連載
  東京の杉を考える/第50話 「デザインのしゅうへんでできること」
文/ 萩原 修
   
 
なんとこの連載50回も続いている。記念すべき50回目に何を書くべきか。そもそも、最近、スギダラトーキョーの活動ができていなくて、スギダラに関することがほとんど書けないでいる。今回も「スギダラ」の話じゃなくて、「デザイン」の話を書きたいと思う。
   
  2010年11月12日〜24日まで、名古屋芸術大学内のアート&デザインセンターというスペースで、 「名古屋芸術大学特別客員教授 萩原 修ディレクション 5つのプロジェクトファーム デザインのしゅうへん展」という展覧会を開催した。
   
  この展覧会をやることで、自分の中で整理することがたくさんあった。とても悩んだし、大変だったけど、やったかいがあったと思っている。終了してから1ヶ月以上経った今でも、まだ余韻が残っている。この展覧会で何かが終わって、何かがはじまろうとしている。何がはじまるのかは、まだわからない。
   
 
会場デザインは、寺田尚樹さん、グラフィックデザインは、三星安澄さんにお願いした。普段は、あまり表にでることがない自分の展覧会は、なんともやりにくかった。人のことは客観的に見られても、自分のこととなるとなかなか見えない。あれこれ悩んだけど、結局は、寺田さんに、方向性を決めてもらい、あとは、まな板の鯉状態だった。
   
  そもそも、ぼくが独立してからの仕事のスタンスを、あまり人に話をすることはなかった。「プロジェクトファーム」という方法で仕事をしようと決めたけど、それがうまくいくかどうかはわからなかった。5年以上経った今となっては、ようやくその方法でうまくいくことといかないことがはっきりしてきた。
   
  それぞれのプロジェクトごとに成立ちもしくみも課題も違うけど、そこに何か共通してるものがある。それが何か、まだ、うまく言葉にできない。でも、確実に何かがいっしょなのだろう。それこそが、ぼくがやろうとしていることになる。
   
  「デザイン」は、依頼者がいて、それを受注することが多い。「プロジェクトファーム」は、そうじゃない方法を模索したい。通常のデザインの「プロジェクト」は、依頼者のお金でおこない、引き渡したらそこでおわる。「プロジェクトファーム」は、依頼者のお金に頼らない、そして、終わらない「プロジェクト」をめざしている。
   
  まだまだ、すべてがうまくいっているわけではない。それでも引き続き模索を続けていきたい。「デザイン」の力をもっと、社会に活かす方法を実践したい。自分が「デザイン」で何をしたいのかもおぼろげながら見えてきている。
   
  まだまだ、できることはたくさんあると思う。というかやらなきゃいけないことばかりだ。やりたい人だけが集まって、個人個人の力がつながることで、「プロジェクト」が動きだしていく。そうして、デザインの周辺がもっとよろこびにあふれるようにしたい。
   
  「スギダラトーキョー」もやりたい人だけが集まり、自然なかたちで動きだせればいいと思っている。来年は、きっといい出会いがあることだろう。
   
  デザインのしゅうへん展 ウェブサイト
  http://www.shuhenka.net/
   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう>デザインディレクター。つくし文具店店主。
1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
大日本印刷、リビングデザインセンターOZONEを経て、2004年独立。日用品、店、展覧会、書籍などの企画、プロデュースをてがける。著書に「9坪の家」「デザインスタンス」「コドモのどうぐばこ」などがある。
つくし文具店:http://www.tsu-ku-shi.net/
『東京の杉を考える』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_tokyo.htm
   
 
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