連載
  スギダラな一生/第37笑
文/ 若杉浩一
  今年最後の杉笑い話:スギダーランド構想〜いちごちゃんへ  
 
 

 今年も最後になった。スギダラの活動も随分広がり、大変になりつつも、ただの思い込みと笑い話が実体化し様々な形や動きになり始めている。
いつも、いつも妄想から始まり、大笑いをし、次は大真面目に「じゃあ、どうする?どうやる?」なんて話に進み始める。いつも「冗談から駒」なのだ。
根っこに楽しさがあるから、真剣そのもの、いつも手を抜けない。いきなり訳の分からないネタを振られた方は大変だと思うのだが、そんなノリやリズムが活動の中心にあることは事実でもある。

さて、今年の締めに相応しい妄想系笑い話を一つ。

 僕は、木材市場の方々の集まりでスギダラの活動を話す機会があって、今までの事を楽しく面白くお話しした。おかげですっかり、大先輩方々、いや各木材市場の親分達と仲良くなれた。それで木場の市場の話になった。色々話しを聞くと木材業界の低迷につれ、市場の機能の見直しや役割の変化が起こり、マーケットとのズレが生じ始めているとのこと、木場のあり方の今後という話になった。確かに木材のメッカである事には違いないのだが、専門業者以外立ち寄れない場所なのである。築地や秋葉原なんて観光地化しているし、秋葉原なんてそもそも家電お宅や、電子機器マニアのメッカだった所から世界に日本のサブカルチュア文化発信の拠点にまで昇華してしまっている。
それに比べ木場は確かに求心力がない。ある方が、「せめて、AKB 48に対抗してSKB(新木場)48でも作ろうか?」なんてうまい事を仰った。「うま〜〜い!!そう言えば秋葉原/秋葉と木場、似ている!!一文字違いで大違いじゃないないですか〜〜〜!!こりゃいけますぜ!!」もう、体の中の妄想スイッチが入ってしまった。「新木場って、舞浜の前じゃないですか〜〜つまりですよ。ディズニーランドより東京に近い!!インターナショナルな木材のメッカ、一大エンターテイメント。名付けてスギダランド!!」どうすか?「木工のまつわる楽しいイベントや、作家、飲み屋が集まる木材の新しいカルチュアを発信する拠点。ユニークなキャラクターも登場!!」あまり盛り上がらなかったのであるが、こっちは盛り上がりっぱなし。その後も妄想にふけっていた。

この話を南雲さんにしたら、またまたエンジンがかかってしまった。
「若ちゃん、面白い!!」
「南雲さん、一応ね、キャラを少し考えたんですよ」
「まず、この楽園のオーナーはウォルナットデスネーなんです。スギダランドちゅ言うに、広葉樹のオッサン。固めのキャラです」
「面白い!!」
「それとね、間伐材で出来た、ミキーマウス(幹マウス)ただのオッサンが丸太の輪切りのカチューシャを被っとるわけですわ。」
「あとね、僕はこれがお気に入りで、ヒノキオ(檜男)。檜の枝だけで出来たオッサンで、山師なんです、安全第一のヘルメット被ってまして、泥棒ひげ蓄えとるんですわ」
「若ちゃん、いい。笑える!!」
「しかし、後が続きません。南雲さん何か無いっすか?」
「う〜〜ん。これどうだろう?ヒーターバン(挽いた板)ただの板だよ、できれば、ぼ〜っとしたキャラがいいね」「いい!!」
「あとさ〜、ドウナノナルノ大工?いつも大工の未来を暑苦しく訴えてるオッサンだよ」
「それと白雪ヒバ、雪のように肌の白いヒバ!」
「お〜〜いい!!面白い!!乗ってきた」。
「じゃあ、これどうすか? ダボ、ダボです。木ダボでできたゾウなんですけど、めちゃくちゃ出来が悪い、ダボダボな感じです」
「あと、芯ダラケ城。芯持ちの小径木で出来た城で湿度の変化で割れるもんですから、いつもバキバキ言ってる居酒屋です。オッサンの巣です」
「あとチップガデール。ヒータバンの脇で文句ばかり言っている突っ込み役のオッサンです」「凄い!!面白い。これさ〜このキャラの使用料でスギダラ儲かるんじゃないの?」
「出来るだけ本家本元に似ないようにしないとダメですけど〜大変な事になりますよ受けちゃって、どうします?」

いやはや、どうにもなりません。まったくこの程度で盛り上がれるというのはもはや中学生レベルであろう、いや中学生に申し訳ない。焼酎学生並である。しかし、いつも真剣そのもの、一生懸命に考え映像化する。そして会話の繰り返しで映像がリアルになり、やがて活動化する。
宮崎空港の仕事のときもそうだった。バカバカしい名前とキャラクターを考えデザインした。殆ど受けなかったどころか、皆さんはピクリともしなかった。しかし僕らは、真剣だった。僕たちはいつもこんな感じでデザインをしている。まったく屍類類、使われなかったモノダラケだ。最後は自分たちで自分たちを表彰し、讃えようなんて、また意味不明な盛り上がりをつけてしまうほどである。

いつも、いつも、楽しく、面白く。この気持ちは何時も忘れないでいる。
みんなで、楽しんで、一生懸命に夢を追いかける。それはやがて作り手を離れ、みんなの力で磨かれ、楽しく、美しい場になり、楽しい力がまた集まってくる。
そういう流れを知っている。何で、こうなったのだろう?
そう、これは元々日向の富高小学校の仲間に教わった事なのだ。

この前、高校生になった一人がメールをくれた。もう、めちゃくちゃ嬉しかった。もう卒業だ、随分時間が経っていた。
しかし僕らの心の中には未だに色あせず、つぶさにあの頃の事を一つ一つ思い出せる、映像化されている。この体験が、忘れられず今が有る。
ありがとう。
デザインやってきて良かった。
スギに出会って良かった。
みんなに会えて良かった。
これだから、やめれないのですよ。ねえ南雲さん、千代ちゃん、和田さん。

もうすぐ専門学校生の富高小学校卒いちごちゃん達へ感謝の気持ちを込めて。

 
   
   
   
  ●<わかすぎ・こういち> インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない
活動を行う。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長
『スギダラ家奮闘記』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_waka.htm
『スギダラな一生』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_waka2.htm
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved