特集 銘木と銘酒の町フォーラム
  フォーラムレポート
文/  石橋輝一
 
写真/ 山本茂伸
 
 
  2011年3月5日。
どこまでも広がる青空の下、早春の吉野で「銘木と銘酒の町フォーラム」が開催されました。
   
  昨年の夏より動き始めた「吉野杉・木桶復活プロジェクト」。
月刊杉でも随時ご紹介をさせて頂いてきました。
 
  61号 http://www.m-sugi.com/61/m-sugi_61_ishibashi.htm
  62号 http://www.m-sugi.com/62/m-sugi_62_ishibashi.htm
  64号 http://www.m-sugi.com/64/m-sugi_64_ishibashi.htm
  65号 http://www.m-sugi.com/65/m-sugi_65_ishibashi.htm
  66号 http://www.m-sugi.com/66/m-sugi_66_ishibashi.htm
   
  昨年末に吉野杉の木桶が復活。今年2月より日本酒の木桶仕込みに挑戦。
ひとつひとつのステップを踏み、そして3月、新酒が完成しました。
お披露目の試飲会を兼ねて、吉野の産業と文化のまちづくりをテーマにしたフォーラムを開催させて頂きました。
   
  フォーラムの会場は吉野町の「上市」地区。吉野の製材所が集まる吉野貯木団地の吉野川を挟んでの対岸に位置しています。上市は名前の通り、木材の市場町として発展し、江戸時代には伊勢街道の町として栄えました。現在でも当時を偲ばせる商家や民家、酒蔵が立ち並んでいます。
   
  吉野町には3軒の酒蔵があります。
 
  北村酒造さん http://www.kitamurasyuzou.co.jp/
  北岡本店さん http://www.kitaoka-honten.com/
  美吉野醸造さん http://www.hanatomoe.com/
  上市に2軒(北村さんと北岡さん)
   
  フォーラムの開始前には産業と文化の香りが残る上市地区の「まちあるき」イベントを行いました。地域の皆さんのご協力も得て、来場者の方々に建物内部の見学、休憩処としての開放、説明などをさせて頂きました。
 
 
 
 
   
  北村酒造さん。
銘柄は「猩々(しょうじょう)」。天明8年(1788年)創業の酒蔵です。
右の写真は店内の試飲・販売所。蔵の趣きがあり、歴史を感じられます。
 
   
 

北岡本店さん。
銘柄は「やたがらす」。北岡篤社長は現・吉野町長さんです。
右の写真は店内の試飲・販売所。桶の形をした試飲スペースが楽しいです。

 
   
 
   
 

フォーラム会場内では、吉野の木材業の新しい取り組みの展示を行いました。

   
   
  フォーラム会場の吉野町中央公民館です。上市の中心部にあります。   吉野ウッドプロダクトecomoの商品です。吉野の素材で作った照明器具、料理箱、コースターなどが並びます。
   
   
  吉野塗工房さんのブース。伝統の吉野塗りの杉箸、塗り皿などが展示されました。   吉野製箸工業協同組合さんは杉と桧の端材から作る割箸の展示。吉野製箸さんは新開発の割箸を使ったトングの展示、新子商店さんは漬物樽や樽イスなどを展示されました。
       
   
  吉野木材若手軍団team KASUGAIのメンバーの株式会社ウッドベースさんは、コンセプト住宅「棲香・吉野杉」の模型を展示されました。   屋外には吉野製材工業協同組合が開発中の木製水槽を展示。
       
   
  フォーラム会場入口には、来場者の皆さんに吉野杉の板に寄書きをお願いしました。   スギダラ関西のブースでは、スギ関メンバーの狩野新さん()デザインの吉野杉家具「TOY−P」を展示しました。写真は狩野さんとスギ関メンバーの建築設計室Morizo−の内田利惠子さん。
       
   
  NPO法人芳水塾さんのブース。林業の父といわれる土倉庄三郎翁の功績を伝える活動をされています。   teamKASUGAIメンバーの坪岡林業さん。吉野材コースターHIJIRIYAMAを展示。
       
   
  木工房エンゲルベルグ社の井上さん。吉野杉や桧で作った椅子や机、木馬や麹蓋などを展示されました。   来場者の皆様へのお昼ごはんは、地元のお母さん方のご協力を得て、特製の手作り弁当!。北岡本店さんの酒粕で作った粕汁!。本当に美味しくて、大好評でした。
       
