連載
 

東京の杉を考える/第46話 「旭川で森と街とモノをつなぐために」

文/ 萩原 修
  あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 
2010年7月8日、9日、10日。第2回の「旭川木工コミュニティキャンプ」に参加してきた。今年は、東京から50人、北海道内から100人が参加して、去年にもまして盛況だった。静岡や青森から参加している人もいた。何がこのイベントの魅力なのだろうか。
   
  昨年の第1回は、東京のデザイナーに、旭川の木工の現場を見てもらうことで、デザインする人とつくる人が顔のみえる関係になり、自然にプロジェクトが立ち上がるといいなあと思っていた。それでも、そんなにすぐに成果がでるとは思っていなかった。
   
  それがどうだろう。昨年のキャンプをきっかけに、次々と新しいプロジェクトが立ち上がっていく。知らないうちに、デザイナーとメーカーがつながって、新しいものづくりがスタートする。こんなものをつくりたいというデザイナーと、それならうちの工場でつくれるよという流れができた。
   
  ぼく自身、ドリルデザインとつくし文具店のオリジナル文具を企画して、どこでつくろうかという時に、旭川のメーカーが頭に浮かび。そこでつくってもらうことになった。実際に工場見学していなければなかったことだ。
   
  デザイナーは、自分がこんなものをつくりたいとかんがえた時に、どこの工場ならそれが可能なのか、あらゆる手段をこうじて探す場合がある。最適な工場と出会えればいいけど、それはなかなかむずかしい。木工と一口に言っても、その技術の幅は広く、価格、ロット、納期などの制約条件の中で、最適な工場を探し、そことの信頼関係をきづくころが必要だ。
   
  今年のキャンプには、メーカーやデザイナーだけでなく、ショップや問屋のバイヤー、そして、メディアの人が多数いたのが特徴だった。昨年のキャンプをきっかけに、デザイナーがメーカーに出会い、その先の売ってくれているショップの人が今年のキャンプに参加する。そんな状況が生まれた。メディア的にも、地方での新しい動きとして、このキャンプの可能性が注目されているらしい。
   
  今年の1月に、旭川に行って、第2回のキャンプの打ち合せをする中で、めざすべき方向がみえてきていた。それは、3つのM。MORIとMACHとMONOをつなぐこと。それぞれにばらばらにみえることが、どのようにつながっているのか。そして、どのようにつなげられるのか、それを考え、試すのがこのキャンプの目的だ。
   
  今年のキャンプでは、意識的に、旭川の街を見て歩く時間をつくった。醤油やお酒の工場の見学もおこなった。もちろん、昨年に引き続き森に入った。昨年、間伐した木と森がどうなっているか確かめた。そして、今年は、「もくじてん」という、キャンプに参加するメーカーやデザイナーのつくったモノを展示する展示会も開催した。
   
  いろんなことがいい方向にまわりはじめている。それは、何よりも旭川で中心的に準備をしている人たちが、楽しみながら、自分たちのこととして、誰に命令されることなく、積極的に動いているからだ。
   
  来年は、3年目。きっと正念場だ。規模が大きくなり大変になってくることも予想できる。少数の人に負担がかかりすぎるのは、あまりいいことではない。なんとか、乗り越えて、次につなげるような展開が必要だ。今から少しずつでも動いていかないとなあ。
   
 
   
 

AMCC 旭川木工コミュニテイキャンプ
http://www.mokkocamp.org/

   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう>デザインディレクター。つくし文具店店主。
1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
大日本印刷、リビングデザインセンターOZONEを経て、2004年独立。日用品、店、展覧会、書籍などの企画、プロデュースをてがける。著書に「9坪の家」「デザインスタンス」「コドモのどうぐばこ」などがある。
つくし文具店:http://www.tsu-ku-shi.net/
『東京の杉を考える』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_tokyo.htm
   
 
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