特集 スギ天 (スギダラ天竜支部)
  天竜の杉

文/写真 山口好則

 
静岡県の西北端、南アルプスの西南部に位置する天竜(現静岡県浜松市天竜区)、90%が山林で占められている地区が我が「スギ天」の故郷です。
   
  歴史は古く、江戸時代から人工造林が行われていましたが、明治時代に金原明善(天竜植林の父)が治水事業として本格的に植林事業を始めたのが起源です。
   
  植林されている樹種は杉(7割)と桧(3割)、もともと建築材料としての使うのが目的だった為それ以外の樹種はほとんど植林されてはいない様です。杉が多いのは桧より成長率が高く同じ年数を育林しても杉の方が騰がりが良いからでしょうか??・・たぶん。
   
 
  「スギ天」の故郷
 
  天竜の杉山 (霧です、花粉じゃないのでご安心を!!)
   
  そんな天竜で生まれ育った「天竜杉」がどんなモノなのか、直に触れて感じてきた事を思いのままにぶちまけてみたいと思います。
   
  今まで天竜杉とは建築材料としてしか係わった事が無いので他のスギ天メンバーと見る角度が異なるかもしれませんが、木材(製材)業に携わって28年、業界の中ではヒヨッ子とは言え天竜杉の良い所や泣かされる所はずいぶん見てきましたが、今回は天竜杉の良い所を中心に紹介します。
   
  ●堅い杉
あくまでも杉ですから桧や欅の様に堅いなんて言いませんが、他の産地と比べてみて堅く感じると言う事です。具体的に硬度を測った事は無いんですがあくまでも感覚的な所で堅さを感じます。材木を毎日触っていることで解ってくる感覚なのですが、柱や梁を持った時に角(エッジ)の手のひらへのくい込み方が他の産地と違うんです。だから強度も違います、静岡県林業技術センターの試験でもヤング係数 E−91が平均で出ているんです。これって日本の杉の中では最強クラスなんですよね。
   
  ●脂ノリノリ
大間のマグロじゃなくって天竜杉のお話です。天竜の木材は杉とヒノキ両方共に「脂っ気」が強いんです。試験センターにデータがあるのかどうか分かりませんが、これは見た目で解ります。特に柱や内装材として「カンナ」を掛けた後の艶(テカリ)が違います。これは木質の堅さと相まっての事なんでしょうけれども、灯りに照らされて輝く様な光沢を見ていると惚れ惚れしてしまいます(ほとんどビョーキの様ですが)。
   
 
   
  杉の話はこれぐらいにしておいて、私の仕事場を紹介します。
   
 

「有限会社アマノ」 天竜杉・桧専門の製材工場です。http://www.tenryusugi.jp/

  昭和10年に個人創業を始め昭和63年法人化、今の工場は2007年から稼働しています。従業員は13名、いちばんの自慢は若い力がある事。現在10代20代が合わせて5人居ます。
木材の選定については社長がとてもこだわりの強い人で、とにかく高樹齢で(70年以上)年輪の細かな杉しか扱いません。だから天竜杉だから何でも製材するって工場じゃないんです。
殆どの原木は天竜の山主から直接買い入れ、毎年秋に伐採してから3ヶ月間葉枯らしをした後に3mから8mの長さに切られてアマノの工場に運搬されてきます。製材されてから天然乾燥を経て生産された「天竜杉」は西は大阪から東は埼玉県ぐらいまで出荷されています。
   
 
  敷地面積 8937平方メートル
 
  手前が第一工場、奥が第二工場。それぞれ面積が699平方メートル
 
  製品群のほんの一部です。
 
  見よっ!この年輪の細かさ!
 
  有限会社アマノ エントランス
   
   
   
  ●<やまぐち・よしのり> スギダラ天竜支部長
有限会社アマノ 勤務
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved