連載
 

杉で仕掛ける/第27回

文/ 海野洋光
   
 
今回は、海杉の仕事で「杉で仕掛ける」のお話をさせていただきます。
   
 

一昨年、日本工業大学教授の武田光史氏から電話があった。
「ごめんなさい。海野さん、建設会社だって! 林業関係者だとばかり、思っていたんだ」
武田先生は、宮崎県出身の建築家だ。
「話していませんでしたっけ?すみません。建設会社を営んでいます。別に話すこともないので・・・」
武田氏の話では、延岡に新築住宅の話があるらしい。設計は、武田氏の後輩だということで相談があるからという話だった。

   
  本当にありがたい話だが、海杉は、ほとんど自分の会社の話はしないらしい。海杉が何者であるか、未だに知らない人もいる。
   
  延岡の住宅の話は、間もなく、小澤丈夫氏(北海道大学大学院 准教授)から直接、電話があった。設計した住宅は延岡市内で見積もりをして欲しいということだった。何度か見積のやり取りをしてお施主さんに会い、仕事の依頼を受けた。
   
  図面は、やはり、建築家の設計した住宅だった。
 
  住宅模型 2階リビングが特徴だ。
   
  この建物の図面では、構造部材が全てベイマツになっていた。強度と信頼性を考えると世界のスタンダードだ。構造計算された設計の変更は、容易ではない。しかし、宮崎県であれば、「杉」が一番だろう。しかも、宮崎県には、ヒノキとスギのハイブリッド集成材もJASに認定されるという情報もあったので、VE提案をしてみた。「強度も担保でき、価格も抑えられる宮崎材の話は、宮崎だからできることで、どうでしょうか?」という内容だった。
  スギの集成だけでなく、ヒノキの集成も加えた。トータルでオール宮崎を目指した。
 
  スギの集成材 ここは、天井が貼られ見えなくなる。
   
  次は、弊社の秘密兵器「弥良来杉」だ。
  後で話していただいたことだが、この武器は、お施主さんは、かなり、お気に入って頂いたらしい。施工を弊社に決めていただいたのもこの「弥良来杉」を持っているという点だったそうだ。日本で唯一の建設会社だ。まだ、大々的に宣伝はしていないが、国産材で最強の住宅用(ツウーバイフォー材)ウッドデッキ材を作る会社なのだ。そうなりたいと願っている。
 
  弥良来杉のウッドデッキ  息子に手摺に登れるか試させた。危険度の調査だ。
   
  建築構造材として、スギやヒノキの集成材はまだ、日本の構造設計家からは、認知されていない。どうしても、ベイマツがスタンダードで構造の図面には「ベイマツ」と記載されている。国産材でE105やE90もできると言うことをそろそろ、知って欲しいと願うのだが・・・。
 
  ウッドデッキの構造材 ヒノキ集成材は、美しい。
   
 
  柱脚金物の試作 この建物特徴であるV柱構造の要だ。
   
   
 

海杉は、ここで杉を仕掛けようと画策を始めた。 次号に続く

   
   
   
   
  ●<うみの・ひろみつ>木材コンシェルジュ
ほぼ、毎日更新しています。ブログ「海杉 木材コンシェルジュ」 http://blog.goo.ne.jp/umisugi/
2009年3月31日をもって、日向木の芽会 を卒業しました。
海野建設株式会社 代表取締役 / HN :海杉
『杉で仕掛ける』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_umi.htm
   
 
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