連載

 
『東京の杉を考える』/第8話
文/  萩原 修
あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。半年の連載スタートです。
 
 
 

地方と東京をつなぐ

   「日本全国スギダラケ倶楽部に入っている」と言ったら笑われた。「月間杉に文章書いている」と言ったら、「やばくないの、それ?」と言われた。そんなにおかしいかなあ。なんだか最近、世間の感覚とずれていく自分を感じている。まわりに建築家やデザイナーばかりいるせいなのかもしれない。まわりの人がいいと思えるものと、一般の人がいいと思えるものの差を感じている。なんとかしなきゃあと思う。何をどうすればいいのかよくわからない。

 スギダラの活動が、どんな人とどんな価値観を共有できるのか。それは、まだまだわからない。わからないけど、建築家やデザイナーばかりでない広がりを感じている。日本にしかない杉を通じて、いろんな人がつながっていく。そこにスギダラの面白さがあるんだろうと思う。植林使われない杉をどう活用しようかという課題はある。杉の魅力を多くの人に感じてもらおうという試みもある。しかし、結局、それは、手段でしかないのかもしれない。

 全国の杉の情報を東京に集めること。集めるだけじゃなくて、広め、深め、人と人のつながりを強くつくっていくこと。これって、かなり難しい。でも、やりがいはあると思う。そんなことを考えながら、神田で少しずつ打ち合わせをはじめている。神田を拠点に全国のまちづくりのコンサルティングを仕事にしているTさん、鳥取出身の建築家のOさん、そして、その事務所のスタッフKさんの4人が集まって、話をして、飲んだ。

 まずは、鳥取の杉を使った屋台をつくって、神田に置いてみようということになった。Oさんがつきあいのある鳥取の智頭町の材木会社や、東京の工務店、そして、地元神田を少しずつ巻き込みながら、進めていくことにしようという話になった。智頭町の杉は、節が少なく、ねばりがあり、われにくいらしい。杉の縦型ブラインドを商品化して、注目されている。
鳥取の杉ならではの屋台ができるとおもしろい。

 屋台だけつくってもしかたがないので、その活用方法もいっしょに考えていきたい。屋台には、鳥取の隠れた銘品を並べてみたい。すでに、その候補はあると言う。どうせなら、東京にいる鳥取出身の人たちを巻き込むと、おもしろい動きになるんじゃないかと思う。でも、鳥取出身なら誰でもいいわけじゃないので、そこのところは、偶然を期待するしかないんだろうなあ。

 こうやって考えてみると、東京には、地方からでききた人がたくさんいるわけで、地方と東京をつなぐには、その地方出身の東京在住者をうまく巻き込むことが一番なのかも。結局は想いが深く、いい結果を生むのかもしれない。若杉さんや千代田さんが、あんなに九州に通っているのも九州出身という想いが強いからなのかも。

集まって、話をすることで、いろいろ見えてきます。本当に少しずつだけど、『スギダラトーキョー』の『神田で杉屋台プロジェクト』がすすんでいます。

スミレアオイハウス住人  萩原 修

 

<はぎわら・しゅう> デザインディレクター
1961年東京生まれ。9坪ハウス/スミレアオイハウス住人。つくし文具店店主。
中央線デザイン倶楽部。カンケイデザイン研究所。リビングデザインセンターOZONE を経て 2004年独立。生活のデザインに関連した書籍、展覧会、商品、店舗などの 企画、プロデュースを手がける。日本全国スギダラケ倶楽部 東京支部長。  


   
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