特集 秋の「史上最強の飫肥杉デザイン大作戦」に向けて〜日南から
  飫肥杉の力を借りて、日南らしく、にちなんにちなんで
文/写真 河野健一
 

●飫肥杉課をつくった

 

日南市役所に飫肥杉課を立ち上げてから、早いものでもうすぐ2年が経つ。メンバーの本業は、商工業・景観・まちづくり・建築・教育・歴史文化・観光・協働・林業とさまざま。縦割りな行政の中にあって、幅広い分野から野望と力と個性を持ったオジサンが集まっているので、何かと楽しい。話も早いし、無駄な時間もかけないし、役割分担もサッと決まる。(忙しい人が多く、実行が伴わないときもあるが) 議論をすれば、それぞれの専門的な立場(建築士や教員の免許を持つメンバーもいる)からにとどまらず、個人、一人の人としての意見が飛び交う。役所の会議でよくいるような、質問に答えられないので遠回しにチンプンカンプンなことを言う人、何も言わない人、できない理由ばかり言う人、なんていない。居心地が良い。
飫肥杉課は、飫肥杉を核としたまちづくりの基礎・体制・キッカケをつくろうと2年間という期限を切って、立ち上げた。かつて日南の経済と活力の源だった飫肥杉に、今一度、日南の再生への力を借りる土台をつくろうと。

 
 
飫肥杉課メンバーへ市長からの辞令交付
   
 

●飫肥杉課はつくった

 

2007年の4月に立ち上げたので、その年度は予算がなかった。役所の仕組みでは、前年度に予算を編成するため、4月のスタートでは前年度の準備・助走期間がなく、予算も確保できていない。なので、前半は飫肥杉の勉強が主な活動だった。メンバーで、山にも製材所にも市外への視察にも行った。夢見橋の整備では、単なる公共事業ではもったいないと、市民や子ども達も巻き込んで「ぼく・わたしの橋」づくりに、側面からではあったが取り組めた。
2008年度は、前年度に企画から予算要求まで準備ができたので、多くはないが予算を確保した。それまでの経過も引き継ぎ、飫肥杉商品開発の研究や、割り箸製品化の勉強、市役所内の飫肥杉化、小学校での飫肥杉学習などに取り組んだ。いずれも完成形にはまだまだ至っていないが、突破口を切り開き、新たなネットワークも広がり、少しだが目に見えるカタチになったものもある。

 
 
飫肥杉課の勉強風景
   
 

●飫肥杉課はつづく?

 

結成から2年が経ち一区切りがつく飫肥杉課は、3年目以降に突入できるのか。
日南市は今年の3月30日に、お隣の北郷町・南郷町と合併する。その後に、新市の市長選挙があり、その新市長の政策的な判断で決められる。もちろん、ボクは新飫肥杉課の設置を提案する。まあ、ボクなんかがしなくても、現メンバーの誰かが仕掛けるだろう。もし万が一、正式な設置が出来なくても(「設置させない」と言うような人が市長になったら、日南の未来は明るくない)、個人として、スギダラの一員として、このチームは続くだろう。
特に、平成21年度からが本格展開となる商品開発は、合併後も強力に推し進めたい。内田洋行、ナグモデザイン事務所と日南市との、共同開発の関係を続けさせていただきたい。
これからは、切り開いた突破口(苦労して強引に切り開いたのではなく、ごく自然な流れで開かれた入り口)から、前へ進んでいく時だ。市内向けにも全国にも、発信して仲間を広げていく時期だ。

 
 
月一で油津の夜に深まる絆
   
 

●日南らしく、にちなんにちなんで

 

日南には日南らしいモノがたくさんある。日南で何十年も育った飫肥杉、飫肥城や堀川運河や赤レンガ館などの歴史的施設、それに、気候や風土や風景、食べ物・飲み物、歴史や文化。そして人。地元のボクらは、それらがあるのは当たり前で、ごく自然に、悪く言えばそれらの良さに気付かずに、さらに悪く言えばそれらを悲観的に、その中で暮らしてきたような気もする。
近年、日南市は様々な賞をいただいた。油津の港町は「未来に残したい漁業漁村の歴史文化百選」、飫肥城は「日本100名城」、そして市が「優秀観光地づくり賞(金賞・総務大臣賞)」など他にもある。当たり前にあった資源・個性が評価され、ようやくその価値に気付き、活かそうとする動きも増えてきた。
これまでは、日南らしいモノたちが、日南の生活に息づいていなかった。これからは、地域の豊富なモノを使って「コト」をおこし、さらに地域に磨きをかけ、輝かせていかなければならない。

 
 
試作中の飫肥杉ヤタイで交流会
   
 

●史上最大のスギイベント

 

