特集宮崎

 
飫肥杉大作戦その1計画秘話   特別おまけオビータ誕生秘話/蒔田有美子
文・写真/河野健一
 
 
 

 秘話というほど秘話ではない。
 でも、こんな展開になるとは、コレッポッチも考えていなかった。
 飫肥杉ダラケのまちづくり「飫肥杉を使おうよ。」が動き出したキッカケ話を紹介したい。

 昨年の12月、東京ビッグサイトで開催された「エコプロダクツ2006」に飫肥杉が出展した。
さすが、昨年が8回目となる国内最大級の環境展示会だけあって、大企業からNPO、官公庁まで出展分野は幅広く、家電や情報通新機器、自動車、住宅、エネルギーなどの豪華で派手なブースに驚いた。
開催期間中3日間の来場者数は、152,966人。1日平均で約51,000人。これは、日南市の人口約44,000人よりも、かなり多い。
今回の出展者は、財団法人宮崎県南地域新地場産業創出センター。 宮崎県南部の2市2町(日南市、串間市、北郷町、南郷町)の行政や商工団体等で設立した法人で、設置の目的は、その名のとおり新しい地場産業を創り出そうということだが、どちらかと言えば地場産業の振興といった事業を行っている。

 

 ボクは、平成17年12月に商工観光課へ異動になった。 前職での事業がほぼ終了したため、12月という異例の時期(市役所はほとんど4月異動で、10月にも少し動く。)での異動だった。
そして、財団法人の事務局担当になった。
毎年度、経済産業省の補助事業を使って、販路開拓、新商品開発、人材育成といった事業を行っていた。毎年2月頃に、補助事業の公募があり、事業計画書を作成し、九州経済産業局に提出する。 自己資金が乏しいこの法人では、補助金がないと事業ができなくなってしまう。
 「産地等地域活性化支援事業費補助金補助事業計画書」というものを初めて作ってみた。
その事業のメニューの一つ「地場産品等販路開拓等支援事業」で、北九州市で開催される「西日本トータルリビングショー」に飫肥杉製品を出展しようと考えた。
・なぜ、販路開拓の事業に「飫肥杉」を選んだのか・・・。
・それは、この辺には飫肥杉がイッパイあるから。余っているっぽいから。
飫肥杉の歴史や特徴、地元での使われ方、どんな評価を受けているか、価格の状況など、何にも分かっていなかった。たくさんある飫肥杉を大都市に売り込もう!ぐらいの考えだった。

 そして、運命の3月13日に最大の転機が訪れた。素晴らしい出会いだった。
一応作った自信のない事業計画書を持って、宮崎県産業支援財団に相談に行った。飫肥杉製品のデザイン改良や、展示会出展の企画を専門家にお願いしたかったので、プロを紹介して欲しくて行ったのだが、期待していたアドバイスがもらえなかった。
その建物のロビーで困り果てていたボクの目に、「デザイン」という文字が入ってきた。
受付で事情を説明して待っていると、宮崎県工業技術センター機会電子・デザイン部の鳥田さんが出てこられた。そう。素晴らしい出会い。

 初対面なのに、何の約束もしていないのに、鳥田さんにたくさんの時間をいただいた。飫肥杉について、展示会への出展について、そしてスギダラについて。たくさんの初耳話に、一生懸命メモを取った。
 「九州では、杉はありふれているので、北九州の展示会ではなく、ターゲットは東京に」
 「リビングショーはどちらかといえば建築資材など住宅中心なので、ギフトショーやエコプロダクツ展が良い」
ここで、エコプロダクツ2006に出展することが決まった。
さらに、強力な助っ人をご紹介いただいた。ちょうど、直前の2月17日に、宮崎県工業技術センター主催の「2006デザイン&ビジネスフォーラムin宮崎」でスギダラの皆さんによる「杉とゆく懐かしい未来」の講演があった後だったらしい。

 まずは、出展アドバイザー。情報量も多く、ネットワークもあるので、情報誌やジャーナル関係者が良いと言われ、内田みえさんを推薦していただいた。
 内田さんは、おめでたい事情のため、8月に急きょ参加できなくなり、石田紀佳さんを推薦していただいた。
 そして、デザイナー。4人ほどご紹介いただいた。その方々のされてきたこと等を調べ、宮崎県内での取組やスギダラの考え方などから、南雲勝志さんにお願いしたいと思った。

 今回のエコプロダクツ2006出展は、この強力な助っ人に大変お世話になった。地元の作り手さんには、「あの方々から褒められると自信になる。そのためにも頑張る。」とか、「指摘があると応えたくなる。」とかいう声が聞こえた。(ボクなんかは、「優しい顔して次から次に・・・。」と思ったこともあった(スミマセン)が、本物のために妥協しないことを学んだ。)

 出展までに、7回の出展準備会やメンバー個別との打ち合わせを何度も何度も重ね、アッという間にエコプロ本番を迎えた。設営や運営、搬出などでは、たくさんのスギダラの方々にお手伝いいただいた。なぜ、ここまでしていただけるのだろう?と思うくらいに。地元メンバー一同、ものすごく感謝している。

みんなで南雲さんの話を聞いた(7月)
地元・池田会長と南雲さんの固い握手(7月)
    真剣な議論を重ね合わせてきたメンバー(9月)
 
