特集吉野

 
「吉野杉でゴミステーションをつくる」の巻
文/ 狩野 新
 
 

 
 

 2005年の夏、宝塚の、とある住宅街のゴミステーション(ゴミ置き場)で、カラスの被害がすごいので、何か防止できるものを作ってもらえませんか?と、付近の奥様から依頼がありました。
 これまで一度も依頼された事のない、「ゴミステーション」+「カラス」の組み合わせを、どう料理しよう…と考えた時、屋外なので雨に強い材をいろいろ思いうかべましたが、スギダラのメンバーになってからというもの、「杉」を使うことにかなりの「おもしろさ」をおぼえ始めた今日この頃、この依頼も「杉」で料理してみよう!とレシピを考えてみました。

   まず、その場所に設置してもよいのか確認した上で、吉野杉の一等材(節ありの建築構造材)を使用することにしました。一般に高級と思われがちな吉野杉も節あり材であれば、安価です。角材を横に並べて鳥かごのように囲った箱を作り、ゴミを出し入れする部分は引戸にしてみました。中の掃除もしやすいように、人が中腰で3人程入れる空間です。
 実際にそのゴミステーションを使用されている9名程の奥様方に集まって頂き、了解を得ることができました。
 
      施工前のようす2005年夏。
   
  これは私です。2005年夏   大工になる狩野2
 

 

大工になる狩野3
 

 

完成写真です2005年夏、1年後下の隙間からカラスにやられました・・・
 

 製作は、丁度ものすごく暑いさなかで、近所の人々は、その数日間、大汗をかいて、ゴミ置き場の杉の箱の中にドライバーを持って入っている僕をさぞ警戒して眺めていたに違いありません。でも中には、好奇心に勝てず、珍しそうに「何作ってはるの?」と話しかけてくる方や、お茶を差し入れしてくれる方、杉の美しさに引き寄せられて、ニオイを確かめていく方もいました。
 完成した後も、ゴミ収集をする方が作業のしやすさから、引戸をはずしてそのままにしてしまう等問題もいろいろでてきましたが、そのつど改造し、住民の方と杉談義をしながら様子を見ています。デザインと機能の重要性を再認識した次第です。
 そんな中、嬉しいことがありました。何かがぶつかったのか、ゴミステーションの柱の一部が欠けてしまった時、その小さな数センチ程の杉のかけらを拾って大切に預かって下さった方がおられたことです。おかげで、無事に補修することができました。他にも、ゴミの収集時に杉の引戸を丁寧に扱ってほしいと、市にお願いして下さった方もおられたようです。

 こんなに愛していただける「杉」の魅力をこれからも関西から全国へと発信していきたいし、また、この杉パワーをどんな風に維持していくかを課題にしたいです。 

 今後もスギダラ関西、もとい「スギやねん、関西」をよろ杉お願い致します。

 

   
上:夕方の風景
右:住めるかも内部空間

 


 

● つい最近メンテしました。
   
  再塗装とレールの付け替えを行ないました 2007年2月  
   

 

再塗装をして、引戸を外しにくいレールに付け替え、カラスよけを下に追加しました。2007年2月。

 

 

●<かのう・しん> デザイナー:一級建築士事務所 狩野新アトリエ 代表
趣味・・・魚釣り、ピアノ、旅行、ドライブ、バーベキュー大会、写真
特技・・・オムレツを美しく焼き上げる事、ホットケーキを美しく焼き上げること

 
 
   
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