特集 秋田駅西口バスターミナル
  秋田の物造り力の結晶
文/写真 堀井圭亮
   
 
 
  秋田駅西口は、他県はもとより世界各国からビジネスや観光でこの地を来訪される方達にとって、陸の玄関口、最初に秋田を印象付ける場所です。
   
  そんな注目される場所で、街の賑わいと駅前活性化を地場産の秋田杉を活用しつつ目指したのが今回のバスターミナル建替プロジェクト。私は郷里を愛する秋田っ子として "やねばない(やらないといけない)" の思いで参加させていただきました。
   
  設計監理チームの一員として、私が担当したのは工事監理と補助金関係実務。中でも力を注いだのは工事監理。デザインと設計が目指す理想を、施工に携わる多くの地元技術者と共に創意工夫で具体化する事が私の使命。
   
  与えられた工期は全体で5ヵ月弱、工事は全4バースの半分を通常運行しながら前期・後期に分けて2バースづづ行う、つまりは2.5か月サイクルで建物を2度完成させるもの。
   
  一見するとシンプルな木造ですが、実は木造と鉄骨造のハイブリッドで難易度が高いこの建物。鉄骨柱脚と杉柱の接合部の取り合いの製作精度、施工方法など事前に技術検討が必要な部分が他にも多数の為、在来木造のように簡単には事が進みません。
   
  極端に短い工期の中、クリアしなければならない技術課題が各工程で次々現れましたが、その解決において大きな力となったのは、施工にあたった地元技術者達の力。これまで培った技術や経験を元に、課題解決に創意工夫をもって挑み、時に加工用の道具まで製作して設計が示す形を実現しています。駅前での仕事とあって、誰もが気概を持ち、積極的に質の高い仕事をした結果が建物の随所に見られます。
   
  ところで、構造材の秋田杉にも隠れたこだわりがあります。鉄骨部分との取り合いの精緻な加工と、杉材を屋外で使用するにあたり採用された防腐処理(モックル)を行う事に配慮して、柱や梁は全て割れや狂いが少ない芯去材を採用しています。芯を持たないという事は元々どのくらいの原木から挽いた材なのかご想像ください。これだけの量の芯去材を一度に短期間で調達出来た事は林産県秋田の底力の証明でもあるかと思います。
   
  地域が有する産業力や物造り力をカタチとして視覚化し、街の賑わいと活性化に貢献する、秋田駅西口バスターミナルの現在の姿。
   
  昨今の地方都市における人口減少・経済衰退に起因して、元気や活力が失われていく傾向に一石を投じ、街の魅力アップに貢献しています。やさしく、暖かな光を放つ176灯の照明が竿灯の稲穂の如く連なる夜の光景は必見です。皆様、是非一度秋田に足をお運び下さい。
   
  最後に、このプロジェクトに参加させていただいた事、そして、各分野でご尽力なされた沢山の関係者様方々との貴重で刺激的な出会いに感謝と御礼を申し上げます。
   
   
 
 
モックル処理した秋田杉   芯去りの構造材
 
  鉄骨柱脚の工場検査
 
 
柱脚加工の為、作成した工具   柱脚部分の加工の様子
 
 
鉄骨と木柱の接合部   林立する秋田杉の柱
 
  秋田の祭り〜組子細工
 
 
点灯試験の様子   ナグモデザイン照明
   
   
   
   
   
   
  ●<ほりい・けいすけ> 1級建築士
間建築研究所(あいけんちくけんきゅうしょ)主宰。秋田県秋田市生まれ。
老人福祉施設・児童福祉施設・保育所など補助金事業に供される特殊建築物の設計・監理を主に秋田県を拠点に活動。東北地方のミニマムな経済状況や気候風土の特殊性に重きを置き設計活動を行っている。
間建築研究所HP: http://archilab-ai.com/
facebook: https://www.facebook.com/keisuke.horii
   
 
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