特集 天草・高浜フィールドワーク2011開催
  地元高浜から-その1-
   
 
新しい娘たちを迎えて ホームスティ・イン・タカハマ
  文/ 宮口 喬
   
  幸か不幸か私と同名の若者?が向こう隣にいる。名をタカシというが、彼が尻込みする私の妻を説得してホームスティをすることになった。 二人の学生がやってきた。私達は呼び方を決めた。「もんちゃん」と「ゆきちゃん」 もんちゃんは中国からの留学生。ゆきちゃんは長崎県出身の学生。
   
  最初もんちゃんは日本語ができるのか懸念していたが、流ちょうなことばでびっくりした。幼少時日本に住んだことがあると言うことで納得だった。非常にアクティブな学生だった。ギターの弾き語りをする。福岡で街角ライブをやるだけあって、声と演奏は素晴らしかった。バーベキューの時、演奏するように水を向けた。しかしそれはせずなんと夜の海の水に飛び込んだ。水が違った。
   
  ゆきちゃんは対照的に静かな雰囲気のただよう大人チックな学生であった。単身カナダに高校留学していただけあって、なかなか自立心は並はずれているとみた。 妻は久しぶり子どもが帰ってきたようで、この娘達と親しくお話をしていた。特に料理の話が多かったようだ。ぶたあえ。天草の特産品?で、ブタは入っていない。みそとなすびのあえものと言えばいいのだろうか。もんちゃんは、これが大変気に入って自分でもつくるんだといって、レシピを熱心にきいてメモっていた。ゆきちゃんは、みそ汁が気に入ったようで、つくってみようという気になったらしい。 朝市に二人を連れて行ったが、野菜が安いので感動して、ジャガイモを大量に買ったりもらったりして帰りのバスにも持っていった。 二泊三日の本当に短い滞在期間だった。しかも行事の詰め込みすぎだったような気がする。ふたりとゆっくり話す時間があまりにも短すぎた。一日目の夜だけだったろうか、あとは殆どゆっくりした時間はとれなかった。
   
  ホームスティをやっての感想だが、最初は互いに不安だったろうが、別れの時はもうなごり惜しかった。おかげ様でフィールドワークの方にも参加させていただいた。私の参加した班は「上田宜珍(よしうず)」に焦点をあて、いろいろな人々にわかりやすく知っていただくをコンセプトにして、紙芝居をつくることになった。メンバーも熱心でまたたく間に面白いものができあがった(自分的には)。発表も反応が良かったような気がする。ヨシウズの渦をちょんまげにしてキャラクターができあがった。少しオチャラケになってしまったが、目的が郷土の偉人にもっと光をというもので、趣旨は理解してもらえるだろうか。他のプロジェクトチームもなかなか熱がこもっていて、このタカハマをどうにかして過疎地から脱却させたいという思いが十分伝わった。
   
  このフィールドワークを通じていろいろな感想を抱いたが、一番感じたのが、九大の藤原教授を核にした有識人・学生が3、40人集まったことだと思う。観光とか産業振興とかいうが、結局はひとだと思う。 この人たちの明るさは何だ。特に燃えスギの連中ワカスギ、チヨダ、クラウチ、失礼。全日本スギダラケの中核メンバーが揃い踏みだったが、この明るさがタカハマが失いつつあるものではないか。早速会員になった。会員登録無料というのが気に入った。 還暦を過ぎたわたしは、しきりにチヨダさんを説得した。バーベキューの日に、夜の海に飛び込もうという。しかし彼は飛び込んだ。なんともんちゃんも飛び込んだ。タカシも飛び込んだ。申し合わせのダイブだったらしい。冒険も大事だよといっているようだ。若ければ当然飛び込んでいただろう。 嵐のように野外学習インタカハマは終わった。始まったのだろうか。ホームスティもまだ終わっていないような気がする。
   
 
  左:ゆきちゃん 中:もんちゃん 右:宮口さん 朝のひととき
   
  ●<みやぐち・たかし> 天草氏高浜町在住
   
   
 
  フィールドワークを終えて
  文/中原 貴
   
  高浜フィールドワークにご参加頂きましたスギダラの皆さん、自己紹介に始まり、奇抜なアイデア、熱い厚いトーク、軽快なジョーク、スギダラ天草支部の発足。最後の最後まで本当にありがとうございました。
   
  話は6年前にさかのぼり、平成18年3月。平成の大合併により日本全国の地方自治体が揺れ動いているなか、ここ熊本の西方で2市8町が合併し天草市が誕生しました。その約半年前に発足した高浜地区振興会。これまで行政主導であった地域づくり・活性化を、地域の手で行うということを目的として活動が始まりました。発足当初は地域の人たちに受け入れられず、地域の「公民館」の名前が変わっただけのものと認識をされていました。それから数年経過し、少しずつですが地域の認識も変わりつつあります。
   
