連載
  スギダラな人々探訪/第54回 「日本の杉を宝物に変える」楽木(ラッキー)吉岡こと吉岡宏展さん
文/ 千代田健一
  杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 
今月は広島県福山市のとある経営者、吉岡宏展さんをご紹介します。
吉岡さんは、この6月に会員登録をしていただいたばかりのニューフェイスなのですが、会員登録の時に記入していただいくコメント欄に「広島県で、杉を特殊なブラストで磨きだす作業をしています。「楽木(らっきー)」とか「つながり杉」で検索していただけると、やっていることがわかります。」とあり、何の駄洒落か興味が湧き、早速言われた通りに検索すると、まず最初に開いたページに吉岡さんがラジオ出
演された時の音声に独自で画像を貼り付けたYuotube動画に目が留まり、それを閲覧しました。
???どこかで聞いた話だな〜。と言うか、どこからどう聞いてもスギダラの仲間が語ったとしか思えないような話だし、その語りは全国の多くのスギダラ野郎がそうであるようにあまりにも熱い! 正確に言うと暑苦しいくらいなのです。
   
  まずは、そのラジオ放送から聞いていただきたいと思います。
15分もあるので、ちゃんと時間のある時にご覧ください!
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=y0Xc2nt9eUU
 
  中央が吉岡さん。後ろに見える「ありがとう 夢 感動合宿」の 文字が「楽木」への想いの強さを表しています!
   
  このラジオ放送を聞いてもわかるように、吉岡さんのご本業はコンクリートの解体を始めとする解体・はつり工事の請負業で、そこから発展し、そういった作業環境をよりよくして行くためのオリジナルツールの開発、販売もされています。
一般的には殆ど目にすることの無い道具や装備の数々はとてもマニアックで面白いものばかりです。素晴らしいのは吉岡さんがなぜそういったものの開発をやっているのか?という考え方と想いです。
例えば、CBRマフラーというコンクリートブレーカー(コンクリートを振動で砕いたりはつったりする道路工事ではおなじみの工具)用の消音機。ネットの検索でその文字だけ見るとホンダのバイク用のサードパーティ製マフラーなのかと思ってしまうのですが、実は見た目も車やバイクのパーツっぽい感じで、アルミ製のボディはルックスもなかなかカッコいいのです。どうせ作るのなら良いものを、カッコいいものをと言うのはわかりますし、その性能もラジオで解説があった通り、東京駅の耐震改修工事でも採用されいる程なのですが、すごいのはその開発に4年以上の歳月をかけて改良に次ぐ改良を加え、完成度を高めていった妥協の無さだと思いました。認めてもらえるまでしつこくやり続ける。少しでも騒音を小さくして人々に迷惑がかからないようにしたい。その思いの強さに感動しました。
   
  そんな吉岡さんが取り組んでいる「楽木」という地元の杉材を使った商品。
なぜ杉にこだわっているのか?というところのくだりはこの月刊杉の読者であれば大いに共感できるものだと思います。
元々汚れたコンクリートや錆付いた金属の美化を目的にサンドブラストを使った美装工事も請け負ってらっしゃるようですが、そこでも吉岡さんらしくブラストの粉塵が出ないように独自の工夫を凝らした商品「ハイブリッドブラスト機」を開発。その先端技術をあらゆる素材で実験されたことと思います。
その中で、杉にブラストをかけると見事なうづくり仕上げにできることを発見されたのでしょう。チェーンソーアートの仕上げや、看板や表札に使ったりする中で、木の良さ、特に杉のように柔らかい部分と硬い部分の落差が激しい木材ならではの表現ができることに注目されたのだと思います。そこで杉との関わりが段々深まって行き、杉を含めた日本の森林事情、林業や製材業の実情に触れ、思いを強くされて行ったのではないかと推察します。単に杉という素材の良さを形にして行くだけでなく、杉と
いう素材を通して、人と人との繋がりを大切にしたり、ラジオ放送の最後に吉岡さんが語っておられたように、「こどもたちに夢と勇気を与える」ことができる。そんな絆を作っていける可能性を「杉」は持っている!と確信されたのではないでしょうか。
吉岡さんから「この磨き出す技術を、「楽木」をして、全国に広めたいんです。日本中にたくさん生えている杉を、一生大切にされる宝物に変える。そんなことをやるため、いろいろ準備しています。」というメールをいただきました。この「楽木」確かに普通のサンドブラストではこんな風にできそうにないですね。吉岡さんが考案されたように、パーソナルなものだったり、保育園の園歌のプレートだったり、そんな使い方が最も想いにあった使い方だとも思いますが、ボクの専門のインテリアで言えば、内装の表層材や内装の一部に切り文字のごとくグラフィックを施していくような使い方もいいかな、と思いました。ちょっとモダンにアレンジしてみれば、活用できる範囲も広がるように思います。
もうひとつのネタ、「夢を叶えるツボ」というネーミングにはちょっと参りましたが・・・(汗)
   
 
  楽木のフォトフレーム。一枚のムク板からできていて、全てが パズルのように繋がっている。
   
  ハイブリッドブラストによる加工。水を混入しながらのブラスト加工は 研磨剤の粉塵を撒き散らさないクリーンな技術。   ハイブリッドブラストという吉岡さん独自の方法 でうづくり加工されたチェーンソーアート作品。
 