 
試作品チェックや展示リハ(11月
)
   私たちの飫肥杉ブースは、大企業のような豪華さや派手さはなかったが、飫肥杉らしい展示ができたと思う。コンパニオンのお姉さんには負けるが、ボクもアロハシャツで南国チックに参加した。

 
 
飫肥杉上京大作戦その1はエコプロ展示

 

 エコプロダクツ展では、その飫肥杉ブースに来ていただいた方々のうち、約150人もの方にアンケートにご協力いただいた。香りや肌触り、ぬくもり、木目など、大好評だった。その中から、主なお答えをご紹介させていただく。

 

1.あなたの杉に対するイメージはどんなものですか?
なつかしい、まっすぐ、良い香り、昔から身近な木、花粉症、経済林、やわらかい、ぬくもり、美しい、ゆったり、偉大、丈夫、やさしい、大きい、力強い、心地よい、落ち着く、清潔、自然の恵み、いやし、高価、生命、さわやか、など

2.展示をご覧になり、飫肥杉に対してどんな感想を持たれましたか?
日本の風土によく合っている、もったいない、大切にして欲しい、家具に最適、長く使いたい、木目がきれい、めずらしい、味がある、用途が多い、こんな木の家に住みたい、子どもに伝えたい、すべすべしている、やわらかい、いい香り、など

3.あなたは、生活の中のどんなシーンで、飫肥杉製品を使いたいと思いますか?
子どもの生活用品、家、食器、文具、椅子、手に触れるモノ、家の柱、アロマオイル、風呂、机、くつろぐ空間、お盆、食卓、リビング、ウッドデッキ、おもちゃ、一生使う家具、至る所、門、床、壁、部屋のあちこち、階段、キッチン、など

4.プレゼントした飫肥杉の端材を、何に使おうと思いますか?
小物入れ、ペン立て、子どものおもちゃ、インテリア、リフレッシュの香り、写真立て、キーホルダー、結構する友人へのプレゼント、積み木、入浴、ぶんちん、顔を描く、コップ、コースター、アロマ、芳香剤、いやし、枕元の香り、など


 今回の出展は、地元のかつてのヒーロー飫肥杉を見つめ直す、いいキッカケとなった。地元メンバーも東京での反応や評価、そして実際に来場者と飫肥杉について語り合ったことで、飫肥杉を再認識し、その良さを思い出した。

「飫肥杉ダラケのまちづくり」は、まだ動き始めたばかりの事業だが、飫肥杉を生産するだけでなく、自分たちの生活の中でもうまく使っていき、地元にとって飫肥杉を「なくてはならない存在」に持っていきたいと考える。
「日南の全部の家に、飫肥杉のモノがありますよ!」という感じに、東京などの展示会で売り込めるようになりたい…。
まちなかでも、日南市油津の堀川運河ではベンチやボードデッキ、そして素晴らしい木橋(H19完成予定)など、そして、飫肥城下町の多くの由緒施設など、今も昔もたくさんの飫肥杉が使われている。
大人も子どもも「飫肥杉」に自信と誇りを持って、それが「ふるさと」に対する自信と誇りになって、オビスギダラケの元気なまちに再生されていくことを強く強く願ってやまない。

 

 地元の若手製作者が言った。
「今まで飫肥杉はキライだった、扱いにくいと思っていた。でも、飫肥杉が好きになった。」
ボクたち地元の、出展前と後の違いは、この言葉に集約されていると思う。この気づきを、これからいかに地元に広げていけるか。今年はさらにスギダラケな一年になりそうだ。
今回の出展前後には、地元からたくさんの応援・声援をいただいた。心強い。まだまだ小さい輪を少しずつ広げていきたい。飫肥杉がその年輪を幾重にも増やし育っていくように。

 今年は、スギダラ全国大会in日南(略してオビダラ?)も企画されていると聞く。
H14年度から取り組まれてきた日南の油津まちづくりでは、港町としても歴史・文化と、飫肥杉という地域素材、そして市民参加による景観づくりなどのプロジェクトが展開されている。
堀川運河沿いには、飫肥杉のボードデッキもすでに完成している。そして、今年の夏頃には、木橋やシンボル緑地も完成し、第1期整備が全貌を現そうとしている。
夏に、南国の飫肥杉ボードデッキの上で、全国のスギダラは方々とキンキンに冷えた生ビールで「乾杯!」といきたいものだ。考えるとニヤけてしまう。

 上司にお願いしてみた。「来年度は、飫肥杉の仕事だけに全力投球させてください!」
 「せっかく飫肥杉を使っていくキッカケをつくったのだから、来年度もガンバレ! 飫肥杉以外の仕事は少し周りに振り分けるから。」
 どうやら飫肥杉一本という訳にはいかないらしいが、応援してもらっているらしい。

 ガンバろう!

   
  オビータくんもエコプロ参加。→特別おまけページへ。
  エコプロダクツ2006記念撮影 搬入日
 
 
エコプロダクツ2006記念撮影2関係者一同みんないい顔しています!
 
 
  <かわの・けんいち> 日南市商工観光課 (財)宮崎県南地域新地場産業創出センター事務局

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