連載

 
杉スツール100選 第1回 「タコスギ」「イカスギ」
構成/南雲勝志
スツールというシンプルな形を通して、杉の家具材としての可能性を探る。目標100点。
 

 杉の家具はなかなか簡単ではない。まず家具材料としては強度も弱く、硬度もないからだ。特に脚物とよばれるイスやテーブルは、とりわけ接合部に強度や精度が求められるため、一般的にはナラやブナといった広葉樹系の堅木とよばれる材料にかなわない。また天板としても柔らかく傷が付きやすい。地場産杉材活用という謳い文句で学童家具等が各地で試みられているが、どうしても重く、デザインもオーバーになりがちである。堅木を使った家具と同じ作り方をしていてはどうしても無理が生ずるのである。
 しかし、可能性がないわけではない。杉ならではのおおらかな材料の使い方や、傷は付いても簡単にはへこたれない存在を表現する仕方だってある。実際に昔のものでは、ちょっとした踏み台や腰掛けなど美しいカタチも存在する。つまりどこかで堅気ではないやくざな要素が必要なのかも知れない。杉には杉のカタチがあるわけだ。杉パワーを後方支援する意味で魅力的な杉家具の存在は不可欠である。

 そんなわけでここのコーナーでは、形態をあえてスツールに絞り、単純だが魅力的な杉の家具の可能性を紹介していきたいと思う。とりあえず100選と題し、100のデザインの紹介を目標に、ある程度ストックが出来たところで、スギダラ家(スギダラ家奮闘記を参照)で展示(販売)も考えている。

 トップバッターはスギダラ本部デザイン部長若杉浩一さんの「タコスギ」「イカスギ」。命名もさることながら、どこか一風変わった、それでいて許せる、そんなデザインを提供する若杉さんにそのデザインプロセスと、そこに詰め込んだメッセージを披露していただこう。

*このコーナーでは、自薦他薦を問わず、杉スツールのデザインを常時受け付けています。 たくさんの応募をお待ちしています。

●<なぐも・かつし>デザイナー
ナグモデザイン事務所代表。新潟県六日町生まれ。 家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部

 
  廻船問屋の二階にひっそりと置かれている杉家具。
日向市美々津


「タコスギ」「イカスギ」について
  文・写真/若杉浩一
 
 南雲さんとは、すいぶん杉だらけの家具を作ってきた。大杉、杉太、長杉太、高杉太、重杉太、杉平……等。だが、よく考えてみるとテーブルと一緒に使うスツールを作っていなかった。スギダラ家具をいろいろ他のスツールと合わせてみたがやはり少しニュアンスが違うのである。
 そこでスツールが欲しいと思っていたところ、南雲さんも作ろうという。「どうせなら100の杉スツールを作ろう、そして杉のデザインをみんなと楽しもう」というのだ。そりゃ面白い、やろう。即決である。いつもこんな調子でスギ決まってしまう。
 ところが、いざやってみると(お互いにデザインすることとなったのだが)それからが結構大変。いままで杉の家具は、南雲さんのお手伝いはしたものの、自分ではデザインを控えてきた。なんでか? そりゃ杉太など一連のあれだけすごいデザインをやられてしまったら、そうそう回りは出来るもんではない。ねえ皆さん!
 だけど、皆でデザインを楽しむにはそんな事は言っていられない。南雲さんもデザインしましたが、とりあえずスタートを切らせてもらいます。皆さんどんどん参加して下さいね。そしてスギダラ家で杉スツール100展やりましょう!

 さて「タコスギ」「イカスギ」です。100ミリ角の角材を簡単な金物でつないで終わりにしてみました。脚端具も付けるのをやめたらなんだかタコやイカのように見えるもんで、このような名前になりました。南雲さんのお嬢さんは「タコは良いけど、イカは目が4つもあるからだめだね〜」と厳しい!! やはり目は2つですよね〜。
 
 
 
係船ロープに絡まりながら潮見に打ち上げられたタコスギ(左)、イカスギ(右)


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