  保育園の園歌を刻んだプレート。レーザー加工とは逆に、文字の方が 浮き出ている。これも1枚の杉板からできていて、3枚が繋がっている。
   
  ちょっと出来杉た話のような気がしないでも無いのでですが、そこまで暑苦しく杉にこだわり始めた理由は、吉岡さんが出演されたBSフジ「社長密着24時〜世界を変える100 人の挑戦者たち〜」の番組を見ていただけるとよりわかりやすいんじゃないかと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=xQ030qh4ah4&feature=related
   
  吉岡さんは産業的に窮地に立たされた杉の活用を訴えると同時に地域の活性化のための活動もされています。もちろん、邪魔者扱いされている日本の杉材のおかれた現状に対する憤りもあるとは思いますが、まずは自分の住む地域からそういった問題に向かい合い、地域のみんなで取り組んで、自分たちが元気になって、そこから日本を元気にして行こうされている。そんな願い、愛、想いが伝わってきました。
中央集権だ!地方分権だ!なんて制度の枠組みを云々する前に自分たちにできることをやる。そんな積み重ねが世界を変えて行くのではないかとボクは思っていますし、吉岡さんは福山という町でそれを実践されている。地元の事業者で連携したり、地元在住のイラストレータを起用したり、福山幸せマップのアイデアも素晴らしいです。地域活性化のとても良いモデルになり得ると思いました。
   
  これまでも全国のイカれた(千代田的には敬愛の念を込めた表現)スギダラ野郎をこの紙面でもご紹介してきました。宮崎支部の支部長 海野洋光さん、同じく宮崎支部の川上宰さん、栃木支部の広報宣伝部長 片見雅俊さんなどがその最たる方々なのですが、今回の吉岡宏展さんも含め、共通しているのは、会社の経営者、つまり社長さんということです。「社長密着24時」の番組の最後に吉岡さんにとって社長とは?と問われたのに対し、「自分で方向を決めることのできる最高の仕事」と語っています。
実はボクが最も感動したのはこの一言でした。いつもボク自身がありがたく思っていることなのですが、スギダラ倶楽部の強みのひとつは吉岡さんのように自分で方向を決めることのできる、つまり想いを行動に移せる原動力を持ち、自身の行っている事業の成果に結びつけ、社会に対して貢献して行くことを導いて行けるリーダーの資質を持った仲間が各地の要所要所にいるということです。スギダラ倶楽部の中にもいろんな役割を担える人材がたくさんいます。みんな想いも強いし、才能に恵まれた人もたくさんいます。そんなみんなの想いを引っ張って行って、行動に結びつけるには吉岡さんのような爆発力を持ち自分で決めることのできる人材が不可欠なのだと思います。
それと番組の中でもテロップで出てきますが、吉岡さんは今年37歳。自分が37の時どうだったかを思い返すと恥ずかしい限りですが、そんな若く、鋭気に富んだ吉岡さんの仲間入りを心から歓迎したいと思います。(ち)
   
 
   
  以下、吉岡さんより。
   
  わたしは、広島県福山市で、「日本の杉を、一生大切にされる宝物に変える」というコンセプトで、杉の面白い使い方を提案しています。
ある時、杉をブラストすると、面白い木目になることに気付き、杉に興味を持ちました。
その時、初めて、日本の杉の問題を知りました。
幸か不幸か、知ってしまったために、「なんとか出来ないんだろうか?」と思い、はまってしましました。
   
  現在も、事業として、成り立っているわけではありません。
でも、協力してくださる方や、わたしの作った商品を欲しいと言って、買ってくださる方がいます。
   
  なんとか、日本中にある、粗末にされている杉を、一生大切にされるものにしたいのです。
   
  「つながり杉」「背伸び杉」「夢を叶えるツボ」など、変わったものを作っています。
よろしければ、吉岡システムのホームページやブログ、一度見てください。
   
  皆様と、こうして杉を通じて出会えたことに、感謝します。
今後ともよろしくお願いします。
 
吉岡宏展
   
 
  「背伸び杉」クリックするとPDFでご覧になれます。
   
  コンクリートブレーカーの騒音対策「CBRマフラー」の説明はこちら
http://ameblo.jp/yo-yoshioka/theme-10029354953.html
   
  簡単にホコリ対策 「イージークリーン」一度、ご覧ください。音がでます。
http://www.youtube.com/watch?v=nhN5vwpwnyQ&feature=channel_video_title
   
  騒音・ホコリに悩んだら、相談してみてください。
作業環境を改善する「株式会社 吉岡システム」
TEL 084-972-2109  FAX 084-972-5996
   
  いろんな、面白いもの、扱っています。
吉岡システムホームページ
http://www.yo-yoshiokagumi.com/index.html
「夢を叶えるツボのらっき〜な吉岡ブログ」 見てね。
http://ameblo.jp/yo-yoshioka/
   
   
   
   
  ●<ちよだ・けんいち> インハウス・インテリアデザイナー
株式会社パワープレイス所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
『スギダラな人々探訪』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo.htm
『スギダラな人々探訪2』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo2.htm
   
 
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