでゆらゆら』 / 佐保美友貴さん(小学6年・宮崎県)
 
  おじいちゃんの家で作ったどんくりのやじろべえから発想して、自分もゆらゆらぶら下がることができるシーソーみたいなやじろべえがあったら楽しそう、という子供らしい発想と魅力に溢れる作品です。楽しい雰囲気が伝わってくる美友貴さんの書いたスケッチは審査員の皆さんも絶賛。
 
  杉コレクション2013 in延岡 子ども杉コレ部門入賞作品『やじろべえでゆらゆら』 / 佐保美友貴さん
photo/(c)ブーフーウー
 
 
『やじろべえでゆらゆら』 を楽しむ審査員の乾さん
photo/(c)ブーフーウー
  審査員のJR九州 大分支社長 津高さん
photo/(c)ブーフーウー
 
最終選考会でのプレゼンの様子   1次選考会に提出したスケッチ
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  子ども部門 入賞
  『木の打楽器』 / 今井楠海さん(小学6年・宮崎県)
 
  プレゼンでは楠海さん自ら、クイズ形式で「きらきらぼし」「かえるのうた」を演奏。曲名を聞かれたJR九州の津高さんは「ななつ星!」と回答、おしい。審査員の飯村所長も「やわらかい杉で楽器をつくるというのはこれまでにない発想」と絶賛。南雲さんは「スケッチは18音階あるのに現物は8音階しかない!」と製作者にダメ出し。音階を作るのは至難の業だったようです。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡 子ども杉コレ部門入賞作品『木の打楽器』 / 今井楠海さん
photo/(c)ブーフーウー
 
  最終選考会でのプレゼンではクイズ形式で「きらきらぼし」「かえるのうた」を演奏
 
 
最終選考会でのプレゼンの様子
photo/(c)ブーフーウー
  1次選考会に提出したスケッチ
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  子ども部門 入賞
  『ユラユラゆれるのんちゃん』 / 次嘉香波さん(小学5年・岩手県)
 
  スギコレ2011 in日向での『だっこのいす』から交流が始まった岩手県・野田村からの応募で、同村のマスコットキャラクター「のんちゃん」をモチーフにした遊具。宮崎ではこのサイズでも迷うことなく1本ものの無垢から作ります。香波さんからは「スケッチでは帽子を被せていなかったのに、付いているのがちょっと、、」という厳しい意見も。審査員からは、ぜひ野田村のこどもたちにプレゼントしてはどうか、という提案が。出発時に片方の目を入れ、到着したらもうひとつの目を入れる、というストーリーまで考えて盛り上がりました。杉コレ2011の子ども杉コレグランプリ『だっこのいす』考案者の安田圭沙さんも応援に駆け付けて声援を送っていました。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡 子ども杉コレ部門入賞作品『ユラユラゆれるのんちゃん』 / 次嘉香波さん
photo/(c)ブーフーウー
 
  『ユラユラゆれるのんちゃん』 にのる審査員 乾さん。 photo/(c)ブーフーウー
 
 
最終選考会でのプレゼンの様子
photo/(c)ブーフーウー
  1次選考会に提出したスケッチ
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  一般部門
   
   
  ★★グランプリ&★市民賞 W受賞
  『穴があったら入りたい』 / 有馬晋平さん(大分県)
 
  もはやスギダラ会員ならおなじみのスギコダマ作家、有馬さんの作品。この巨大な杉は有馬さん自ら探し回って熊本の原木市で見つけた五ヶ瀬町産の杉。五ヶ瀬川を下って延岡で作品として生まれ変わるというストーリーも素晴らしいです。記憶に新しい杉コレ2010 in西都 グランプリの『すべすべすべり台』で度肝を抜かれましたが、スギコダマの世界にはさらなる深みがありました。有馬さんの作品は眼で見た段階で心地よい、触らずとも手触りが分かる質感とフォルムを作りだしていて、ただただ素晴らしいと思います。市民賞とグランプリをダブル受賞。おめでとうございます。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡にてグランプリと市民賞をW受賞した作品『穴があったら入りたい』/有馬晋平
 
 
有馬さん自ら作品に入ってみる   『穴があったら入りたい』ディテール
 
表彰式にて。おめでとうございます。   1次選考会に提出した1/10模型。
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  ★内田洋行賞
  『ネハンゴッコ』 / 佐梁 健さん(東京都)
 
  杉コレ2009 in日南でも独自の世界観を発揮した佐梁さん。それ以来スギコレの大ファンになったと言います。今回の作品は、生きながらにして涅槃の境地を体験できるという、世界初の作品です。巨大な杉にくり抜かれた人型の中に身を委ねると、上から巨大な仏様の顔が下りてきて身動きが取れなくなり、さらには額の白毫(びゃくごう)に空けられた小さい穴から入り込む細い光が涅槃の境地へ誘います。このある意味重々しいテーマと、作者のキャラクターと、外から見ると何ともユーモラスな状態が相まって不思議な魅力と笑いに包まれた作品となっていました。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡 内田洋行賞受賞作品『ネハンゴッコ』 / 佐梁 健さん
photo/(c)ブーフーウー
 
最終選考会にてプレゼンする佐梁さん。会場が不思議な笑いに包まれる。
 
最終選考会にて、審査委員長の内藤さんも『ネハンゴッコ』を体験   審査員の川上さんも。
 
表彰式にて。おめでとうございます。   1次選考会に提出した1/10模型。
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  ★シーガイア賞
  『五ヶ瀬の鮎釣り/遊び心から』 / 長友弘幸さん(宮崎県)
 
