連載
  スギダラな一生/第20笑 「杉モノ・デザイン展 杉+」
文/ 若杉浩一
  今まで色々な展示会を見てきたが恐らく、お世辞でもなく、身内の評価でもなく一番感動した出来事だった。
 

一度、北部九州支部に人が集まる機会がないか、そう思っていた。あるとき、杉九のブログでスギコダマを見てびっくりした「なんて素朴で素敵なんだ」
そして彼の実家の佇まいに、またまた感動した。暫くして、日向で彼と出会った。これがまた、とても明るくて素敵な人だった。そして、その不思議なというより、杉九の必然性のある繋がりを、一同に見たいと思った。暖めていたスギダラ倶楽部初の展覧会「スギプロダクト展をやろう」そう思わず口から出てしまった。それがこんなにも凄い事になるとは、いや凄い事になるとは思っていたが想像以上だった。正直、言い出しただけの自分が恥ずかしかった。そして暫く言葉も出ないぐらい感動した。こんな中で偉そうに喋れない、そう思った。我々のスギダラ談義なんて霞むぐらい皆が輝いていたのだ。

大変な苦労があったと思う。しかしそのチームの成す力は作品を超え、空間からそして彼ら自身から何も語らずとも伝わる力があった。その空気はとても優しく楽しく、そして勇気を与えてくれるものがあった。
「人間には、生きてる理由があるんだ、その輝く瞬間のためにあるんだ」そんな言葉が聞こえてくるほどだった。おそらく訪れた人たちが皆感じたに違いない。沢山の人たちが楽しそうに過ごしていた、その佇まいを見るだけでも価値があるほどだった。
今まで色々な展示会を見てきたが恐らく、お世辞でもなく、身内の評価でもなく一番感動した出来事だった。心を揺さぶられたのである。
もう、言い出したらきりがない。

数年前、日向の富高小学校の出来事で僕らの人生観が変わったと言っても過言ではない。子供達の真剣で真っ直ぐな起ち望み、そして、関わった沢山の仲間の大きな力、それに押され、助けられ、最後の出来事と素晴らしい作品を目の前にして、皆で感動の涙を流した。人生の中でこれほど前ぶれも何もなく涙があふれる事はなかった。「この時間が過ぎ去って欲しくない」そう思った。恐らく皆がそう思った出来事だった。そして、人と人の繋がり、自分というもの、未来がおぼろげながら見えた感じがした。今はその「感じ」に実直に従っているだけである。
この感覚をずっと大切に活動しているだけである。あのキラキラした瞬間を心に秘め生きているだけである。社会、そして企業は理不尽で、矛盾だらけで、非道である、それに随分流され、諦め、自分に理由をつけ、そして、それを誰かに説いていた気がする。それがこの出来事以来、本当に自由になれた気がした。「このまま素っ裸でいいんだ」そう思った。僕の人生は変わった、とても豊かになった、一人では生きて行けない自信がついた。助けられている、そして生きているという単純なことが、とても大切に感じた。
感動は、こんなにも単純で大切な事を教えてくれる。そう思うと、もっともっと世の中には、宝の山が潜んでいる。

今回の出来事は、また、感動という宝物を与えてもらった。だからキラキラしているのである。宝物それは、関わった皆である。お互いに真剣に、一つの気も許す事なく、助け合い、あの素晴らしい場面をつくった人たち。それこそが感動の源泉なのだろう。
南雲さんが、窓山デザイン会議のあと、こう言っていた「若ちゃん、本当に感動したんだよ、出来事よりも何よりもそういう事をやり遂げた、素晴らしい人たちに。凄いよ、感動したんだよ」そう何回も呟きながら、また酒を飲んでいた。感動する、そして感動させるということは簡単なことではない。そこに苦難を乗り越え、行き着いた魂が存在する。

今年は、凄かった。感動の連続だった。その中で僕は富高小の出来事に続く感動をこの杉モノ・デザイン展で味わった。感謝しても、し足りない。
溝口さんが、とても素敵な文章を書いていた「今後の展開なんてのも、知らない。期待することもない。もう流れができているから、それに乗っていこう。」と、僕もそう思う、この必然性のある仲間、そして感動の中にあるもの、それに乗っていればいい。未来はやがて見えてくる。
来年は、また凄い年になりそうです、ねえ、南雲さん、そして日南のみんな。
さあ、来年も感動するぞ、同感!!
(スーパースター)有馬君、そしてご家族のみなさん、戸高さん、溝口さん、池田さん、(熱血漢)長尾君、そして関わって頂いた皆さん、皆を繋いで、支えてくれた(スーパーOL)佐藤薫さんに感謝して。

   
   
   
   
  ●<わかすぎ・こういち> インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない
活動を行う。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved