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子供の頃は一般的にいう親から与えられる「おやつ」という存在はなく、おなかがすくと自分で探して食べるという事が常識でした。季節ごとにその食材は変わるのですが、春は緑芽吹く季節、山野の食べ物は豊富です。雪解け後しばらくすると道路端や畔など、どこにでもあった「すっかし」は「すっかしすっかいすっかんぼ」と口ずさみながら食べたものです。すっかしとは「すいば」のこと、すっかんぼとは「いたどり」のことで、大小二つの酸味のある植物は特に美味しい物でもなかったが、身近に会ったため、よく口に入れました。 |
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ツツジの先端の枝にツツジの花びらを次々に刺していく。 | |
しかしなんといっても一番の好物は桑いちご(発音は、かいちご。正確にはくぁいちご。)でした。家で養蚕をしていたので桑畑が沢山ありました。東にそびえる大とんがりという山の裾野は扇状地になっていて、清水が湧き、その周辺は右も左一面の桑畑でした。5月から6月にかけて白い花が咲たあと、緑の実が赤くなり、徐々に黒くなってくると食べ頃です。ツツジもそうですが、小粒なこのいちごをひとつずつ食べていたのでは食べた気がしません。そこで同じようにまとめ食いを考えます。(と言うより教わったのでしょうね。)まず大きめな蕗の葉を探します。それをくるっと巻いてロート状にします。次に茎の部分を葉のすぐ下から折りますが、折った茎に皮が2〜3cm残るようにスーと引きのがポイントです。 |
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蕗の葉に入れた桑いちご。これくらいたまると絞り始めます。(右)絞るときは葉の先端を綴じる。(左) | |
これを左手に持ち、右手で桑いちごを摘んでは入れ、摘んでは入れをひたすら繰り返していきます。溢れるまでは入れず、七分目位になったところで、葉っぱの上部を閉じ、茎に残した皮を口に入れ、両手で雑巾を絞るときの要領で、慎重にギュウーと搾るのです。すると皮を伝ってチュルチュルと桑いちごジュースが口の中に落ちてきます。その味は甘酸っぱくとてもとても美味しいものでした。ゴックンと飲めないもどかしさはありましたが、とても至福な時間でした。ただ焦って強く搾りすぎると蕗の葉が破れ、そこから潰れた実が溢れ、大変なことになります。 家に帰り何も話さなくても真っ青になった唇、果実の汁のついたシャツを見れば、何処で何をしていたか、誰が見てもすぐに分かりました。(笑) |
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