じゃあ、どんな「コト」をおこすのか?
今年は、杉コレが初めて日南で開催されることになり、ちょうど飫肥杉商品発表の年と重なった。これまで進められてきた油津のまちづくり活動や、堀川運河・夢見橋の整備、油津堀川まつりなどと、ボクらが進めてきた商品開発とが、当然そうなる予定であったかのように絡み合い融合していく。させていく。杉の「繋ぐ力」に助けを借りて、モノ・場所・人を繋げて「コト」をおこすのだ。
スギを通じて生活のさま、生きざまが見えるまちへ。まちづくりから、製品開発までの一貫した活動。それが「日南飫肥スギ大作戦」だ。2009年秋、史上最大のスギイベントが開催されるのである。日南のまちを飫肥スギダラケにすることで、まちのあちこちを杉のモノダラケにすることで、人ダラケに。

秋の本番に向け、今年は怒涛の波状攻撃を仕掛ける計画だ。日南には、会場となる空間や、モノをつくる力、歴史はあると思うが、やる気、熱意、センス、見せる力といったところが未知数だし、チームワーク・総合力・ネットワークといったところは、まだまだパワーアップが必要だ。ぜひスギダラの皆さんのお力を借りたいし、北部九州の「杉+」での財産を分けていただきたい。
自分たちの知らない力を知るためにも、波状攻撃の過程でそれらの力を鍛えていくためにも、挑戦する価値が充分ある。先日のデザインセミナー・試作品発表を皮切りに、今後の予定は、杉コレ募集+堀川運河PR、市役所玄関ホール飫肥杉化、まちづくりフォーラム+試作品使用実験、市役所内家具の飫肥杉化、杉コレ一次審査、杉コレ現物製作、飫肥杉新商品発表会・・・・・と続ける。

そして11月07-08日(土-日)の、史上最大のスギイベント(3つの大イベント)に向かうのだ。油津堀川まつりと、杉コレに、商品大発表会を加えて。第14回目となる油津堀川まつりでは、音楽祭やチョロ船体験乗船、弁甲筏流しなど。杉コレクションは、日向、宮崎、都城、日向と周り、第5回目にしてやっと日南に来る。これまでの審査方法とはちょっと違い、堀川運河沿いに作品を展示して、運河沿いを歩きながらの審査となるかもしれない。飫肥杉商品の発表は、出来れば市内の複数の場所で、同時多発的にやりたい。飫肥城址内や赤レンガ館、日南海岸など、日南らしい空間を活用して。

 
 
堀川夢ひろばに並んだ飫肥杉商品試作品
   
 

●飫肥杉の力を借りて

 

話はずいぶん逸れるが、「ぼくんち」のこと。ただいま設計中。ボクのばあちゃんちがそうであるように、日南の光・雨・風に相応しい家にしたい。ハコとしての家のカタチは、いたってシンプル(立方体か直方体)で良い。外見のカタチなんかではなく、目的・立案・議論・苦悩・過程・達成感・活動・活用・愛着・共生なのである。
ぜんぶ飫肥杉でつくろうとは考えていない。飫肥杉ではない方が良い箇所もあるだろう。飫肥杉の持つ力を借りたい箇所もある。使うべきところに使いたい。できれば最大限使うのではなく、最小限で使いたい。その最小限が、我が家の量的・質的にどのくらいの割合を占めるのか、いまから楽しみでもある。(貯金が無いのが悩ましいが)
ここでも飫肥杉に力を借りて、健康的な住まい、家族の関係を築くのに空間が充実した住まいをつくりたい。人と人を繋ぐ杉の魅力については、ここで語るまでもない。

なぜこんな話をしているのかというと、家は社会の縮図?凝縮版?もっとも身近で大切な社会だと思うから。これから地元でやろうとしている「まちづくり」を、「いえづくり」「家庭づくり」に置き換えてみると分かりやすい。
我が家で、気に入らないトコ・変えたいコト・もうやめたいコトが結構ある。体に良くない資材、物を大切にしない、気に入らなくなったり壊れたりしたらすぐ買い換える、日南らしくない(日南の光・雨・風に相応しくない。先祖代々受け継がれてきた家の機能・仕組みが途絶えつつある)、家族の関係性・協力体制・支え合いといったコトなどだ。
内壁や床の塗装も、家族のチームワークでやろうと思っている。そうすることで、家族の関係・思い出・家を愛する心が見えてくると期待しているし、素敵な家に仕上がると思う。

 
 
飫肥城址内の側溝にある飫肥杉板のフタが、ボクらの未来に続く一本道のよう
 

そう。今年の「飫肥スギ大作戦」で、日南らしさ、にちなんにちなんだ飫肥杉のモノ・コト、人と人との関係、思い出、まち・スギを愛する心、達成感・自信・誇りなどが見えてくると期待している、ということ。
日南のまちや暮らしや風景や商売や人々。飫肥杉の力を借りて、「+杉」して、良い方向へ持っていきたい。
「杉文化とともに蘇生する豊かさ」を願って・・・。

   
   
   
   
  ●<かわの・けんいち> 日南市合併準備室/日南市役所・飫肥杉課
スギダラ宮崎支部・飫肥杉課 広報宣伝担当(オビダラ日記担当)
   
 
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