連載  
  あきた杉歳時記/第28回
文/写真 菅原香織
  すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
 

いよいよ10月!秋の陣第1弾、窓山再生WS&デザイン会議の開催が近づいてきました。現在参加者からの熱いメッセージが続々と寄せられておりますので、ぜひホームページをご覧くださいませ。特にお近くにお住まいの秋田のみなさまの多数のご参加をお待ちしております。

さて今月のあきた杉歳時記は、この夏の一大イベントだった「スギラボ」について、日記風にお届けしたいと思います。このイベントは、秋田県の森づくり県民提案事業に応募して採択されたもので、秋田公立美術工芸短期大学の学生とともに流した、汗と汗と汗と涙の記録です。

 
 

6/18
今年から始まった公共デザイン分野のSD演習という授業は、2年生の学生たちが地域に様々なデザイン提案を行うものです。この日は、学生の一人が提案した「秋田らしさを演出するもの」いうことで、秋田杉と杉の葉を使った杉のかまくらの模型を製作しました。構造はスター★ドームの構造を使って杉玉と同じように枝を密集させていこうという作戦ですが、なかなか上手くまがらない!そこで「曲げわっぱ」づくりの要領で、木をお湯で柔らかくしてから曲げていったら結構きれいにいきました。模型の材料はヒノキの模型用材料ですが、秋田杉を使って実物大の大きさで、ほんとうに上手くいくかなー?

   
 
 

7/25
美短附属図書館のグループ閲覧室にて、秋田市まちづくり整備室さんや市民活動家のかたなど10名ほどを対象にSD演習の最終プレゼンテーションを行いました。また、この杉かまくらを含む“秋田杉の文化伝承&研究スペース「スギラボ」”の提案が秋田県森づくり県民提案事業に採択され、9月に実際に制作して展示することになりました。

 
  「スギラボ」は子どもから大人までを対象とした移動式のオープンラボ。杉をいろいろなカタチで活用した事例のパネル展示や、アートワークショップなどを通して、秋田杉の産業や工芸文化を学べるオープンスペースです。
 
 

8/29
スギラボの杉玉づくりワークショップを行う会場を設営しました。会場は仲小路にある空き店舗です。壁には住宅用の筋交いを7本並べた、すのこ状のものを立てかけ、後ろからライトを照らしています。それまで天井もなくガランとした空間が杉の香りに満たされてあたたかな空間に大変身しました。この日の作業は学生延べ15人が、朝から夜中の12時まで22時間も頑張って設営しました。

 
 
 

8/30
杉かまくら用の杉の葉を採集のため、森の案内人協議会が主催する森の木こり塾の杉の間伐の現場にお邪魔してたくさんもらってきました。杉は、枝打ちや間伐をして光が十分地面にとどくように手入れをしないと、下の方の葉や根っこの廻りの地盤が弱くなるのです。枝や間伐材は玉切りをして八郎湖の浄化に利用するそうです。

 
 
 

9/3
杉かまくらの材料は市販されている一般的なサイズではありません。そこで地元新屋で天然温泉施設を経営している高松木材の高橋さんに相談して、山から樹齢75年の杉の丸太を伐りだしてきてもらい、長さ5460mm、幅60mm、厚み5mmの柾目の材料を製材していただきました。このような材料の製材には熟練の技が必要で、勤続59年のベテラン工場長の高い技術のおかげで可能になったもの。搬入には18尺の長さがピタッとはいる特注トラックで運んでもらいました。普通は製材後に十分乾燥させてから使うのですが、生木のほうが水分も多く含まれているので、曲げるのにはちょうど良いのです。

沸騰したお湯をかけると、杉の香の蒸気が立ちこめて美味しそうな匂いがしました.木には節があるところや板目の部分だと、途中で折れてしまいますが、まっすぐな柾目のおかげで、きれいに弧を描くことができました。

まず最初に幅木の部分を曲げ、次にドームの部分を曲げてくせをつけてから、模型を見ながら徐々に組み立てていきました。まだ仮組なので、接合部分は大きめのゼムクリップで留めているだけです。特殊な工具ではなく、文房具で作れるのがいいかんじです。

組み立ては美術工芸短期大学の実習棟の前のプラットフォームで作業をしたので、通りすがりの地域の方に励ましていただきました。日もとっぷりと暮れた頃、ようやく骨組みが出来上がりました!スター★ドームの特徴である星形がきれいに出来上がり、みんな満足!

 
 
 
 
 

9/5
早朝から☆の部分に杉の葉っぱを取り付ける作業が始まりました。美短に7時に集合、途中の段階で、トラックで秋田駅東西自由連絡通路ぽぽろーどの東口通路に設置して、杉の葉植栽の仕上げにかかります。通りかかる人が興味深そうに眺めたり、話しかけてきたり、中には差し入れてくれる見ず知らずのおじさんもいたりして、楽しく作業できました。

蒸し暑い中、5人で16時間ぶっ通しの作業を行い、日付が変わる前になんとか完成することができました!杉の香がぽぽろーどに立ちこめ、思い通りの演出ができました。翌日には早速杉かまくらの中に入って楽しむ子どもたちや記念写真を撮る人も。やったね!

 
 
 

9/6
仲小路でのワークショップ会場はぽぽろーどでの杉かまくらの宣伝が功を奏して大盛況。増田町から講師を招いて、本格的な杉玉の作り方を見せていだただきました。

   
 
 

9/7
参加者のみなさんが作った杉玉が天井から吊るされ、まるで空中に浮かんでいるようなインスタレーションアートの出来上がりです。

   
 
 

9/8
7日夜、秋田駅から美短に搬送中、自重と振動で杉かまくらが壊れるという衝撃のハプニングが!!!
みんな精魂込めて作っただけに、ことばもでないほどのショックに打ちのめされていたところ、高橋社長が「もう一度つくろう」とあらたに新品の材料を製材して持ってきてくれました。
就職活動や試験で忙しい2年生に代わり、今度は1年生たちが頑張ってくれました。

 
 
 

9/11
壊れてしまった1号のパーツを上手く使って、何とか学祭までに間に合わすことができました。
みんなよくがんばったね!

   
 
 

9/12
いよいよ今日は美短の学祭にあわせてオープンするスギラボ第2弾の設営です!杉かまくら2号も1号に劣らずきれいに仕上がりました。これから、杉壁と杉縁台、杉ベンチとともに杉が香る空間を作っていきます。

 
   
 
 

9/13
前日は夜遅くまで学生たちが手伝ってくれて、ようやく杉の香る空間ができました。スギラボ in 美短祭のはじまりです。

   
 
 

9/14
天気がよすぎて日差しが傾く午後からが忙しかったスギラボでした。この日はどうしても作りたかった!という方が3時間もかけて大作に挑戦!最後にみんなで記念撮影です。

   
 
  9/16
杉かまくら2号を、新屋温泉の風除室に展示してもらえることになり、御神輿のようにみんなで担いでいきました。住宅街を道幅いっぱいに杉かまくらが通ります。すれ違う車の運転手の人が見入っていました。無事に搬送完了!本当に長い間お疲れさま!
 
   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
 
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