特集 「だっこのいす」プロジェクト  
  震災からの“つながり”
文/ 明内和重
   
 
 
   3月11日の大津波から1年、岩手の小さな村ですが、いろんな苦難をみんなと共有しながら歩んできました。その歩みは、決して順調なものではなく、早いものではありませんでした。
   
   見上げるほど大きなしぶきを上げ、防潮堤を乗り越え、黒い濁流となって次々と家屋を押し流し、街の中心部まで飲み込んだ津波は、37名もの尊い命と500戸以上(村内の約3割)の住宅に被害を及ぼしました。
   
   その光景は忘れることのない記憶であるし、ようやく春めいてきたこの空気の匂いとともに自然と思い出されるものです。
   
   「夢であってほしい…」と強く願っても、おきてしまった事なんだと自分に言い聞かせながら、ここまで歩んでまいりました。もちろん、ここまで歩んで来る過程では、いろんな方々からのご支援の賜物であり、それなしではあり得ないことでした。
   
   この度、宮崎からとても温かい贈り物がありました。それは、杉コレクションの「だっこのいす」でもありますが、安田圭沙ちゃんを始め、携わった方々の、心の温かさをいただいたような気がしております。
   
   “「だっこのいす」を東北に送るプロジェクト”を通じて“つながり”ができたことは、とても喜ばしいことであり、かけがえのないものになると思います。これも、震災があったからこそできたことなのです。
   
   振り返れば辛い事実ですが、これから野田村が「復興」を目指して歩んでゆくためには“つながり”が是非とも必要です。今回、野田村の子どもたちも、少しの時間でしたが交流をもてた事は、大変有意義なものであるとともに、将来、この子どもたちが大きくなった時、宮崎と野田村がつながっていてほしいものです。
   
   来年の春の匂いは、震災の匂いではなくなるような気がしております。
   
 
 

野田村での宿泊先、えぼし荘にて。この横断幕も明内さんのはからいでご用意いただいたとのこと。明内さんは前列、圭沙さんの左。(月刊杉編集部)

   
   
   
  ●<みょうない・かずしげ>  岩手県野田村役場総務課 企画調整班 総括主査
   
 
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