特集北海道

 
私たちの考えるこれからの札幌デザイン
文・写真/冨田汐織
 
 
 

 初めまして。札幌市立高等専門学校4年工業コースの冨田です。
以前セミナーに参加した工業コースメンバーの感想をまとめました。拙い文章ですが、最後まで読んで頂ければ幸いです。

 今回この原稿のお話を頂いたキッカケは、札幌デザイナーズウィークで行われた、内田洋行のショールームのリニューアルオープニングイベントで、南雲さん率いるスギダラ三兄弟、そして川上元美さんとの出逢いからです。そして多くのデザイナーさんとお話をする機会をいたきました。 トークイベントは司会進行の若杉さんのギャグから始まり、アットホームな雰囲気で進まれました。

 川上さんと南雲さんのレクチャーを聞いて必死にメモをとる私たち。
学校では自分たちでデザインしたものを制作し、そのままですが「ものづくり」を学んでいます。今回お二方の話をきいて、ものづくりをする上での考え方の、新しい引き出しを与えてもらいました。 一番印象に残っているのは、デザインをする人と使う人の間にあるのは、その”もの”だということ。「もの」は、人と人とを繋げるコミュニケーションのひとつとなるのです。一方的な想いではなく、どこか相手を想う小さな気遣いが、ひとつのデザインに繋がっていくこと。使う側にプラスの方向に働くようなデザインを提案すること。そんなお話をされたお二人から、デザインするというお仕事の暖かさみたいなものを感じました。

 

 

トークショーの様子。左から若杉浩一さん、南雲勝志さん、川上元美さん、後ろ右が千代田健一さん。

 

 また、このイベントの暖かい雰囲気をつくっていたのは、スクリーンのすぐ隣にあった屋台です。南雲さんがこのイベントのためにデザインされたそうです。私だけでなくみんなも、ギャラリーに入ってまず目に入ったのは、その屋台だったと思います。
木は様々な空間に馴染むのでとても自然なんですが、実際はかなりの存在感があります。家庭にある木材の家具もそうではないでしょうか。木は愛着が湧くし、年数を重ねると味が出てくる。アルミやプラスチックなど様々な素材の製品が世の中に流出している中で、それでも日本人の「木でつくられたもの」に魅力を感じる心は、これからもずっと変わらないと思います。

 

 

トークショーの様子2

 

 そして立食パーティーのとき屋台の下で感じたのは、「屋台」そのもの魅力でした。別に仕切られたわけでもなく逆にオープンなのに、向かい合った人との間に、緩やかな空気が流れるのを感じました。この空間で新しいコミュニケーションが生まれる、これこそ暖かいデザインのひとつだと思います。

 スギダラの活動はすごく地域に密着していて感心します。今回の屋台は杉ではなく、北海道産の松の木を使ってくれました 。 普段スギダラの活動で使う杉。その深刻な問題でも、自分たちが楽しめるような活動に変えていくことは、メンバー全員の堅い意思がないと出来ないことだと思います。あくまでみんなで楽しもう、という雰囲気なのに、活動は中途半端では決してなく、むしろ徐々にたくさんの人を巻き込んで、より大きな動きをみせています。

 そんなメンバーの積極性、ふりまくデザインや楽しさ、いい意味での柔軟性や活気を吸収させてもらいました 。そして私たちが住んでいる札幌を、北海道をもっともっと大切にしなければいけないことに気づかされました。

 

 

立食パーティーでの屋台の雰囲気。ジャガイモはじめ地場の食材が山盛りでした。

   「日本で最も魅力的な市」として1位に選ばれた札幌市は、はたして市外、道外の人達にはどんな目で見られて いるのか。どこが魅力的なのか。普段生活している中で、いきなり客観的にものを考えるのは難しいことですが、私たち札幌市民はその答えを自分たちなりに見いだせているのでしょうか。
そもそも札幌らしさとはなにか。恵まれた環境にいながら、私たちが普段全く意識していなかったことに気づかされました。
ほんの小さなことでもいい、私たちが毎日生活する札幌市を振り返り、そこから感じる「札幌らしさ」から、「札幌らしいデザイン」を展開していくべきです。最初は一人一人の気持ちからだと思います。少しずつでも私たちまわりの意識が高くなり、若い人達にその想いが浸透していけばいいと思います。

