特集 「杉コレクションIN西都」とこの一年
  杉コレクション2010を終えて(杉コレがきっかけに生まれたモノ)

文 浜砂 孝詞

    語り 奥口 一人・(荒谷 功)
    文補/写真 辻 喜彦
    写真 井上康志・崎田真央・池水隆寿
 
【杉コレ開催までの遥かな道程】
  西都市は、宮崎県のほぼ中央部に位置し、日本最大級の古墳群である「国特別史跡公園・西都原古墳群」で知られる街です。しかしながら、古墳群のようなすばらしい歴史と自然を有しているものの、中心市街地と台地(西都原古墳群)とのネットワークが弱く、年間約100万人ともいわれる観光客が、街なかへ立寄ることはなく、中心市街地の賑わいが失われつつあり、この賑わい再生が西都市の長年の大きな課題となっています。
   
  私が担当する都市計画の取り組みとして、年間約100万人の来訪者を何とか、街なかへ降ろし、回遊してもらい市街地を活性化しようという目標で、西都原台地と中心市街地の中段域において、古事記・日本書紀の説話に登場する伝承地を結ぶ「記紀の道」(遊歩道)を整備し、西都原台地と中心市街地を結ぶネットワークを形成する取組みを平成17年度よりコツコツとやっています。
   
  「記紀の道」整備をモデルとして行なうなかで、中段域周辺住民による市民活動も徐々に活発化し、その動きは段々と、大目標の中心市街地活性化の主人公である、街なかの人たちも及び始めました。そして平成19年度からは、市中心商店街を中心とした「街なか再生ワークショップ」を設置しました。毎月1回の議論を重ね、H21年度からは、「桜川を憩いの場にする会」を結成し、桜川の清掃活動(毎月第一日曜)や「ピンク×3大作戦(卒業記念植樹イベント)」等を実施してきました。
   
 
  桜川の清掃活動
 
  ピンク×3大作戦
 
 
街なか再生ワークショップ風景    
   
  また2008年11月「第16回うるおいのある川づくりコンペ(九州地方整備局主催)」において、西都市中心部を流れる桜川の環境美化に取り組む「桜川を憩いの場にする会」(奥口一人 代表)は審査員特別 賞を受賞いたしました。 出場23団体中3位の高評価でした。この受賞は街なか再生をめざすメンバーにとって大きな励みとなりました。
   
 
 
川づくり先進地「北九州市撥川視察の懇親会」にて 荒谷さん   川づくりコンペ九州大会in鹿児島にて  奥口さん(中央)+浜砂(右)
   
  ※ここからは、まちづくりのリーダーである奥口さんとまちのご意見番・荒谷さんにフォローしてもらいながら、話を進めていきたいと思います。
   
  ●奥口
  「2010年12月の桜川清掃は、5日に開催しました。地元の妻高校サッカー部の皆さんにも参加して頂き、寒さにも負けずに川に入り、掃除を楽しみました。(このサッカー部の皆さんの参加も、杉コレ懇親会でコーチにお手伝いをして頂いた縁であります。妻高サッカー部の皆さん、ありがとう!)」
   
  街なか再生ワークショップ」も、机上での議論、清掃活動等も2年間続けるなかで、何か新しいネタが無いものか? 具体な共通の目標イメージは何なのか? そんなことを模索している状況でした。 そんな時、西都に踏み込んで4年になるツジさんより「やまんかん祭(杉コレ)」を市街地の取り組みに活かそうとの無謀な提案を頂きました。 杉コレの内容も聞かないまま、「やりましょう!」の二つ返事をツジさんにしてしまった・・・。
  そして、杉コレに向けた、遥かな道程が始まったのです。 まず最初は、西都のまちづくりに係るキーマンの捕まえ方から、始まりました。 西都の街のキーマンといえば、この人、まちの自転車屋さん奥口さん、街のご意見番・まちなかギャラリー「夢たまご」の館長荒谷さんです。
   
  ●奥口
  「私の両親は、九州山脈の麓「米良」で育っていて、親父は小さい頃「炭焼き小屋」で生活をしていましたので、私自身も非常に宮崎の林業に関心が有りました。杉コレについても、私のテーマである「何でも挑戦!みんなで楽しく!」のもと、数年に一回のチャンスなので「やっぱり!西都らしい!」ものをやり、可愛い後輩である池水クンが喜ぶ顔が見てみたい・・・。そんな想いでした。」
   
  そして3月には、早速関係者の顔合せ会が開かれ、噂には聴いていた南雲さんご一行が、西都に登場し、イベントに対する暑く熱すぎる想いを確認することができました。
   
  しかし・・・
  さぁ、みんなで杉コレに向けて頑張ろう!!としていた矢先(4月)に、 口蹄疫が西都にも・・・。
  終息するまで、キーマン、商店会の方々と顔をあわすこともなく、時が過ぎました・・・。
  この間、「杉コレ」のことは、正直、頭のどこかへ飛んでいました・・・。
   
  ところが、さすが天照大神の孫(ニニギノミコト)が日向の高千穂峰に降臨の後、居を構えた西都の地です。口蹄疫の終息宣言が出された6月後半からは、まったくついていけないスピードで急ピッチに、杉コレの準備は着々と進みはじめました。
   
  西都原古墳群で開催される、杉コレ。 杉によって、商店街に今まで無かった、新しい何かが生まれる可能性があるかも・・・。
   
  西都木青会の皆川さん、池水さんを中心としたメンバーと街なかWSのメンバーによる、提案の出し合いが、何度も行なわれました。 まず最初は、杉コレクションに応募してくれた子ども達の作品を街なかに展示することから始まりました。
   
