特集 杉コレ in 都城

 
作品名「杉小立」優秀賞受賞
文・写真/寺田尚樹

「m3」を「m2」に読み替えてやる! 「m3」に挑発されて、杉のしなやかさに挑戦

 
 

コンペのタイトルは? 「こりゃスギェ〜!」
>うーん、笑えません。オヤジギャグ?
審査員は? 審査委員長:内藤廣、審査委員:南雲勝志・・・
>うーん、濃い〜です。
賞金は?
>なし。え〜、旅行クーポン。

正直言って全く食指が動きませんでした。無理です。普通に考えたら絶対やりません。このコンペ。
一次審査に通ったら宮崎まで行かなきゃならないし、一等賞もらっても赤字必至です。
楽しそうな審査員の面々ですが、なんだかつかみ所がありませんし。
でも、もう少し読み進めて行くと、

「実物製作のために1作品10m3以内の杉材を用意しています。」

という不可解な言葉が……、これにやられてしまいました。
建築やインテリアのコンペで「m2」の指定はよくありますが、「m3」という単位での指定はついぞ見たことがありません。
でも、よく考えてみると空間の提案をするのに「m2」というのもなんだか不自然。それから、空間を考えるデザイナーが「m3」を常に定量的に捉えているかというと多分そうじゃない。だから「m2」で事が足りてしまう。平面的なプランニングは学校でもきっちり教えてくれるけれど、高さ方向の押さえ方はあんまり教えてくれないし、そこがわかっているのがあたりまえだけどホントのプロ。

だからコンペの要項に「m3」とあったのには、なにか挑発/挑戦めいたものを感じました(多分、ボクが勝手に感じてるだけだと思うけど……)。

勝手に挑発されていると思って息巻いてしまう……、ボクの悪い癖です。こんな気持ちでデザインしていいのかって思う事もあるけど、コンペだし、「売られた喧嘩は買わなきゃ漢がすたる」と「m3」の文字を見て感じてしまいました。

この時点でもうコンペのクライアントは審査員でも、主催者でもありません。
クライアントはこのオレ様です。

「じゃあ、10m3の杉でどこまで広い面積を覆えるかやってやろうじゃないか! 
 逆に『m3』を『m2』に読み替えてやる!!」

というのが、今回の作品「杉木立」のメインコンセプト。
今思うと本当にあまのじゃくです。
それからサブテーマを「杉の力強さ、しなやかさを表現しよう」と思いました。
これは第2回のコンペで第一次審査を通過するも賞がもらえなかったので、その悔しさから意地を張って前回とおんなじテーマ。
自分がクライアントなので、アイデアはすらすらと簡単に出てきました。

 
そして考えたのがこれです。

杉の角材をたくさん立てて、 アタマを4本ずつ縛ると美し いアーチの連続した空間が出 来上がります。

こうすると 45m×45m=2025m2の空間が 10m3の杉のカタマリから作ることができます。 (画像1、2、3)
 

 


 
画像1
  鉄結

 

画像2

  鉄結

 

画像3

 

出来上がった原寸のモックアップは太陽の光を浴びて美しい影が伸び、ドーム状にしなった杉の角材の緊張感は想像以上でした。
ホントはもっといっぱい作って欲しかったけど……、だってこれじゃあ0.5m3ぐらいしか使ってないよぉ。(画像4、5)
でも杉の曲げ強度など未知数の部分を検証しながらカタチにしてくださった関係者の方々には感謝の言葉もありません。本当にお世話になりました。
実際作ってみて、検討しなければいけない部分も見えて来たので、改良を加え商品化させたいと妄想しています。(内藤さん、南雲さん、相談に乗ってください!)

 

鉄結
 

画像4

  鉄結
 

画像5

 

それから、共同製作者であるテラダデザインのメンバーをここで紹介させてください。
勝間田慎也、平手健一、籠利貴大、高田あゆみ、岡村直紀、石井龍雄(敬称略)
みんな、良かったね。打ち上げやってなくてゴメン。

次回もやるぞ〜!!

 

鉄結
  画像杉木立の前でプレゼンに望む筆者。後方には内藤審査委員長が見える。
 



 

●<てらだ・なおき> 建築家/デザイナー
AA School 修了 いちごゼリーが大好き
http://www.teradadesign.com

 


   
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