  現在、高浜地区振興会では、3年前より熊本県の支援を受け「夢あるまちづくり」事業を展開しています。その一環として今年2月に実施された「高浜シンポジウム」。そのパネリストの一人に九州大学大学院の藤原教授がいらっしゃいました。天草最果ての町をいたくお気に入りになられた教授は、「今度は、生徒を連れてきたい!」。突然のオファーに対応が出来るかどうか戸惑いました。なにぶん、このようなイベントに慣れていないため、どういう準備からはじめればよいのかと大いに迷いながら、各署と相談を重ね、振興会のプロジェクトメンバーの協力を得て、なんとか開催にこぎつけました。
   
  三日間を振り返り、高浜へお越しになったメンバーの行動力、発想に圧倒されました。各班のワークでは忌憚の無い新鮮な意見が飛び交いました。「天草」ならではの感じ方でしょうか。外部からの刺激というものは、普段、感じられないものを感じました。なかには、「天草って熊本だったんですね!」という、こちらとしては驚きのひとこと。「天草・島原の乱」という単語の影響力を痛感しました。最終日の成果発表では、趣向を凝らした紙芝居から、新商品プロダクトまで。ありとあらゆるご意見を頂戴しました。 あの三日間のフィールドワークを通じて、参加者一人ひとりが色々な想いを募らせたものと思います。
   
  後、高浜地区振興会として、このワークを活かし、高浜ぶどう復活への取り組みや、陶磁器の新たな利用方法を模索していく予定です。 あらためて、ご参加いただきました皆様に感謝を申し上げます。
   
 
  皆に煽られいざ飛び込まんと意気込む二人 左:倉内 右:中原
 
  天草の海はとても温かく澄んでおりました
   
  ●<なかはら・たかし> 貴高浜地区振興会事務局
   
   
 
  日常生活の中にある世間遺産をもっと活用するために
  文/山口義久
   
  私たちのように、長年生まれ育った地域で生活していると、それが生活の一部であると感じているが、なんでもない風景・日常生活を外から見ることでその地域の無名の遺産であることを教えていただきました。
   
  熊本県の主催により、平成23年2月5日(土)に開催された高浜シンポジュウムにおいて、写真家藤田洋三先生から「世間にはへんな人がいっぱいいるように、へんな物がいっぱいある。」と言われ紹介された。たとへば、高浜には高浜変成雲母岩で石積した上に白土塀が作られている光景、道を歩くと人には会わないが、50メートル程歩くと必ず5〜6匹程の猫に会う、猫の住みよい町でもある。また、今から200年程前に上田家第7代上田源太夫宜珍氏による区画整理が行われ、今日の都市計画が実現している地でもあると同時に、上田家住宅も貴重な文化遺産である。
   
  九州大学の藤原教授には、夢あるまちづくり事業で高浜においでいただき、その時から高浜を好きになっていただき、これまで、高浜の魅力・まちづくりについて助言、提案をいただいているところでありますが、今回、九州大学の授業の一環として学生さんとプロのデザイナー、社会人と一緒に高浜地区における顕在・潜在した地域固有資源を再発掘するため、フィールドワークを開催していただきました。
   
  このフィールドワークでは5つのテーマを設け、まち歩き、地元住民との意見交換会、参加者同士の意見交換を得て、これからの高浜のまちづくりについて提案をいただきました。 提案では、「偉業を成し遂げた宜珍氏の功績を紙芝居で紹介」しては、気軽に楽しく、「じきじきにできる高浜ブランド」を開発しては、住んでいる人にスポットを、珍発見の「高浜マップ改訂版」の提案、「地域の宝さがし」では高浜ブドウ、椿、空いている小田床窯の利活用の再検討、「サイン・小サイン・タンジュンダ」を理念とし、「外から来た人に軒先の看板で案内・高浜通貨の発行」など、地域の人たちが考え付かない提案をしていただきました。中でも、スギダラケ倶楽部の皆さんのトークを交えた説明と発想は、地域の方々にやる気を爆発させたひと時でもありました。  高浜地区では、地域のまちづくりのためにワークショップを何回となく開催し、自分たちで出来るものから実施しようと青空市場の開催、高浜ぶどうの普及と栽培など手がけていただいていますが、今回のフィールドワークを気に目の輝きが変ってきたような感じを受けています。
   
  私たち行政も地域の意見を取り入れ、支援できるものは支援してまいりたいと考えています。天草支所の中にも、ZIKI・ZIKIやる会を発足させ市民の対応に当たることとしています。今回のフィールドワークに参加いただいた関係者の皆様に感謝申し上げます。
   
 
  高浜の世間遺産:広大な海に沈みゆく夕日
   
  ●<やまぐち・よしひさ> 天草支所長
   
   
   
   
 
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