連載

 
あきた杉歳時記/第3回
文/写真 菅原香織
すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
   
 
豪雪に悩まされた秋田も、ようやく春めいて来ました! 冬が厳しかった分、その嬉しさもひとしおです。暖かい陽光に誘われてスギも元気に(笑)花粉を振りまいております。

 
おまけ〜秋田の杉暦

 

さて先月秋田支部では、秋田県内や近県のスギダラ情報をお伝えする「北のスギダラ」http://sgicci.exblog.jp/を開設しました。その最近の記事にも書いた18年度の秋田の杉関連事業の中から、今回は近代化遺産「天神荘」保存活用についてとりあげてみたいと思います。

旧合川営林署「天神荘」は、1932年(昭和7年)4月30日に七座(ななくら)営林署の天神貯木場の事務所及び宿泊施設として建設されました。営林署の建物だけあって、樹齢200年級の選りすぐった良質の天然秋田杉がふんだんに使われている、産地ならではの建物です。 1935年(昭和10年)には後方に別棟が建てられましたが、昭和26年に事務所が廃止となり、その後「天神荘」と名付けられて福利厚生施設として利用されて来ました。皇族をはじめ歌手の故・美空ひばりさんが宿泊したり、1998年には永六輔さん原作の映画「大往生」の舞台にもなるなど、二ツ井町のシンボル的存在です。
天神荘が立つ場所は、米代川が大きく湾曲する屈折点に位置しており、窓からは雄大で素晴らしい眺めが楽しめる一方、増水したときの勢いも凄まじく、昭和47年と55年の2度の水害では、水位が床上1、2メートルに達したそうです。

 
天神荘からの眺め。スギダラツアーで最後に解散したところです。

 
建物は玄関のある縦長の本館、向かって左手に厨房・配膳棟、2階屋の2階には倉庫、2階には8畳の和室、右手は手前から食堂、つなげると30畳にもなる和室、その2階には8畳間が3つ、後方に増築された平屋の離れには8畳2間があります。

 
   
 

保存活用が望まれる天神荘。せめて破れ障子だけでも直せないものでしょうか…

 
  天神荘は旧二ツ井町で唯一の文化庁登録有形文化財で、戦後天然秋田杉で隆盛を極めた当時のまちの記憶をその姿にとどめる貴重な財産です。しかし、築後70年余を経て老朽化が著しく、昨年5月、財政難を理由に解体の計画が打ち出されました。これに対して6月に元営林署職員、商店主、観光業関係者ら「保存と活用を望む町民有志の会」が立ち上がりました。保存の役割を担う自治体が解体に踏み切るという事態に、文化庁をはじめ県の文化財保護室でも困惑しているとか。さらに有識者や建築関係の方々も現地での保存を望んでいます。1992年には全国に先駆けて調査され、近代化遺産となった貴重な歴史的建造物であり、杉と米代川共に栄えた生き証人、まちのシンボルでもある天神荘の命を消すまいと、町民有志の会では署名などの運動を展開していくことにしました。しかしその後7月に二ツ井町では町長選挙、3月には能代市との合併と急激な展開があり、現在までに具体的な運動はなされていません。さらに4月には合併後の能代市長選挙があり、天神荘に対する方針も気になるところです。

ただやはり保存、活用のためには、何より町民がその思いを共有し、熱意を集め、活動として継続していくことが必要です。例えば同じ秋田県でも、江戸時代の紀行家、菅江真澄が桃源郷と称えた、峰浜村手這坂集落の茅葺き民家群の再生運動や、明治時代の古民家造り酒屋の建物を保存活用した花輪の関善賑わい屋敷など、NPOやボランティアの手によって解体・崩壊の危機を免れ再生されています。そこで、天神荘もなにかしら町民有志の手でできることからはじめては?と考えています。例えば、湿気対策にゼオライトを敷き詰めるとか、掃除をして風を入れるとか、大幅な修繕でなくとも大切にしたい、残したいという気持ちを行動で表すことで、きっと応援する人が集まってくるのではないでしょうか。地元スギダラ秋田支部としても、今年10月21、22日に二ツ井で開催予定の全国木篇NPO・NGOサミットにあわせて、ぜひ保存活用に向けたアイデアを実行に移していきたいと計画を練っているところです。

 
     
   
おまけ〜秋田の杉暦
職場から車を走らせ5分もすると、ご覧のような里山の風景が広がります。

   

枝いっぱいの雄花と雌花が、す、すごいことになってました。

  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長
 
 
 
   
   
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