  その話し合いの中で、杉コレ最終審査後の懇親会は、いつの間にか、「屋外で! 」ということになりました。奥口さんの提案である。 150人規模の懇親会・・・。 場所は街なかの「逢初(あいぞめ)ひろば」・・・。 料理は飲食業からの持ち寄りに決まりました。「さすが!」です。
   
  ●奥口
  「我々の商店街には、いろいろな名物料理が沢山あります。是非、市内外の皆さんにその名物料理を腹いっぱい食べて楽しんで頂きたい!ということで企画しました。」
   
  そして、最終審査前に審査員の皆さんに桜川沿いを散策して戴き、都萬(つま)神社で昼食をとってもらう企画も生まれました。
   
  ●46歳男性談
  「“私は、30歳代の頃は、最強の雨男として一目置かれていました・・・。 今回、こんな時に「嵐を呼ぶ男」として復活するとは・・・。 (自転車屋経営)”」
   
  ●奥口
  「はっきり言って当日まで「何人?」参加されるか全く把握出来ませんでした。 結果的には、お弁当の数も当初予定の2倍になって大変うれしい誤算です。 しかし、都萬神社の見学が非常に長く、なかなかお楽しみのお弁当時間になりませんでした。都萬神社がこんなに初めての人を魅了するなんて・・・。」
   
  「当日は、台風一過で南国宮崎らしい青空が広がり、まるでピクニック気分になりました。」
   
 
 
桜川を歩こう会    
 
  都萬神社にて
 
 
都萬神社での昼食風景    
 
  桜川を歩こう会参加者集合写真
   
  そしてもう一つ、杉コレでは、スギダラの皆さんの提案で「杉玉づくり」が行われました。街の中心である「都萬神社」は日本酒発祥の地と云われています。 焼酎文化の宮崎には、新酒を知らせる「杉玉」の慣習はありませんが、杉は有り余っています。 みんなで協力して「杉玉」を造り、都萬神社へ奉納したり、街なかに飾ることが出来ないだろうか?  そんな提案を杉コレ開催10日程前に、まちなかギャラリー「夢たまご」の館長荒谷さんに相談しました。 東京から故郷・西都へUターンされた荒谷さんは、「杉玉」のこともよくご存知で、これまた二つ返事で「おもしろい、やりましょう!」と云ってくださった。
   
 
 
     
 
杉玉づくり風景    
   
  そして杉コレ当日を迎えました。 直前まで台風の影響が心配されましたが、みんなの想いは、台風の渦も蹴散らし、杉コレも、懇親会も大成功に終わりました。
   
 
 
スタッフによる真剣な開始前の打ち合わせ 「西都を丸ごと美味しく食べてもらうぞ!」   西都名物100年以上の伝統を誇る「本部うなぎ屋」さんも登場!
   
盛り上がりの懇親会風景    
   
  私は、ウェイターとして懇親会をお手伝いしましたが、手作り感があり、何より杉コレ参加者の満足そうな顔が見られたことが良かった、嬉しかったです。
   
  杉コレのおかげで、商店会の新たな協同による“おもてなし”のやり方が発見でき、木青会、我々行政とのネットワークも出来ました。
   
  ●奥口
  「楽しかったぁ〜!! 懇親会担当の菊池さん、ありがとうございました!当商店街には、文化ホール(約400名収容ホール)という公共施設がありますが、このホールに各種大会を誘致して、逢初広場にて懇親会を楽しんで頂く流れをつくり「西都らしい」おもてなしと美味しい商店街の名物料理を楽しんで頂けるようにしたい!これが、杉コレの皆さんに頂いた商店街活性化の置き土産だぁ〜!!」
   
 
 
特設の噴水プールへもダイビングして頂き、感無量です!   当日はウェイターを務めさせて戴きました
   
   
  【杉コレを終えて、今、考えること・・・】
  官民協働による中心市街地活性化へ向けての具体的な取り組みを、西都市は積極的に支援していくことは勿論ですが、今回、「杉」に関わる人々と交流する機会を与えられたように、もっともっとお互いの情報を提供し共有し合い、様々な人々に出会い、交流する機会が増えるほど、ネットワークがひろがり、そこから新しい何かが生まれてくるのだと感じました。
   
 
  都萬神社に奉納された杉玉
   
  ●奥口
  「それぞれのポジションにスペシャリストがいて、その力が結集し同じ方向に向かった時に凄い事が出来るのですね! みんな、今住んでいる所を更に元気にしたいと思って活動されています。 「木」のスペシャリストの杉コレの皆さんとこれからも何か面白い事をやってみたいです。話は変わりますが、地元の西都商業高校野球部が春の甲子園大会21世紀枠九州代表に選ばれました。西都市初の悲願の甲子園出場に向けて商店街一丸となって応援しますよ! そして、私も来年は、地球に優しい乗り物「自転車」関係の杉コレ作品を応募します!」
   
  今回生まれた「杉」関係者とのネットワークを継続させ、それに他の活動団体も連携し、もっと大きな輪になれば、賑わいは再生されると思います。 また、商店街が杉コレに関わることで、「杉」から「食」へと発展し、あの場所、あのやり方を生みだすことができたのです。 今後また、街なかを使った商店街による懇親会が行われると思います。 そして、この様なモノが、西都独自の、ブランドのような、捉え方をされるような仕掛けを考えていくことが必要だと、今、感じています。
   
   
  街なかに展示された子ども杉コレ作品
   
   
   
   
   
  ●<はますな・こうじ>   西都市役所 建設課
  ●<おくぐち・かずひと> 「桜川を憩いの場にする会」会長 サイクランドおくぐち経営
  ●<あらたに・いさお>  「ギャラリー夢たまご」館長 http://blog.goo.ne.jp/saito-yumetamago/
   
 
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