特集 スギダラ大分ツアー
  魂を伝える
文/ 荒川堅太郎
 
 
  ある日、事務所に戻ってくると、上司の峯が微笑みながら私を手招きしている。
   
 
荒川: 「?」
峯: 「荒川。講演の依頼があったぞ。」
荒川: 「??」
峯: 「11月15日は予定を入れないように。」
荒川: 「???」
峯: 「いつもの、日南線の取り組みを話して来ればいい」
荒川: 「あの、場所は?」
峯: 「大分支社」
荒川: 「・・・」
   
  どうも、私が帰ってくるちょっと前に弊社にスギダラを伝染させ続けるスギマモ宣教師(O分支社長)がやって来て、大分スギダラツアーの一環として日南線の話をして欲しいとのこと。
これまで、日南市 河野健一さん(アカパン先生)と一緒に、JR各社や民鉄に対して、日南線の取り組みについて講演したことはある。
だが、今回はいつも助けていただいている河野さん抜きで、スギダラメンバーだけでなく、多数の社員の前で話をしなければいけないようだ・・・
   
  社外の方は弊社の「地域を元気に」という取り組みをあまり知らないが、社員はもちろん知っている。そんな中で、話下手な私が普通に話をしても当たり前の事だと思われてしまう。どんな話をすれば?と考えているとき、宣教師の言葉を思い出した。
「俺がどんなにスギダラの取り組みが素晴らしいか説明しても、騙されていると感じるのか、理解してくれないんだよなぁ・・・」
そっか、日南線の取り組みの"魂"的なことを伝えることが出来れば!
そんな感じで、45分の時間に何とかおさまりそうな資料が完成した。
   
  そして、当日・・・
会場に着くと、若杉さんや千代田さんだけでなく、なんと河野さんもいるではないか!
みなさんに簡単に挨拶をすませ、私は河野さんに近づき「今日、一緒に話しません?」と、耳元で囁いた。
それを耳にした千代田さんが、「それいいねぇ!」と言った。
河野さんも「僕なんかが話していいんですか?」
宣教師は「ぜひ話してください!時間は気にしなくていいです!」
   
  そんな流れで、河野さんと一緒に講演することになり、資料の流れを一度説明して本番開始。
河野さんの熱い言葉にフォローしていただきながら、何とかこの取り組みの"魂"を伝えることが出来ればと必死に話した。
会社の取り組み、日南市の取り組み、そして日南線の取り組み・・・
   
  この話をすると、私はいつも思い出す風景がある。
スギダラ親分の南雲さんに「最初は敵対勢力だったよねぇ〜」と言われるシーンだ。
日南線の取り組みを始めたとき、私は企業戦士として、常に、失敗や負ける事は許されない!的な意識を持っていたし、それが当たり前だと考えながら行動していた。
しかし、この取り組みを進めていくうちに、鉄道会社の社員として、本当の意味で地域に貢献することの大切さ、そして、みんなと一緒に何かをやり遂げる喜びを知っていくことが出来たし、仕事を楽しく思えるようになった。
   
  この気持ちをみんなに伝えたい!と、何度もかみながら喋り続け、予定時間を15分程過ぎた頃に、やっとまとめにたどり着いたが、河野さんのお陰でこの取り組みの"魂"を伝えることが出来たと思っている。
本当に感謝感謝である。
  私としても、この日南線の取り組みがターニングポイントになっているし、これからも当時の気持ちを忘れることなく、いろいろ挑戦していきたいと思っている。
   
  その日の夜、異様に暑苦しい焼酎地獄の店中で宣教師が言った。
   
 
宣教師: 「やはり鉄道員は時間厳守しなければ!」
荒川: 「・・・」
   
 
   
  *日南線の取り組みに関しては、こちらを参照ください。
月刊杉54号(2010年2月号)「杉玉大作戦」荒川堅太郎
   
   
   
   
   
   
 

●<あらかわ・けんたろう> 九州旅客鉄道株式会社
日本全国スギダラケ倶楽部 北部九州支部

   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved