特集 秋田駅西口バスターミナル
  あっという間の10ヶ月!!
文/写真 渡邉篤志
   
 
 
  「秋田駅西口バスターミナル」が全面供用を開始してから、はや1ヶ月を迎えようとしています。月日がすぎるのは早いもので、竣工式がつい先日のような気がします。思い起こせば昨年末差し迫ったころに、小野寺さんからの電話でバスシェルター建替えの概要を聞くことになったのが、このプロジェクトへの参加の一歩でした。
   
  駅前に秋田杉で作るバスシェルター!
   
  話題性や有意義性からして好奇心は必然的に駆りたてられましたが、その一方で、スケジュールの厳しさを聞くに及び、若干腰が引けたことを記憶しています。時間に余裕のある仕事はそうそうあるものではないですが、今回は特別。その後、時間との勝負が供用開始日まで続くことになったのでした。
   
  私が担当したのは実施設計と工事監理。基本デザインはナグモデザイン事務所がまとめており、全体プロポーションや構造検討など、完成度の高い基本設計はすでに終了していました。秋田杉を全面的に使用した現わしの構造体、その魅力を最大限に引き出そうとするデザイン。全体の方向性が明確だったので、詳細検討に集中することができ、短期間ながらも実施図面をまとめ上げることができました。
   
  構造現わしの建築はごまかしがききません。組み上げたものがそのまま表現されるわけで、失敗すると見せたくない部分も現わしになってしまいます。木造の場合、仕口(接合部)の処理に一番気を使うことになります。柱脚、柱頭、柱と梁の接合、梁と母屋、などなど。あらゆる接合部をどのように納めていくかの検討が重要なわけです。これらの検討は実施設計の際にある程度設計しておくのですが、最終的には現場に入ってから施工者を交えての打合せによるところが大きくなります。設計者がいくら考えても実際に手を動かして作るのは職人達なわけで、できるかできないかの限界点を探ろうとすると、職人達との打合せが必要不可欠になります。
   
  今回は、着工してから3週間でそれらの打合せとその施工図の承認をしなければならないスケジュールでした。非常に短い!監理するこちらも大変ですが、施工者側はもっと大変です。3週間のうちに我々がGOサインを出せるだけの施工図を仕上る必要があるのですから。こうして毎週の秋田通いが始まり、元請け施工者である中田建設と各業者、地元建築家の堀井さんによる合同打合せが続いたのでした。
   
  その後工事期間中もいろいろありましたが、難しい敷地で事故なく安全に、ほぼ予定通りに工事が終了することができたのは何よりの幸いで、何といっても中田建設と各業者の頑張りにありました。今年に入ってからこのプロジェクトに参加し、怒涛のスピードで竣工まで迎えたような気がします。竣工してみれば私にとってはあっという間の10ヶ月間でした。秋田の玄関口で、これから地元に末永く愛されるバスターミナルになってくれることを祈っています。
   
   
 
  風除室のガラス枠はスチール製リン酸亜鉛処理。見付を極力細くして目立たせないようにした。
 
  案内所。入口引き戸や窓もすべてスチール製リン酸亜鉛処理。杉との相性は抜群。
 
 
雨樋、縦樋も同じくリン酸亜鉛処理。
積雪対策のため堅牢な仕様としている。
  案内所内観。杉羽目板の壁と床。
 
  土台周りの納まり。シェルター内に吹き込んだ雨水を逃がすために、スチールプレートにスリットを切っている。
 
  縦格子はすべてけんどん式で取り外しが可能。ガラス面の清掃時の取り外しや、破損時の部分取り換えを想定している。柱頭柱脚部のボルト埋め木処理は、全体で約4000カ所にも及ぶ。大工の地道な作業に頭が下がります。
   
   
   
   
   
   
  ●<わたなべ・とくし> WAO渡邉篤志建築設計事務所 代表
埼玉県生まれ。
   
 
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