連載

 
『東京の杉を考える』/第11話

文/ 萩原 修

あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 
 
 

木と生きる物語

 最近、武蔵野や多摩といった東京の郊外での活動を意識しておこなうようにしている。住んでいる三鷹や実家のある国立の近くで仕事をつくって、東京23区に出稼ぎに行かなくてもいい暮らしができたらいいなあと考えている。

 多摩市ではじまった、グリーンフォーラム「木と生活のデザイン」という3回連続の講座のコーディネートをひきうけたのも、そんな気持ちが強かったからだ。このフォーラムは、「花と緑がもっと身近にある暮らし」をビジョンにかかげ、2年前に多摩センターに移転してきたグリーン・ワイズという会社が主催しているもの。

 この会社は地域に根ざした事業をめざし、地域で活動する人とのネットワークを少しずつでも築いていきたいと考えているようだ。郊外や地方だからと、こんなものでいいやとあきらめるのではなくて、地域ならではの力を発揮して、東京23区に負けない活動や環境か育っていったらうれしい。人の流れを変えるぐらいの魅力が生まれることを期待したいと思う。

 3月10日におこなわれた第1回は、家具デザイナーの小泉 誠さんに話をしてもらった。年輪の話からはじまって、針葉樹や広葉樹の話があり、杉のことも話題にあがった。小泉さんは、とにかく木が好きなデザイナー。もともとは、木工の家具職人になりたかったという。デザインした空間や道具の実例から、木に対する深い思いが伝わってきた。

 どうやら、小泉さんは、木を単なるひとつの素材をとらえるのではなく、いっしょに生きる仲間みたいに感じているのではないかと思った。「木と生きる物語」という言葉が頭に浮んだ。木が生きる時間と人間が生きる時間を、どうやって関連づけていくのか。短期的な経済優先だけではとけない林業のむずかしさを、長期的な物語をつくることで楽しい方向に向かうことができたらいいなあ。

  グリーンフォーラム「木と生活のデザイン」の第2回は、5月。八王子を拠点に活躍する庭好き、古いもの好きな建築家の戸田晃さんの話を聞く。そして、最後を飾る8月の3回目は、われらスギダラの大親分、南雲勝志さんが登場する。どうせなら、スギダラトーキョーとしても連動して、もりあげていきたい。


 
 
 

●<はぎわら・しゅう> 9坪ハウス/スミレアオイハウス住人。

 



   
  Copyright(C) 2005 Gekkan sugi All Rights Reserved