 そんな想いに浸っているときに、デザイナーさんたちから、素敵な提案を頂いたんです。
それが、川上さんに名付け親になってもらった、「さっぽろゆきずりの屋台」というイベントです。 まだ正式に決定ではないですが、とりあえず現段階の企画書をつけました。
話し合いを進めていくうちに変更していく思いますが、是非実施したい思っています。 足りない部分はまだありますが、ご覧下さい。



  ■さっぽろ「ゆきずりの屋台」企画書
 

近年、私たちの生活とデザインのかかわり方について考える機会も増え、今年もたくさんのワークショップや講演会がありました。札幌市のなかで、地域に根付いたデザインを追及する意識は高まってきていますが、まだまだ多くの人は、デザインをすること、デザインとどう関わっていけばいいのかわからないと思います。これからもっと私たちもデザインに携わっていくべきですし、なにより、札幌市をよりよくするのは、私たち札幌市民であることを忘れてはいけません。デザイナーは、その提案をする側にすぎません。
札幌の自然の雄大さ、都市としての魅力を今一度考えて、しっかりと肌で感じるべきだと思います。札幌の若い学生たちの意識を、より高められるようなイベントを開催したいと考えます。

●コンセプト :
札幌市民の人たちに、デザインというものをもっと身近なものに感じてもらう。 また、観光客の多い2月の時期に、札幌市民も興味を抱いてくれるようなイベントを開催し、雪まつりと一緒に、若者で札幌市を盛り上げる
日時 : 2007年 2月10日、11日、12日
場所 : まだ特定していないが、人通りの多い札幌中心部の近く

●イベントの内容 :
<ゆきずりのデザインの提案として、屋台制作>
・イベント当日、屋台を10台程展示。
・屋台の中ではスープや温かい飲み物を販売。
・イベントには前もって、タンブラー持参を呼びかける。
・また、限定タンブラーを用意し、販売。「myカップ」宣伝をする。
・この屋台は、プロのデザイナーにもデザインをしてもらいます。
・学生自身もで2台ほど、屋台の制作をする。
・タンブラーのデザインも、デザイナーにお願いする予定です。

屋台の下は、向かい合った人と人とを繋げる、不思議な空間。
そんな暖かいデザインのひとつとして、屋台の制作を提案します。
また「使い捨て容器」というのは便利ですが、大変な資源の無駄になります。 一人でも多くの人の意識が高まるように、「使い捨て」ではなく「持ち運び」の容器を提案します。

今回このイベントを企画するきっかけとなったのは、先月開催された、さっぽろデザイナーズウィークのセミナーで、プロのデザイナーと直接お話をする機会があったからなんです。プロダクトデザイナーの川上元美さん、南雲勝志さん、内田洋行株式会社の若杉浩一さん、千代田健一さんの話を聞き、デザインについて深く考えさせられ、大変刺激になりました。
こういうイベントにも、学生は積極的に参加するべきです。でも実際はあまり多くない…
自分たちも含め、学生の意識の低さを改めて感じました。なので、私たち学生が、学生に呼びかけて、意識を高めていけたらいいと思います。

このイベントの屋台制作には、川上さん、南雲さん、内田洋行のみなさんにも協力お願いしてもらいます。 また他にも、デザイナーズウィークで出逢ったデザイナーの方に協力要請して行く予定です。
デザイナーと一緒に企画ができる機会は、そうそうないと思いますし、これだけ豪華なメンバーが集まれば、札幌市の学生も興味を持ってくれるのではないでしょうか。あとは、私たちのイベントの運び方次第です。
現段階では、内田洋行株式会社北海道支社の方々が、全面的にバックアップして下さると、おっしゃってくださいました。さらに市内の企業、デザイン団体にも協力を要請していく予定です。
また、屋台制作に於いては木材関係者、職人さんにも声をかけさせていただき、必要な木材の提供や製作協力をお願いしていこうと考えているところです。

企画内容の問題点は、まだまだ多いですが、徐々に改善していき、必ず実施したいと考えています。学生が中心となって開催するイベントですが、どうかご協力お願いします。



   
  ●<とみた・しおり> 札幌市立高等専門学校工業コース 4年
 


   
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