  杉コレの常連、長友さんの作品。自身が子どもの頃の体験をもとに、延岡を流れる五ヶ瀬川をイメージして作られています。人間が乗れるサイズにした笹舟と、杉の木目を川の流れに見立て、杉で形作った鮎など、マグネットを用いて竿で釣り上げて遊ぶ作品。独特な造形は細部までしっかり手が加えられていて非常に魅力的です。プレゼンでは、杉製の徳利を竿から垂らして酔っぱらい杉人形を釣り上げるという演出も(笑)
   
 
  杉コレクション2013 in延岡 シーガイア賞受賞作品『五ヶ瀬の鮎釣り/遊び心から』 / 長友弘幸さん
 
  『五ヶ瀬の鮎釣り/遊び心から』ディテール
 
 
表彰式にて。おめでとうございます。   1次選考会に提出した1/10模型。
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  入賞
  『ちょっとそこで話さなイカ』 / 中嶋万葉さん(滋賀県)
 
  コンセプトは「森にイカ」。イギリス国営放送が作成した未来予想番組で、2億年後には人類は絶滅し、知性を進化させたイカによる「イカ社会」になっているとう予測にインスパイアされたて生まれた作品。イカ社会到来後にイカが森にやってきてこの作品と対面することを想定した、壮大なストーリーをもとに考えられています。審査員の山崎亮さんからは「この作品を2億年後に残して伝えていくためのソフト面でのしくみづくりが必要」という意見が。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡 入賞作品『ちょっとそこで話さなイカ』 / 中嶋万葉さん
 
 
最終選考会でのプレゼンの様子
photo/(c)ブーフーウー
  『ちょっとそこで話さなイカ』 内部
photo/(c)ブーフーウー
 
作者自らイカに入ってみる。
photo/(c)ブーフーウー
  1次選考会に提出した1/10模型。
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  入賞
  『おいしすぎコレ♪居心地よすぎ♪着心地よすぎ♪』
ミヤダラ三姉妹〈工藤登紀子・吉武春美・崎田真央〉(宮崎県)
 
  昨年の杉コレ2012 in宮崎に続いて連続入賞となったミヤダラ三姉妹。今年も演劇型プレゼンテーションで会場を沸かせました。これには審査員の山崎亮さんも非常に面白いと評価。当初のイメージでは無垢のかたまりに穴を作って中に入り込むようなイメージでしたが、実製作の段階で加工が難しいということになり、小さな角材を組み合わせて穴を作り上げていました。実製作というリアルな表現で当初のイメージをどう形に落とし込むかも、杉コレでは非常に大きなポイントとなります。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡 入賞作品『おいしすぎコレ♪居心地よすぎ♪着心地よすぎ♪』 / ミヤダラ三姉妹
photo/(c)ブーフーウー
 
  『おいしすぎコレ♪居心地よすぎ♪着心地よすぎ♪』内部  photo/(c)ブーフーウー
 
 
演劇型プレゼンテーションで会場を沸かせた最終選考会
photo/(c)ブーフーウー
  1次選考会に提出した1/10模型。
photo/(c)ブーフーウー
   
   
   
   
  入賞
  『たらいまわし』 / 永井功太噤E永井麻衣子さん(愛知県)
 
  対戦型のゲームが楽しめる作品。たらいの中央に置いた3つの玉を、たらいを傾けながら自身側の穴に多く入れた方が勝ち、というシンプルなゲームです。子どもが遊ぶことを前提に、対戦型でありながら互いにたらいを持つために協調性も育むことができるように考えられています。審査員の内藤さんVS津高さんの対戦や、柏原社長VS首藤市長のトップ対決も白熱し、これは大人の方が夢中になる遊びだと大好評でした。
   
 
  杉コレクション2013 in延岡 入賞作品『たらいまわし』 / 永井功太噤E永井麻衣子さん
photo/(c)ブーフーウー
 
  最終選考会でのプレゼンの様子
 
 
審査員の内藤さんVS津高さんの対戦
photo/(c)ブーフーウー
 
 
1次選考会に提出した1/10模型。
photo/(c)ブーフーウー
  プレゼンではたらいを担いで登場
photo/(c)ブーフーウー
   
   
 
   
   
  杉コレの審査は笑いがたえません。つまりみんなが笑いを取ろうとする(笑)そんな雰囲気にあふれているコンペは他にないだろうなと思います。なぜみんな笑いを取ろうとするのかというと、相手を思いやる気持ち、相手を楽しませようとする気持ち、一緒に楽しもうとする気持ちが強いからだとも言えます。いわゆるコミュニケーション能力がみなさん相当に高い。主催者・審査員・応募者・その他杉コレに関わる人たち、ひとりひとりのそういう気持ちが杉コレの雰囲気を作っているんだと思います。
マジメに、必死に、楽しく、笑って、みんなで盛り上がる杉コレ。杉コレの魅力はそういったところにあるのではないかと感じました。
   
  杉コレも来年は節目となる10年目を迎えます。新たな展開を見せるのか。どうなっちゃうのか。自分も笑いの腕を上げて(笑)また宮崎に戻ってきたいと思います。
   
 
  最後に受賞者、審査員の皆さんで記念撮影。うしろでしっかりと杉ポーズを取っている津高支社長に注目を!
   
   
   
   
   
   
  ●<でみず・しんや> ナグモデザイン事務所
香川県直島出身。東京造形大学卒業。
日本全国スギダラケ倶楽部 本部事務局
   
 
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