宮崎の森はやわらかい表情をしている―――。
宮崎空港から審査会場のある都城市に向かうバスのなかで、そのことに気づいた。十月の日差しのなかで、包みこむような緑に森は輝いていた。
審査会場に着くと、にぎやかな笑い声が聞こえる。そのまんなかに僕たちの作品、『Simabandha -Prevention
against evil-』があった。周囲直径三十メートルぐらいの範囲が立ち入り禁止になっている。会場全体にたいしてかなりの面積だ。とんでもないものをつくってしまったのかな―――、と我ながら思った。(実は作品の制作にあたって、主催者側から要請もあり、危険防止などの問題からサイズ縮小を余儀なくされていたのだが。)
ところが、よく見渡すと他の作品もとんでもないものばかりではないか。杉のかたまりを削りだした鍾乳洞のような作品、ブロックの積み上げられた作品、鉛筆を並べたような椅子―――、それぞれが違ったエネルギーを放っている。そして、それに負けず劣らず審査委員、宮崎県木青連の方たちもエネルギッシュだ。かたわらでは子供たちが大きな木槌を振り上げて、小屋を組み立てている。地方の停滞が報じられる最近だが、とんでもない。ここにはありあまるエネルギーが溢れていた。そして、杉の可能性も。
結果的に、僕たちの作品は賞をもらうことはできなかった。しかし、多くの地元市民の人々が票を入れてくれたこと、それが何よりもうれしかった。
帰りの電車のなかから見えた宮崎の森はやはりやさしかった。審査会場での子供たちの笑顔や、溢れるような活気を思い出した。それらはどこかでつながっているのだろう、そう思いながら僕は宮崎をあとにした。
文/そだ・しゅん
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