不定期連載

かみざき物語り 第5回
文・写真 / 南雲勝志
もうすぐ橋が架かる上崎地区、架橋を通してまちが動く!?
 
7月6日。今回はあまり間をおかずに訪れた。

   
上崎橋近況
   

梅雨が明け、真夏がやってきた。真上からフィルターを通さないビリビリした直射日光が突き刺さる。そして空気はどこまでもクリアーだ。ちょうど高度1万メートルの上空で飛行機から見る太陽の光景ようだ。

前夜、延岡に到着したのは深夜の12時半、日向ひょっとこ祭りに参戦し、打ち上げ終了後移動したためだ。(このあたりのレポートは月刊ひゅうが、及び南のスギダラに随時紹介されているはずなので参考にして下さい。)しかし、一応いつもの幸に行き、気持ちを高め明日に備える。 今回は日向の流れもあり、ミヤダラの春スギ広報宣伝部長、そしてヨシダケ先生、東京からは辻さん、小野寺さん、緒方さん、ナグモ事務所もスタッフ全員で臨む。豪華メンバーだ。

朝、 東臼杵森林振興局の谷本さん、川畑さんに迎えに来てもらいホテルを出発する。 蛇行する五ヶ瀬川の緑色の水面は何度見ても美しい。

さて上崎橋本体の進捗状況を少し。遠くから見るとまだ足場や養生に覆われているため、よくわからないが着々と進んでいる。
まず、大きな出来事は遂に床板が完成したのである。遂に地区と国道が道路で繋がったのだ。
秋の完成イベントの前に一足先に渡り初めをした。

今までは対岸の国道10号線からしか見えなかった上崎地区が、当たり前の事だが、橋のどこからでも眺めることが出来る。高千穂鉄道も真上から見ることが出来る。その向こうに上崎駅がある。やっぱり上崎橋と上崎駅はセットで考えよう。改めて思う。

そして昨年サンプル色をつくり検討して決定した塗装色(かみざき物語り第3回、後半)でアーチの塗装が進んでいた。
五ヶ瀬川や周辺の山々の風景と違和感のない色相でいこう。さらにこのあたりで類を見ない巨大構造物を、いい意味でボリュームを軽減するような色にしたいと考えていた。

養生越しであるが、上部は確認出来る。結果はほぼイメージ通りの色で仕上がっていた。ホッとした。
空をバックにするとほとんど消えていく・・・

 
  五ヶ瀬川沿いに上崎橋を見る。

 
  一足お先に渡り初め。

 
  塗装色は結構いい。

 
橋の途中から見る上崎駅方面。

  空に消えて行くブルー。

線路の真上から上崎駅を見る。ここにトロッコが走る日が来る!?

●地元集会
   

さて公民館に行くと地元の会議はもう始まっていた。ふるさと協議会と詰めをする位のつもりでいたのが、地区全体から出席可能な多くのみなさんが参加していた。とても熱心である。

今日の議題は3つ。
・ほぼ試作が完成した杉高欄の取付について具体的な説明
・上崎駅舎の新しい使い方について
・そして最後にイベントの進行について
である。

高欄の説明については海野さん、田丸さんが庭に用意してくれたセットで行った。
ここのパーツの説明、そして取付について、持ち上げてセットして固定するまでの一連の流れがわかりやすく説明された。見ていると簡単そうに見えるが、逆に簡単に確実に行うための工夫と技術が隠されているのだ。金具ひとつにしても海野さんを中心に何度も試作検討を行ってきた。またひとつ地域のオリジナリティーが生まれそうな予感がする。
地元のみなさんも体験してもらった。女性陣も挑戦。力のある方はこんなの一人で出来る。という意見も出たが、落下や事故などを考慮し3人以上で行うことになった。

しかしこうやってみると今さらながら太い。杉の径は20cmある。だいじょうぶかなぁ。実際に現場に設置された時はちょうどいい太さだと自分に言い聞かせた。

 
  集会の様子1。

 
  集会の様子2。かなり大勢の方に集まった。



 
取付を熱心に説明する海野さん。

  取調整金具の機能を説明する田丸さん。

 
みなさんに実践してもらう。女性陣だって大丈夫そう・・・

  最後に手を挟まないように・・・

さてその次に駅周辺の考え方を説明した。
駅舎のリニューアル、線路を利用したトロッコ計画だ。前回はまだ漠然としたイメージであったので、スケッチやモデルを通し、具体的なイメージを掴んでもらった。単に駅とトロッコだけではなく、プラットホーム周辺のスペースで新しいコミュニケーションスペースが出来ないかというのが大きなねらいだ。

今回は地元からかなり活発な意見が出た。やるのはいいが一体誰がどういう風に管理するのか?事故が起きたら誰が責任をとるのか。運営方法はどうするのか。という心配な意見。
一方で荒れ果てた駅舎周辺をきれいにしていくのは地元にとっても地区外者に対してのピーアールにもなりいいことではないか。駅舎を中心コミュニケーションを図ることは出来そう。トロッコも線路だけではなく、場合によっては陸に揚げての利用も考えられるのでは・・・等々。

うれしかったのは誰がやるかを決めることは必要だが、一番大事なことはみんなが力を合わせていくことが大事、という流れになったこと。ぼくらは応援は出来るが主体ではない。地域の盛り上がり、結束なくしてはこういった試みは無意味になってしまう。

ヨシダケ先生からは、みなさんの心配はよくわかる。なんといっても未体験の事なのだから。あわてず、ゆっくりといくつかのイベントを通し、一番いい使用方法を徐々に作り出していっては。という意見をいただいた。

確かに橋が架かることは地区の一大行事、いままで川の向こうの地区だったところが国道沿いの地区になるのだ。それに加え未体験の線路利用はそんなに簡単ではない。不安や心配はたくさんある。出来る方法でやっていこう。

最後にはイベントに向けてより具体的な詰めを話し合ったがなかなかまとまらない。準備を含めやらなければいけないことがとても多いのだ。前回決まった三日間かけての完成イベント、(二日間は地元のワークショップイベント、最後の一日は完成式)この三日間具体的なタイムテーブルを地区とまちづくり協議会が調整しながら素案をつくり、それをベースに意見交換し最終決定していこういうことにまとまった。

27戸しかない小さな地区、でも規模は小さくともまちづくりの縮図だ。3ヶ月後に完成を迎える上崎橋、そして上崎地区の新しいスタートがそこから始まる。

 
  駅周辺イメージモデル。
施工上、耐久性を考慮し、駅舎の杉張りは内装だけにすることにした。 ビアガーデン出来るといいなぁ。
 
  トロッコモデル。

 
  駅舎内改修イメージ。停車バー


   
●<なぐも・かつし> デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。 家具や景観プロダクトを中心に活動。
最近は人やまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。
日本全国スギダラケ倶楽部 本部

   

   
   
   
 Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved