特集"スギダラ秋の陣"vol1 「秋田デザイン会議&WS」

 
窓山再生デザイン会議&ワークショップを開催します
文/写真 菅原香織
 
 
 
   
 

 窓山は秋田県能代市二ツ井町種梅地区の最北端に位置する自然の恵み豊かな小さな集落です。種梅地区は白神産地に連なるブナの原生林を源流とする種梅川添いに開拓された、東西2.6km南北18.0kmと南北に細長い渓谷集落で、地区内には縄文期から平安期にかけての遺跡が数多く残っています。天正4年(1576年)には開拓されていたということですが、梅内以北が本格的に開拓されたのは佐竹公が秋田に遷封された慶長7年(1602年)以降とされています。

 二ツ井町を東西に流れる米代川を挟んで、南側に位置する仁鮒地区は日本三大美林である天然秋田杉の森林による林業を生業としてきましたが、対する北側に位置する種梅地区は、白神山地に連なるブナの原生林を有し、山に生きる里山の暮らしが受け継がれてきました。地域の交流拠点だった旧種梅小学校のそばには、毎年サケが遡上する種梅川が流れ、川遊びや近くの里山での山歩き・山菜採り・野外観察、学習林での杉の保育・学習園の畑作りなど、恵まれた自然環境のもと、子供たちが元気に学ぶ姿でにぎわっていました。いまは親世代が田畑や山の仕事をして、子世代は町に仕事にでているので、日中の種梅地区はひっそりと静まり返っています。

 

 
 

 窓山は、うっそうとした山の中に開かれた平地で、周囲を森で囲まれ隠れ里のような独特な景観と、吹き渡る風、空や星を間近に感じる開放的な場所です。2006年秋、窓山の最後の住人となった野呂長介さん(当時80歳)にインタビューをしたときのこと。こんな山奥で、どうやって子供も育てて暮らしてきたのか訪ねたところ、田んぼと畑の作物、森の山菜やキノコ、川から捕れる魚などの自然の恵みの豊かさのおかげで、食べ物には困ることはなかったとか。山では取れない調味料や衣類などは、町に炭を売りにいって買ってきたり、営林署の仕事をしながら生計を営んできたそうです。また、窓山はマタギが集まる集落で、ここからみんな鉄砲を担いで山に入ったもんだ、と伺いました。水道はなく、山から湧き水を引き、暖房は間伐した杉の薪。高齢になっても、薪を割る手さばきは見事なものでした。

 

  元気に薪割りをしていた頃の野呂さん。
 

 2007年5月に開催した窓山デザインコンテストの授賞式から、早くも1年が過ぎました.全国から寄せられた、窓山再生のためのすばらしいアイデアの数々を、一日も早く実現したいという思いで、できるところから始めようと、10年計画ぐらい?というスローな窓山ペースで活動を続けているところですが、昨秋ついに最後の住人の野呂さんが体調不良のため窓山を去り、住民はゼロとなってしまいました。住民のうち65歳以上の人口比率が50%を超え、社会的共同生活の維持が困難になった集落を限界集落というそうですが、窓山は既に限界を超え消滅寸前と言える状態です。

 近年、グリーンツーリズム、エコ・ツーリズムなど、農山村の文化と景観を資源とした観光が注目されています。秋田県でも農山村の活性化のために、様々な試みが行われています。峠から俯瞰したときに目立つ屋根の色を同じ色に塗り替え、良好な景観を作り出すことによって観光資源に結びつけようという試みや、廃校となった小学校を自然体験ができる施設に再生しようという試み、農家民宿の運営によって地域を活性化しようという試みなど、地域の資源を活かした持続可能な地域づくりが注目されています。

 そこでこの秋、窓山の再生を願う会が中心となって、窓山でデザイン会議とワークショップを開催することにしました。世代や領域を超え、地域の人々・学生・専門家・都市の人と地域の人たちの交流を通じて、窓山再生へのロードマップを一緒に考えてみませんか。そして窓山再生をきっかけとして、窓山のみならず日本全国の地方の置かれた問題として、持続可能な農山村の姿とデザインの可能性についてディスカッションしていただきたいと思います。

 概要は以下の通りです。詳しい開催要項は後ほど北のスギダラ窓山ホームページでご紹介しますのでぜひみなさん、窓山においでください。心からお待ちしております。

   
 

窓山再生デザイン会議&ワークショップ

2008.10.11-13



★ 10月11日(土) 13時〜22時 ★ 
 窓山探検、おこぜの組み立て、交流会(穴堀り、トイレ等の設置)

★ 10月12日(日) 9時〜17時 ★
 おこぜまつり実施
デザイン会議、パネルディスカッション、デザイン会議総括、反省会

★ 10月13日(月) 9時〜16時 ★
 白神山地体験ツアー

  写真は窓山の沼のジュンサイ
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
   
 
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