   
  お昼ごはんのスペースとして開放されたのが公民館5階の一部屋。吉野川や上市の街並みが一望できるステキな場所です。現在、この部屋を杉だらけ・桧だらけに改装する計画が進行中!。これから月刊杉で随時ご報告させて頂きますね!   いよいよフォーラムが始まりました。会場は満席で熱気ムンムン。
   
 
   
  フォーラムの第1部として、NPO法人芳水塾理事長の古瀬順啓さんに「林業の父〜土倉庄三郎翁伝」と題した記念講演を頂きました。土倉庄三郎翁は吉野・川上村出身で、江戸から明治にかけての時代に林業の近代化を進め、土倉式造林法を日本全国のみならず海外にも広め、林業の父と言われ、その功績が称えられています。
 
  古瀬順啓さんの記念講演。演台の前には吉野の酒蔵3社の菰樽が並べられました。
   
   
  第2部のパネルディスカッションでは、6名のパネリストをお迎えして、地域の産業と文化、まちづくり、ひとづくりについて、ご意見を伺いました。
 
  左から順に、司会の近藤裕人さん((株)住まい創りパートナーズ 代表)。近藤さんは今回のプロジェクトの立ち上げ時から協力して頂きました。
吉野町長の北岡篤さん。吉野の酒蔵、北岡本店さんの代表です。
大阪・堺の潟Eッドワーク(藤井製桶所)代表の上芝雄史さん。上芝さんは今回の吉野杉の木桶を作って頂いた日本で数少ない桶職人の一人です。
兵庫・西宮の(株)田中製樽工業所 代表の田中啓一さん。田中さんは吉野での樽づくり復活にも尽力されています。
そして、スギダラ代表・南雲勝志さん。今回のプロジェクトは2009年11月のスギダラ関西・吉野ツアー&フォーラムがきっかけ。1年半ぶりに吉野に来て頂きました。
続いて、建築美術工芸同人「座かんさい」座長の西村征一郎さん。
一番右が吉野町議員で今回のプロジェクトのリーダー、中神木材 代表の中井章太さん。
   
 
   
  第3部は美吉野醸造に移動して、新しい木桶見学会と木桶仕込み日本酒「百年杉」の初絞り試飲会を行いました。  
     
  美吉野醸造さんはフォーラム会場から少し離れている為、マイクロバスでの移動です。  
   
   
  美吉野醸造さん。吉野町の六田(むだ)という地区です。   美吉野醸造さんの蔵は吉野川のほとりにあります。この蔵の周辺は、橋が架かっていない時代に「柳の渡し」という渡し船がありました。
       
   
  蔵の中です。ハッピを着て、説明をしているのが杜氏の橋本晃明さんです。   新しい吉野杉の木桶。桶の近くに行くと、杉と酒の良い香りが漂っています。
   
  復活した吉野杉・木桶仕込みの日本酒を「百年杉」と命名しました。
この仕込み桶はこれから100年、200年と時を刻んでいきます。その記念すべき一年目。
   
  その味わいは、ほのかに感じる杉の香り。
吉野杉の淡い赤味の桶ならではの味わいとなりました。
   
  日本中の色々な杉で桶を作っているウッドワークの上芝さんの「新桶でこのような穏やかな木香は初めて」という感想が、吉野杉が日本酒の桶や樽に最適であるという昔からの言い伝えを改めて認識する結果となりました。
   
 
   
 

フォーラムの後、場所を吉野山の旅館歌藤さんに移して、懇親会を行いました。
お客様と地元のみんなが、食べて、飲んで、いっぱい話して、その輪をつなぎ、広げる事ができました。

   
  たくさんの方々のご協力と応援の中で、木桶復活プロジェクト、そしてフォーラムを無事開催する事ができました。本当にありがとうございました。
きっかけを与えて頂いた2009年11月のスギダラ関西・吉野ツアー&フォーラムにご協力、ご参加頂いた皆様、本当にありがとうございました。今回をひとつの通過点として、これからも前進していきます。
   
  最後に撮った記念写真が今回のプロジェクトの全てを物語っているように感じました。
   
 
  最後にみんなで記念撮影!
   
  吉野の人、そして全国からお集まり頂いた皆さん。
写真の中のみんなの笑顔が本当に素敵です。
   
  一歩一歩、前を見て、横を見て、上を向いて。
これからも楽しみながら進んでいきます。がんばろう!お〜!!
吉野にもっと笑顔が増えて、日本全国でもっともっと笑顔が増えますように。
   
   
   
  今年の秋、吉野で何か動き出す予感!?
   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴5年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。

『吉野杉のハラオシをしよう!』web単行本: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm
   
 
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