新企画

 

スギダラな一生/第4笑

文/ 若杉浩一
 
 
 

デザインって何だろう?

今回は、6月の14日から17日まで開催された「HAPPI TOKYO SATATION」のお話をしたい。HAPPI(http://www.happi8.jp)は8人のデザイナーによる活動で、仕事とは離れ社会的活動をデザインで行いたいと言う活動を志している仲間である。今回2回目の発表会、結成から4年ぐらい経つ。今回は、南雲親分に急指名を受け僕がディレクターになった。しかし企画から発表までなんと2年もの歳月がかかってしまった。ほんと、長かった。僕が設定した、今回のテーマは「結びのデザイン」である。ちょうどスギダラ倶楽部を立ち上げ、日向富高小学校の出来事の後だったので、デザインする事よりも、デザインを通じて新しいつながりや、出来事が起こり、信頼が生まれ、そして絆が出来て行く。そして出来上がったモノと同時に感動が生まれて行くプロセスを体験し、これを8人のデザイナーそして僕たちのチームのように企業を巻き込んで体感したいと思ったのであった。南雲親分や宮崎の人達から教えてもらった事を、自分でも実践しようと思ったのだ。スギダラは「スギをつまみに」人が集まる。今回は「ITをつまみに」人を集めたいと思った。僕の会社もITと空間デザインをやっているので、僕の仲間の企業3社に声をかけた。技術、人材、そして最高の仲間がそれぞれの企業にいる。仲間と仲間だ、申し分ない。富高小学校のように必然性を感じたのだ。絶対うまくいくそう思った。

そして、2人のデザイナーと企業が組んで4つのチームを結成した。出来るだけ距離感があるメンバー構成にした。なぜなら違いがある事が、新しいモノを生み出す可能性を持っているからだ。力のあるデザイナーに力のある企業、その成果を想像するとワクワクした。しかし現実はそう簡単ではなかった。チームの動きやノリの違いが現れ始めた。うまくノリがつかめないチームは、どうも真面目で会話が盛り上がらない、そして、だんだん集まらなくなって行く。どんどんノリが悪くなる「取りあえず、飲み会でもいいから集まろう!!」そうけしかけたのだが、なかなか、盛り上がらない。集まる事にエネルギーを要するようになってしまった。楽しくないのだ。一方の荒くれ、いい加減チームは、打ち合わせはそこそこに、よく飲む。毎回がイベント、ひどい時は4回戦まである。こちらは、飲みにエネルギーを使う。そして急に役割を仰せ付けられる。次回に集まる理由が必要なのだ。それをネタにまた集まる。もうどっちが主題なのか解らなくなる。しかも同じ場面だと退屈するので、よく現場や、仲間のところに場面を変えるのだ。その場の主役を変えて行くのである。この他人任せ、人に委ねる、という活動。そう「モクネットの加藤力」(20号のスギダラな一生/第1章を参照してください。)が必要なのだ。しかし真面目チームはなかなかできない。自分の力で、明確になってから、考えてから、自分で作ってからしか委ねられない。だから会う回数も少ないし、もう固まっているから、互いを受け入れる幅が少ない。そのうち、仲間どうしのキャラやテーマの問題にまで発展するようになってしまった。しかし、こんなことがあってもいいのである。それでも、コンチクショウで喧嘩が起きたり、ガチガチに固まりながらも走ってみれば。何かにぶちあたる。それにより新しい関係性が生まれるチャンスがある。「結びのデザイン」のアウトプットの大きな一つは絆と感動である。それが伝えられればいい。

違いを乗り越えて、さらけ出して、バカをいって、盛り上り、そして真実に接近できるかどうか?「え〜〜い、いっちまえ〜〜コンチクショウ!!どうにでもしてくれ」から始まる。そのちょっとの障壁を超えられるかどうかが問われる。そのあとはみんなプロである、どうにでもなる、心配御無用!!

しかし、なかなかそううまくは行かなかった。そして、それに2年の大半を費やしてしまった。各チームを巡って、色々な出来事があった。そして2年間の集大成の4日がやってきた。4チームがそれぞれの発表を行ない、それぞれの個性を、悪戦苦闘の歴史を発表した。そうなのである、そう簡単ではない。「結ばれる」ことってかんたんではないのだ。だから面白い。だから感動と絆が生まれるのだ。そして僕らはその中で、デザインという素敵な表現手法を身につけている。重要な役割だ。レベルの差はあれ様々な評価があるが、ゴールに到達し、多くの一般に方々に成果を見てもらうことが出来た。それぞれの中に結びの喜びが芽生えればいいと思う。

我々は、多くの人たちの支えの上でデザインを行っている。企画を生みだし、資金を調達し、仲間を集める。実は、デザインはその中でほんの僅かの一部である。だからダメなんじゃない、新しいものには、この価値を生み出す新しいチームが必要で、その仲間をどのように作ることが出来るかが問われる。デザイナーである前に新しい価値に向かってともに歩む仲間としての裸の人が問われる。その中で、自分の役割を見つけることが重要だ。誰一人だって欠かせない、主役なのである。

今回のテーマのネタ「IT」。よくわかりにくい言葉だが、世の中に蔓延していく最先端の技術であることには違いない。しかしその技術は生活を豊かに変える可能性をも持っている。関わり合いを変える力を持っている。便利、簡単だけではなく、あえて手の届いていない場所や置き去りにした場所とつながることが出来る、皆で考えるに値する魅力のある技術であると思う。
展覧会の最中、この発表会は、これでよかったのだろうか?どのように伝わったのだろうか、不安だった。展覧会の会場で、通りすがりのお母さんにお話をしていたら目を輝かせながら「デザインってなんて素敵なお仕事なんでしょう、形や色だけを作っているのかと思ってました」と言われた。とてもびっくりした。それから、普通の人、デザインとはなんら関係のない人たちとたくさんのお話をした。僕と千代田はこの喜びからは離れられずに会期中ずっと会場にいた。僕たちこそ一番の喜びを味わったのかもしれない。

自分の立ち位置をちょっと換え、全体を見る、僕らの出来ることなんかちっぽけである、裸の大将である。だけど重要な一人でもある。今を歩み未来を紡ぐ「縦糸と横糸」「結びのデザイン」はまだまだ続く。
スギをつまみに感動を、そしてITをつまみにまた感動。スギダラはもはやスギダラではない。どこまで広がって行くんだろう?これだからやめられない。

   
 
  happi Tokyo station 会場風景
 
  インフォメーションコーナーはスギダラケです
 
  南雲親分とJR東日本とのコラボ、無人駅を結ぶ「鉄結」チーム
 
  日立製作所「NATURAL」 インタラクションテーブル
 
  日本サムスンチーム「PAUSE」 記憶媒体を格納する箱
 
  内田洋行「コドモトモ」チーム 会社で子供と学ぼう「企業内寺子屋」の提案
 
  説明に頑張る親分
   
  久留里線に設置された「IT案山子」デザイン南雲勝志これ以降南雲勝志は自らを南雲KAKASHIと自称する   こちらも頑張るスギダラ兄弟
   
   
   
   
   
 
  ●<わかすぎ・こういち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない
活動を行う。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長




   
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