特集 東京 「ユイスからはじまること」
  「東京の庭」にできること
文/ cocon制作室
 

こんにちは、cocon制作室と申します。私たちの始まりは、昨年「東京の庭」というフリーペーパーを発行したこと。奥多摩コミュニケーションペーパーと銘打って、東京都奥多摩町の身近にあるけど見過ごされているステキなことや物を紹介していきました。

私自身、現在山に囲まれた場所で暮らしています。以前はここから会社に通勤していましたが、東京では通勤時間が1時間半、てのはザラですよね?ところが逆に都区内に住んでる友人に遊びにおいでよ、というときにはなんだか気を使って、がんばってイベントを考えたりしてしまいます。でも…そうじゃないんです。本当に知って欲しいのはガイドブックに載ってるちょっと変わった喫茶店でもなければ、設備の整ったキャンプ場では決してない。天気のいい午後に木々の間からこぼれるきらきらとしたものだったり、川原の石に寝転がったときに見る吸い込まれそうな空間、そういう場に触れたときの感触を味わって欲しいのです。そういった意図で制作した「東京の庭」は幸い多くの人に受け入れられ、ことに奥多摩町在住の方々に絶賛されました。曰く「自分の住んでる町じゃないみたい」と。

   
 
 
電車から見えるきらきら
   
 

そんな成功を糧に、今年は東京の多摩産材普及啓発のためのフリーペーパー「東京の庭baum」を発行しました。多摩産材のことにプラスして、今までほとんど知らなかった東京の山のこと、木のことをテーマにしたのですが、調べれば調べる程どんどんのめり込んでいきました。

私の中で、元々きっかけはありました。「東京の庭2号くらし編」で東京の庭的蕎麦ミシュランという大層勝手な企画をやったのですが、奥多摩湖のダムよりさらに奥にあるお蕎麦屋さんでのことです。そこのおかみさんと話をしているときに「商売休んでられないのよー。この辺の山はみんなウチのなんだけど手入れなんて全然できないし。」と言うではありませんか。その時、山を持っている=大金持ち、みたいな図式しか頭になかった私の中では疑問が渦巻いていました。『なんで?山持ちなのにお蕎麦屋さん?それ以前に手入れってそんなに大変なの?手入れしないとどうなるって言うの??』はい、全く持って何も知りませんでした。

そんな中見つけた先生は、相槌を打つことも出来ないくらい話の内容がわからずにポカンとする私たちに図解つきで教えてくださいました。今は多少は友だちにも説明できます。そうして完成した2冊のbaum。やっぱり材木屋さんなどにびっくりされます、こういうトコが面白いんだ?って。

奥多摩町在住の人が「自分の町じゃないみたい」と言ったように、その業界の人、内部の人にとって当たり前のことを別の目線でとりだしてみせる。そうして冊子にすることで、林業に関わりのある人にも、全然知らない人、興味のある人にも届けることが出来る。

もしかしたら、こんな私たちの活動が離れてしまっている山と町をつなぐ一助となることができるのではないかしら?といま気がつきました。

   
   
  出荷を待つ多摩産材たち   山の作業取材中、下刈り作業を遠くから見守る2人
   
   
   
   
  ●<ここんせいさくしつ>
2008年、高木多恵子・高橋享子・島崎さほりの3人で結成。
「東京の庭」の制作を皮切りに紙もののデザインを中心に活動中。
http://www.coconcocon.com
   
 
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