特集 鹿沼の木工デザイン再構築プロジェクト
  プロローグ
文/写真 山康秀
   
 
 
  今回、日本全国スギダラケ倶楽部・鹿沼担当という事で、30名以上の執筆者となった月刊杉の大特集である今号のイントロを書かせて頂く事になりました。大した役割は果たせてないのに大変僭越ではございますが笑、プロジェクト初期から若杉さんと共に携わってきた者として、これまでの事をダイジェストでお伝え出来ればと思います。宜しくお願いします。
   
   
 

実は鹿沼の方々とは初めてお会いしてからまだ1年半しかたってない。
しかし、まるで自分の生まれ故郷のように、心に根付いた地になってしまった。

   
  「おい、山。来週鹿沼行くぞ」
  若杉さんの出張に誘われた。大体こんな感じで誘われる。去年の3月の事だ。当時、鹿沼という地域についての知識は全くなかった。今回は若杉さんの知人方に「鹿沼」という木工地域があるからスギダラの話をしてみて欲しいという依頼だった。そのとき僕が付いていく理由の一つに、僕個人の人事の話があった。
   
 

「お前を別のチームに行かせる事になった。」

   
  珍しく若杉さんが申し訳なさそうに話すのを良く覚えている。しかし移動先予定のチームは良く知っており、面白い活動をしていたのでそこまで悲観はしていなかった。ただただ、さびしい気持ちの中、鹿沼に向かう電車に乗っていた。(後に異動の話は流れました。結局最近ありましたが・・・。)
商工会議所に着くと、鹿沼商工会議所、木工所の方々が大会議室に集まっていた。みんなスーツか作業着だ。若杉さんがいつものごとくスギダラの話をする。そのときはみんなまだ半信半疑な表情だった。樽見副会頭と星野社長がウンウンとうなずいているのを記憶している。終った後、交流会でもあるのかなーと思っていたら(悪い癖ですね)特に無く解散。ぼーっと突っ立ていた僕達を樽見さんが呼びかけた。
   
  「全国杉サミットをやりたい!」
  うわ、めちゃくちゃおもしろい人がいた!(樽見さん、杉サミット絶対やりましょう)
その場で樽見さんと盛り上がり、是非今度は東京に来て下さい。とお願いをしてその日は別れた。
樽見さんのキャラが全ての始まりだったのです。(ちなみに屋台屋のネーミングも樽見さんです。)
   
  一ヵ月後には木工軍団を連れて内田洋行に遊びに来てくれた。僕達はいつものごとく屋台を用意し、会社案内をした後一緒に飲んだ。木工所のオジサマ達がスギダラの家具や内装をみて目をキラキラさせていた。スギダラバーで仲良くもなった。是非一緒にやりたい!と言ってくれた。嬉しかった。
また今度はこっちから出向いて、昨年のあの大雨の中の始めての「鹿沼ぶっつけ秋祭り」を見て、素晴らしい彫刻屋台と、それを支える町の人たちの心意気にやられた。若杉さんと
   
  「俺たちも祭りで屋台出してー」
   
  と話していたが、この時はまさかホントにやる事になるとは思ってなかった。帰りがけに言われた入江さんや佐藤さんもそう思っただろう。その後、東京にお迎えしてプレゼンして頂いたり、鹿沼に行って工場見学したり、試作の製作をお願いしたりと、どんどん仲良くなっていった。
   
  そして大きな工場ツアーをやりたいというお話を受け、スギダラメンバーを誘い、20名超の大軍団で向かった。おりしも今年の3月11日、あの東北大震災があった日だ。その時のことはブログに書いてあるので割愛するが、今回デザイナーとして参加していただいた寺田さん、深田さん、藤森さんも一緒に行っていた。そしてやはり帰りがけに、今回の展示即売会の話が出たのである。みんな盛り上がり即決定。その後、浅野さんをお誘いし、浅野さんも分けも分からない中即快諾。若杉さんの周りにはこんな人達ばかりだ。ありがたい事である。
   
  どんどん時間が過ぎていき、あっという間に直前になってしまった。しかしみんなやりたい事は次々出てくる。「あれもやりたい、これもやりたい」と言うと、鹿沼のメンバーは「わかりました。やりましょう」こんな感じでどんどん進んでいったのだ。
   
   
  終ってみればスギダラメンバーの応援もあり大成功に終わった。その様子はスギダラ家の人々にも載せているが、町の人達が誇りを持って創り上げている空間に関われる事は素晴らしいの一言だった。 ありがたい事に参加メンバーや、屋台屋の話を聞いた方が「他のイベントでも是非だして欲しい!」と言って頂いて、今後の展開が生まれてきている。
   
  今回このプロジェクトに携わってきた中で、僕が内田洋行に入社するきっかけになった、母校での若杉さんの講義を思い出した。あの時若杉さんのスギダラの話を聞いて、「コレだ!」と感じた何かが鹿沼という地でもきっと生まれる。そう確信した。デザインと技術、作り手と社会、様々な人間とその繋がりが生み出す新しい文化だ。さらに、強力なデザイナーチーム(こんなメンバーめったに揃わん!っていうレベル)もいる、鹿沼には素晴らしい人々と技術がある。これは失敗するはずがない、あとは突っ走るというだけだったのである。
   
   
  最後に、忙しい中時間を作ってこのプロジェクト作りあげてくれたデザイナー、鹿沼のメーカー、商工会議所の皆様。影で支えてくれたデザイン事務所、メーカー及び内田洋行のスタッフの皆様。イベント当日に素晴らしく盛り上げてくださったツアー参加メンバーの皆様。そしてあたたかく迎えてくれた鹿沼市民の皆様に、心から御礼申し上げます。また私の力不足でご迷惑をかける事もあると思いますが、運命だと思って諦めてくれれば幸いです。
   
   
  まだまだお話したい事は尽きないのですが、またこれから違う形でお伝えしていきたいと思います。
   
  皆様本当にありがとうございました!
  これからも応援どうぞ宜しくお願い致します!
   
 
 

「屋台屋」プロジェクトメンバー、スギダラツアー参加者に多謝!!

   
 

●<たかやま・やすひで> (株)内田洋行 鹿沼担当

   
 
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